著者
江木 盛時 内野 滋彦 森松 博史 後藤 幸子 中 敏夫
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.21-26, 2009-01-01 (Released:2009-07-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

過去に報告された無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)で有効であるとされた治療法が,その後に行われたRCTで否定されることがある。その原因として,過去のRCTが有意差の得られやすい条件で施行されていることが挙げられる。RCTは,この条件を踏まえた上で考察することが重要である。その三要素として,(1)subgroup analysis, (2)single center open label study, (3)early terminationが挙げられる。(1)Subgroup analysisは,統計学的検討回数を増やすことで,(2)single center open label studyは,ホーソン効果と治療の浸透性により,(3)early terminationは,random highと統計学的検討回数の増加により,偽陽性の確率を高める。これらの手法を用いて得られたRCTの結果は,慎重に吟味する必要がある。
著者
江木 盛時 西村 匡司 森田 潔
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.25-32, 2011-01-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
50
被引用文献数
2

【背景】重症患者の発熱は頻繁に生じ,外表クーリングや薬物による解熱処置が日々行われている。しかし,発熱を解熱すべきか否かに関する治療指針は存在しない。【方法】発熱と解熱処置が患者予後に与える影響に関してsystematic reviewを行った。【結果】発熱あるいは解熱処置が患者予後に与える影響を検討した研究は,27文献存在した。これらの文献から,以下のような見解を得た。(1)発熱の発生は,重症患者の死亡率増加に関与する。(2)感染症合併患者では,発熱が死亡率低下に関与する可能性がある。(3)発熱に関する観察研究で解熱処置の情報を含めて解析したものはない。(4)積極的に解熱処置を行うことで,患者予後が悪化する可能性がある。【結語】重症患者の発熱を解熱すべきであることを示す根拠は乏しく,一概に解熱処置を行うことは推奨されない。この分野の知見を深めるために,十分なpowerの大規模多施設前向き観察研究を実施する必要がある。
著者
江木 盛時
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
雑誌
INTENSIVIST (ISSN:18834833)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.461-473, 2011-07-01

2001年に強化インスリン療法intensive insulin therapy(IIT)の有効性1)が外科系ICU患者で報告されて以降,血糖管理は集中治療における重要な領域の1つとなった2)。厳格な血糖管理tight glycemic control(TGC)は,2001年以降に定着した名称であり,速効性インスリンを持続静脈投与し,1~4時間ごとの頻回な血糖値測定を行いながら,厳密に血糖値を管理する方法を指す。TGCのほかに,strict glucose controlなどの名称もあるが,現在最も使用されるのはTGCである。Van den Berghe1)によって提唱されたIITは,TGCのなかでも目標血糖帯を正常血糖帯(80~110mg/dL)とするものを指す。
著者
鈴木 聡 森松 博史 江木 盛時 清水 一好 松崎 孝 佐藤 哲文 片山 浩 森田 潔
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.215-220, 2011-04-01 (Released:2011-10-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

術後の発作性心房細動の発生は,ICUや病院滞在日数,医療費の増加につながることが報告されており,その管理は重要である。我々は,食道癌術後に難治性の発作性心房細動を合併し,短時間作用型β1選択的遮断薬である塩酸ランジオロールを使用した7例を経験した。症例は51~87歳で,いずれも男性であった。複数の抗不整脈薬が無効であり,塩酸ランジオロール投与を開始した。初期の急速投与は行わず,4.3~33.5μg/kg/minと低用量の範囲で開始し,投与前と投与1時間後の心拍数は平均153[140, 167][95%信頼区間] /minから101[88, 116] /min(P<0.0001)と有意な低下を認めた。平均血圧は88[78, 94] mmHgから82[74, 89] mmHg(P=0.37)と有意な変化を認めず,重症な低血圧に陥る症例もなかった。6例では投与開始24時間以内に洞調律に回復した。複数の抗不整脈薬に抵抗性の食道癌術後発作性心房細動に対する低用量の塩酸ランジオロール投与は,大きな血圧の低下なく心拍数の安定をもたらした。