著者
植田 宏昭
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

大気-海洋混合層結合モデルによる瞬間的CO_2倍増実験より、全球降水量変動におけるCO_2倍増の直接効果を地表面・大気熱収支の観点から評価した。温室効果ガスであるCO_2の増加により、大気よりも熱容量の大きい地表面が加熱される一方、水蒸気とCO_2のオーバーラップ効果は正味地表面放射の変化を抑制するため、それを補うように蒸発による潜熱フラックスが減少する。この結果、CO_2倍増の直接効果として、降水量の減少が引き起こされる。
著者
植田 宏昭
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成17年度では、熱帯アジアモンスーン地域での気候変動について、日変化・季節変化・年々変動さらには地球温暖化を含む長期変動スケールの研究を行った。使用したデータは客観解析データ(GAME再解析,NCEP,ERA40)、衛星リモートセンシングデータ(TRMM,NOAA)などで、大気海洋結合モデル、海洋1.5層モデルなどの数値モデルと組み合わせて包括的な研究を実施した。個別の成果は下記の通りである:1)IPCC-AR4にむけた複数の地球温暖化数値実験(排出シナリオはSRESA1-B)の結果に基づき、モンスーン降水量の将来変化とその要因について、モンスーン強度、熱帯循環、水蒸気収支などの観点から調査した。解析には8つのモデルを用いた。地球温暖化時には日本を含むモンスーン域の降水量は広域で増える傾向にある。しかしながらモンスーン西風気流は弱くなっており、パラドックスが生じている。この理由として、モンスーン域への水蒸気輸送の増加の寄与が明らかとなった。2)ERA40、NCEP/NCAR再解析データを用いて、インドシナ半島における非断熱加熱の時空間構造とトレンドを調べた。インドシナ半島ではモンスーン期間の始まりと終わりの年2回、積雲対流が多雨をもたらす。雨は春よりも秋に強まる傾向があるが、いづれも風が比較的弱く東側からの水蒸気フラックスの流入がある時期であった。対照的に風が強い7〜8月には地面からの蒸発が顕著であった。どちらのデータを用いても気候学的な特徴は同様に見られたが、トレンドに関しては一貫性のある結果は得られていない。この原因のひとつにはモデルに含まれるバイアスが考えられる。3)インド洋の海面水温はENSOの影響を強く受け、全域で昇温することが知られている。一方、ダイポールモードと呼ばれる東西非対称の海面水温(SST)偏差の発生が指摘されるようになり、ENSOとは独立した存在だと考えられていた。我々は大気海洋結合モデル(CGCM)にEl Ninoの海洋温度を季節を変えて挿入するという実験を行い、夏にEl Ninoが現れた場合は東西非対称海面水温偏差を、一方秋に現れた場合は全域昇温することを証明した。このことからこれらの海面水温偏差の発生にはモンスーン循環とENSOの影響の季節的な結合過程が主因として考えられる。
著者
川村 隆一 植田 宏昭 松浦 知徳 飯塚 聡 松浦 知徳 飯塚 聡 植田 宏昭
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大気海洋結合モデルならびに衛星リモートセンシングデータ等の観測データを併用して、夏季モンスーンのオンセット変動機構の重要な鍵となる大気海洋相互作用及び大気陸面相互作用のプロセスを調査した。標高改変実験からは亜熱帯前線帯の維持のメカニズム、植生改変実験からは降水量の集中化と大気海洋相互作用の重要性が新たに見出された。また、オンセット現象と雷活動との相互関係、夏季東アジモンスーン降雨帯の強化をもたらす台風の遠隔強制やモンスーン間のテレコネクションのプロセスも明らかになった。
著者
植田 宏文 藤原 秀夫 丸茂 俊彦 五百旗頭 真吾 林田 秀樹
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、資産の証券化を通じた市場型間接金融の拡大等に代表される金融システムの変革が、どのような経路を通じて経済の成長に資するのか、さらにその問題点は何かについて理論・実証的に明らかにすることを目的として分析を継続してきた。これらの分析は、現在における経済諸問題の背景を明確化させ、混迷を深める今日において将来のあるべき方向性を示す上でたいへん意義があるものと言える。
著者
植田 宏昭 安成 哲三
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-12, 1998-02-25
被引用文献数
12

本研究ではベンガル湾及び南シナ海上の東南アジアモンスーン(SEAM)の開始のメカニズムを, チベット高原とその周囲の海洋との温度コントラストの視点から調べた。循環場の解析にはECMWFによる5日平均客観解析データ(1980-1989年), 対流活動の指標としてはGMSの5日平均等価黒体温度(TBB)データ(1980-1994年)を用いた。東南アジアモンスーンのいち早い開始は, 第28半旬(5月16-20日)に下層のモンスーン西風気流の加速を伴って見られ, その後6月の上旬に2回目のモンスーン強化が生じている。春から夏にかけてのチベット高原上では, 200-500 hPaの気層の温度上昇が約15日間隔で上昇している。特に5月中旬のチベット高原上の温度上昇は, SEAMの開始と一致している点が重要である。すなわちチベット高原とその周囲の海洋との温度差異は, 下層のモンスーン気流の加速と東方への拡大を引き起こし, 結果として南シナ海モンスーン(SCSM)を含むSEAMの急激な開始をもたらす。この関係は, (10゜-20゜N, 80゜-120゜E)での下層の風と200-500 hPaの層厚との年々変動の相関解析によっても確認された。中緯度への影響としては, SCSMの開始による低気圧性渦度と熱源により, 定常ロスビー波が南シナ海上で励起され, 更に北東方向に伝播している。この波の下流の日本付近は正の高度場偏差が現われ, 川村と田(1992)が示した5月中旬の日本の晴天の特異日と一致している。