著者
森脇 健夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

子どもの学習の物語論的分析は、子どもが授業での経験をどのように意味づけ、自らの文脈に位置づけるか(自らの世界に取り込むか)、という関心にもとづく。本研究では、これまでのさまざまな分野におけるNarrativeに関連する研究を概観すると同時に、子どものNarrativeを分析する際の枠組みを構造主義やstoryの社会学から導き出した。実践分析としては、奈良女子大学附属小学校の小幡肇教諭の一連の実践(「阪神大震災・大研究」)を分析対象とした。「『気になる木』の『はっぱ』をふやそう」という独特のシステムを持つ小幡氏の授業の特質を分析すると同時に、そこで子どもたちが授業体験をどのように意味づけしているか、その意味づけの特徴を分析した。その結果、授業の構造の分析、すなわち共時的な分析によって、多様な物語(個性的な意味づけ)が生まれる条件としての「装置」が必要であること、また、通時的な子どもの「物語」の分析によって、さまざまな事象へのアプローチがその子ども独特のストラテジーにもとづいて行われていること、またそのストラテジーが授業での経験の意味づけに大きな影響を与えていることを明らかにした。こうした分析結果を踏まえて授業技術形成を行っていく必要があるが、これまでの技術とは異なった技術(たとえば「装置」を築いていくこと)を形成していくことの重要性を指摘することにとどめた。教師の力量形成としてこうした技術をどのように身体化していくのか、は次の課題としたい。
著者
森脇 健夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本では、学校の教師が参加し、研修を積む場として校内の研究会がある。筆者は、ある中学校において校内研究がどう組織され、そこにそれぞれの役割を担った管理職、研究主任、教員がどのようにかかわっているか、また教員がそこでどんな学びをしているか明らかにした。まず、校長がどのようなビジョンのもとに専門家共同体を作っていくかが重要である。教師たちは自らの来歴の中で授業スタイルを形成しているが、校内研究によって、自らの授業スタイルを自覚し、必要ならば自己変革をする。自己変革の一つの契機が子どもたちの声である。校内研究は教師たちに研鑽と自己変革の場を与えるが、それを実質化するのが、同僚性の構築である。
著者
森脇 健夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の課題は教師の「熟練性」を「二重の応答性」に着目し、その発達の過程をライフヒストリーインタビューをもとに明らかにすることである。初任期の教師の場合、指導事項を効率的に教えないといけないこと、学習者の理解や学習のプロセスの理解が困難なことから、教えたことに対する学習者の反応への教師の反応に稚拙さが見られる。的確な反応ができないばかりか、反応そのものができない、という事態も見られた。これに対し、中堅、熟練期の教師は、1時間に教える事項への認知だけではなく、単元、カリキュラムへと認知が広がり、一方で学習者、学習過程への理解が深まる。「二重の応答性」もタイミング、その内容も的確さを増していく。
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 滝口 圭子 中西 良文 磯部 由香
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

教育実践現場やその隣接関連領域の現場で、教材開発研究とその実践を組み合わせた、教員養成のための新たなPBL教育カリキュラムの開発を模索した。開発したPBL教育モデルは、先行研究や実践活動で実績のある拠点校(5校区)を中心に、現場との協働において教育実践に活用された。さらに、海外の教育現場での学びを実現する海外実地研究型PBL教育を導入した。得られた成果は、学会発表(45件)・論文発表(29件)として公開され、関係研究者の評価を得た。
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 中西 良文 滝口 圭子 上垣 渉 廣岡 秀一 八木 規夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

医学教育において実践されてきたPBL教育を,教員養成学部において展開するための基礎的な研究を行った.教育周辺領域の様々な現場においてPBL教育を実践し,コンテンツの開発を行った.特に,学生・院生に旅費を支給し,大学より離れた現場でのPBL教育を実践することができた.現場での実践を大学において省察し,学生が教員からのアドバイスを受けるためのネットワークシステムとしてmoodleを用い,そのための専用サーバを立ち上げた.例えば美術教育において学内・外のデザイン製作を学生と教員が協働して手がけるなど,教科の専門性を活かした活動や教科を超えた協働活動を展開した.また,先端的な取り組みを行っている他大学研究機関・学会の調査のために,海外視察を4回,国内視察を5回行った.これらの視察では,学生・院生を引率し,他大学の学生との交流も実現した.特に,秋田大学,愛媛大学とは双方向での視察・交流を果たし,moodle上で恒常的な交流の場を設置した.PBL教育の教育効果を明らかにするために,評価方法の開発にも注力している.日本教育大学協会研究助成プロジェクト(カルロス研究会)との協働により、パフォーマンス・アセスメント(PA)を用いた評価法の開発を推進し、そのためのマニュアル作成を行った。このようなPBL教育の成果を学内外に発信・共有するために、学内で開催された4回の公開研究会と4回のボスターセッションにおいて発表し,愛媛大学・島根大学とのジョイントシンポジウムを1回開催した。また、これらの成果を学会において論文・紀要等により発表した。開発されたすべてのコンテンツはデータベース化し、専用ホームページを通して公開している。
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 磯部 由香 滝口 圭子 中西 良文
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

先行研究や実践活動で実績のある拠点校(5校区)を中心に、教育現場や隣接領域の実践現場のニーズを調査し、それに応じた領域を超えた教材・活動を開発・展開した。開発した教材は、現場との協働において教育実践に活用された。その実践報告を基に公開研究会を開催し、その有効性が検討された。得られた成果は、学会発表(33件)・論文発表(36件)として公開され、関係研究者の評価を得た。