著者
澤田 岳彦 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.305-314, 2010-05-31
被引用文献数
2

1996年から2006年までの典型的な夏季静穏日を抽出して,北海道の熱的局地循環に伴うGPS可降水量の日変化傾向を調査した.北海道の日平均可降水量は,オホーツク海沿岸で29〜32mm,渡島半島で24〜26mmと,東部で高く西部で低い分布を示した.対照的に,日平均地上混合比はほぼ逆の分布であった.熱的局地循環の発達に伴って,熱的低気圧が15時に最盛期を迎え,18時頃に可降水量偏差(日平均値からの偏差)が極大となるが,その極大域は石狩山地の南東側に偏っていることが見出された.また,夜間においても可降水量が相対的に高い領域が北海道東部を覆っていた.主な要因として,北海道上空で終日卓越する北西寄りの一般風によって,山岳上空に集積した水蒸気が風下側へ輸送されていることが示唆された.
著者
杉 正人 川村 隆一 佐藤 信夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.717-736, 1997-06-25
参考文献数
51
被引用文献数
15

気象庁全球モデルを用いて、アンサンブル気候実験を行い、海面水温 (SST) 変動に強制されて起きる大気の長期変動と、季節平均場の予測可能性について調べた。モデルの34年時間積分を3回実行した。3つの時間積分はいずれも1955-1988年の実測のSSTを境界条件としているが、大気の初期状態が異なっている。季節平均場の全変動のうち、SSTの変動で強制されて起きている変動の割合 (分散比) を計算した。この分散比は、SSTが完全に予測された場合の最大予測可能性 (ポテンシャル予測可能性) を示すものと考えられる。気圧場の分散比は一般に熱帯では高い (50-90%) が、中高緯度では低い (30%以下)。このことは、季節平均気圧場の (ポテンシャル) 予測可能性は、熱帯では高いが、中高緯度では低いことを示唆している。一方、季節平均降水量の分散比は、ブラジルの北東部の74%、インドモンスーンの31%というように、熱帯の中でも地域によって大きく異っている。全球平均の陸上の地表気温の分散比は高い (66%) が、ほとんどの陸上の地点での局地的な地表気温の分散比は低く (30%)、海面水温予測にもとづく局地的な陸上の気温の予測可能性が小さいことを示唆している。
著者
櫻井 渓太 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.7-22, 2008-01-31
参考文献数
23
被引用文献数
1

竜巻発生近傍(発生前後2時間以内,半径50km以内)のレーウィンゾンデデータ(55事例)とJRA-25長期再解析データを主に用いて,日本の竜巻発生環境場の実態を統計的に調査し,シビアストーム発生のポテンシャルを示す既存のパラメータについて,その診断基準が日本ではどの程度有効かどうかを考察した.K指数(Ki)と対流抑制(CIN)の頻度分布から,他の大気安定度パラメータに較べて,両パラメータの有効性が高いことがわかった.また,水平風の鉛直シアーに関するパラメータではストームに相対的なヘリシティ(SRH)が有効な指標であることが再確認された.複合パラメータに関しては,対流有効位置エネルギー(CAPE)の有効性が低いために,どの複合パラメータも実用面で問題がある.このため,KiとSRHの積で定義される新しい複合パラメータ(KHI)を提案し,環境場の事例解析により検証を行った結果,米国と比較すると日本では対流圏中層が湿潤で下層の鉛直シアーが大きい,ミニスーパーセルの発生環境場で竜巻被害が起こることが多いと考えられる.KHIのシビアストームの検出率は高いが,上層の寒冷渦に起因する竜巻の事例等では検出が難しいことも示唆された.
著者
平田 英隆 川村 隆一 野中 正見 坪木 和久
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.899-912, 2021 (Released:2021-08-27)
参考文献数
26
被引用文献数
3

2017年1月、温帯低気圧に伴う前線に沿って発達した対流性の降雨バンドが三宅島に記録的大雨をもたらした。本研究は、この降雨バンドの強化過程における黒潮からの熱フラックスの役割について調査した。領域雲解像モデルを用いて降雨バンドの再現実験(コントロール実験)と黒潮からの顕熱および潜熱フラックスを除去する感度実験を実施した。低気圧に伴う温暖前線の北側で発生した非古典的な前線(アウターフロント)に沿って、降雨バンドが発達した。コントロール実験は、降水バンドの強度や移動をよく再現した。さらにコントロール実験では、降雨バンドが発達するにつれて、降雨バンドの南側の低気圧に伴う寒冷コンベアベルト周辺において、黒潮からの熱フラックスが明瞭となった。顕熱フラックスと比較して、潜熱フラックスは約2.3倍の大きさであった。コントロール実験と感度実験との比較は、熱フラックス、特に潜熱フラックスが、降雨バンドを強化することを示した。顕熱フラックスは対流圏下層の対流不安定度を若干強め、潜熱フラックスは地表付近の水蒸気量および対流不安度を大きく増加させた。アウターフロントに沿う前線性の上昇気流によって、強化された対流不安定は解放される。その結果、水蒸気収束、水蒸気の凝結および上昇流が強化され、降雨バンドの発達が生じた。これらの結果は、黒潮からの熱フラックス、特に潜熱フラックスは、水蒸気量と対流不安定度の増加を介して、大雨を引き起こした降雨バンドの発達へ寄与したことを示す。
著者
川村 隆一 筆保 弘徳 山本 勝 富田 裕之 森本 昭彦 柳瀬 亘 吉田 聡 宮本 佳明
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

台風と爆弾低気圧による被害事例が日本全国広範囲で多発している。両ストームの発達・進路予測の改善、関連するストーム起源の極端現象の発生予測、そして変わりゆく気候環境下で両ストームの活動度がどのように変調するのかを解明する事は減災の観点からも喫緊の課題である。その問題解決に大きな不確実性をもたらしているのが黒潮・黒潮続流が熱・水蒸気供給を介して両ストームに与える影響である。暖水渦のような海洋中規模渦と低気圧の空間規模は1 桁程度異なっており、スケール間大気海洋相互作用の実態は依然として未解明である。そこで本課題では台風と爆弾低気圧の発達プロセスに果たす中緯度大気海洋相互作用の包括的研究を展開する。
著者
川村 隆一 村上 多喜雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.619-639, 1998-08-25
参考文献数
30
被引用文献数
10

赤外輝度温度、850hPa高度、風、気温、比湿データに調和解析を適用し、季節変化の長周期成分(第1から第3調和関数までの和)をLモード、残りの調和関数で表現される短周期成分をSモードと定義した。初夏の期間、Lモードはカムチャッカ半島-オホーツク海上のリッジと、中国北部(大陸の熱的低気圧の中心)から日本、さらに東方へ延びるトラフのブロッキング型循環パターンを示す。オホーツク海上の局所的なLモード高気圧セルの発達により、アリューシャン諸島付近から北日本へかけての下層東風偏差が強まる。この東風偏差と大陸の熱的低気圧の南東縁に沿った南西風偏差によって、日本付近で水蒸気収束を伴う強い低気圧性シアーが形成される。初夏にみられる東アジアと西部北太平洋との間の東西温度勾配の強化と関連した、Lモード下層トラフの発達は梅雨システムの形成に必要である。大陸スケールの熱的低気圧の発達に起因する、中国東岸に沿うLモード南西風は、モンスーン西風と中緯度偏西風をつなぐブリッジとなり、結果として南シナ海から中部北太平洋へ延びる対流圏下層の西風ダクトを生み出す。6月中旬の梅雨オンセット期には、対流起源のSモードonset cycloneが南シナ海上で発達し、ほぼ同時にSモードonset anticycloneがonset cycloneの北東側に組織化される。下層西風ダクト周辺のSモード擾乱の増幅が熱帯から日本南部へ、湿潤で温暖な空気の北向き移流をもたらしている。7月中旬までに、アジア大陸の熱的低気圧はそのピークに達し、関連して東南アジアの夏季モンスーンも最盛期が訪れる。7月下旬の梅雨明け頃は、大陸の熱的低気圧は地表面冷却により衰退し始めるが、Lモード太平洋高気圧は依然として北へ発達し、8月初めに最盛期を迎える。海陸間の東西温度勾配の弱化に伴い、日本付近のLモード下層トラフが消失し、一方では西太平洋モンスーン(WNPM)トラフが発達する。また、梅雨オンセットと同様に梅雨明け時にもSモード擾乱の発達がみられる。このように、大陸-海洋の熱的コントラストに関係する、Lモード循環の季節進行が、下層西風ダクト内および周辺のSモード擾乱の活動を強く規制している。そのメカニズムとして、西風ダクトがSモード擾乱の順圧ロスビー波の分散に対するwave guideとして働いている可能性や、水平シアーをもったLモード平均流の存在が、二つのモード間の順圧相互作用を通してSモード擾乱の発達と持続に重要な働きをしている可能性があげられる。いずれにしても、Lモード循環とSモード擾乱の複合効果が、梅雨オンセットや梅雨明けのようなローカルな気候学的イベントを非常に急速かつ劇的な変化にしていることに変わりはない。
著者
植田 宏昭 安成 哲三 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.795-809, 1995-08-25
参考文献数
15
被引用文献数
13

西太平洋上の大規模対流活動と風の場の季節変化を、静止気象衛星の赤外黒体輻射温度(T_<BB>)とヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)全球客観解析データを用いて、1980年から89年の10年間にわたり解析した。特に、本研究では西太平洋上20゜N,150゜E付近の大規模対流活動が、7月下旬に急激に北上することを記載する。活発化した対流活動はそこに強い低気圧性循環を作り出し、その低気圧の南側に西風、北側に東風を引き起こす。この強い低気圧性循環は西部熱帯西太平洋上に忽然と出現する。しかし、同時期の110゜E以西のモンスーン西風気流は加速しておらず、この急激な変化はアジアモンスーンシステムとは切り離されていることを示唆している。更に対流活発域の北側には高気圧性循環が生じ、それは日本付近の梅雨明けに対応している。また大規模対流活動の急激な北上は熱帯性低気圧活動に関連していることが明かになった。中緯度では、7月下旬の大規模対流活動の急激な北上前後のジオポテンシャル高度パターンから、鉛直方向に等価順圧構造になっている事が分かり、20゜N,140゜E(西太平洋)付近の対流活発域から、北方の60゜N,180゜E(べーリング海)に向かってロスビー波が北東方向に伝播していることが示された。この他20゜N,150゜Eの海面水温(SST)は、急激な対流活発化の約20日前の7月上旬に、29℃を越える高温に達していることを示した。この北東方向に拡大する温かいSST領域は、7月下旬の対流活発化と密接に関係していることが推察される。この結果より、SSTの上昇は対流活動の急激な北上に対して十分条件ではないが、重要な必要条件の一つであると考えられる。
著者
糟谷 司 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.917-925, 2012-10-31

1997年から2009年までの期間について全国規模でGPS可降水量を算出し,その季節変化の気候学的な特徴について調べた.冬期から春期への季節進行と共に可降水量は全国的に増加していくが,西日本では5月末の少雨期の直前に可降水量の増加が停滞し,その後約20mm程度の可降水量の急増に伴って6月中旬に梅雨入り(オンセット)を迎える.オンセット時の最大増加率は1mm/dayを超え,増加率の極大後約10日後に降水量が最大値を示す.また,盛夏期の可降水量の上限値は50mm程度である.秋期に可降水量が急激に減少する時期は西日本では2回,東日本では1回で,特に9月中旬の減少傾向は全国規模である,可降水量の夏期前後の季節変化にみられる非対称性は西日本で特徴的であるが,北海道では8月初めを極大とする対称性が際立っており,可降水量の季節変化に地域的な特徴が見出された.
著者
糟谷 司 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.291-303, 2011-04-30
被引用文献数
1

典型的な夏季静穏日を抽出し,中国・四国地方と瀬戸内海におけるGPS可降水量の地域的な日変化傾向と熱的局地循環について調査した.日中のGPS可降水量,日照時間,地上風の分布から,四国山地で2つ,中国山地で3つの小規模な熱的低気圧の形成が見られた.両山地の可降水量の日変化とは全く対照的に,瀬戸内地域では海風卓越時に可降水量は減少,陸風時には増加していた.瀬戸内海は中国山地と四国山地に挟まれることで,日中には内海と周囲の陸地との間で顕著な熱的局地循環が形成され,その循環に伴う下降流が瀬戸内海上で卓越し,上空からの乾燥移流と海風による水蒸気の水平発散が午後から夕方にかけての地上混合比の減少をもたらしていると示唆される.日中に日本海側と太平洋側の沿岸部では海風の水平温度移流によって地上気温の上昇が抑制されるが,瀬戸内海ではその抑制効果が働かず,15時〜22時頃に瀬戸内地域は相対的に3℃程度高温となっている.内海と外洋間で生じたこのような熱的コントラストが瀬戸内海上に最大1.3hPa程度の熱的低気圧を生じさせたと考えられる.
著者
川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.1009-1027, 1998-12-25
参考文献数
30
被引用文献数
16

1973年から1995年までのNCEP/NCAR再解析データを用いて、夏季アジアモンスーンとENSOとの相互作用を調べた。インド亜大陸上の20°Nを境とした、対流圏上層(200-500hPa)の夏季平均層厚偏差の南北傾度で定義されるモンスーン・インデックスとモンスーンに先立つ春季のNino-3地域のSST偏差との相関はかなり高い。これはENSOに伴うSST forcingの変化が間接的に夏季アジアモンスーンに影響を与えていることを示唆する。エルニーニョ現象によるウォーカー循環の弱化は、冬季から春季にかけての熱帯インド洋北部・海洋大陸上の積雲対流活動を抑制する。春季におけるこの熱帯対流活動の弱化から、赤道から離れた対流加熱に対するロスビー型応答により、チベット高原西方に低気圧性循環が生じる。誘引された低気圧性循環は陸域の降水量増加、土壌水分の増加をもたらし、インド亜大陸北西の中央アジア地域の地表面温度を減少させる方向に作用する。一方、モンスーンのオンセット前の春季後半に、熱帯インド洋では、下層の北東風偏差の卓越と雲量減少に関係した、海表面の熱フラックスやwind forcingに対する海洋の力学的応答の変化により、SSTの高温偏差が形成される。陸域と海域にみられるこれら異なる二つの物理プロセスは共に、海陸間の熱的コントラスト(あるいは対流圏気温の南北傾度)を弱める方向に作用し、夏季アジアモンスーンの弱化をもたらす。モンスーンが強い年は全く逆のシナリオになる。このようなプロセスで、夏季モンスーンがそのモンスーン前期に一旦弱く(強く)なると、熱帯インド洋SSTの高温(低温)偏差はさらに発達する。本研究で提案されたメカニズムは、モンスーンの強弱年が分類された1970年代後半から1990年代前半までの時期において有効である。この時期Nino-3地域のSST偏差は、先行する冬季から夏季にかけて異常に持続する傾向にあり、冬季に卓越するENSOと夏季モンスーン偏差をつなぐブリッジとして働いていた。しかしながら、モンスーンとENSOのカップリングの如何にかかわらず、ウオーカー循環の強弱と関連した春季の熱帯インド洋に卓越する外向き長波放射量偏差と下層風偏差は、夏季アジアモンスーンの予測可能性の観点から、依然として重要な因子であることも確かである。
著者
大橋 喜隆 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.277-291, 2006-04-30
参考文献数
28
被引用文献数
9

1996年から2003年の典型的な夏季静穏日を抽出して,中部日本域の山岳域とその周辺の沿岸域についてGPS可降水量の日変化傾向を調べた.可降水量の日較差は,山岳域は5〜8mm,沿岸域は2〜4mmであった.熱的低気圧に伴う地上風収束の最盛期とGPS可降水量の極大には3時間ほどの遅れが生じていた.日変化では,山岳域で可降水量の増加が減少よりも急激である傾向を示し,増加期は山岳斜面に沿う水蒸気輸送とその収束,減少期は山岳上空での一様な水平発散を主に捉えていると考えられる.沿岸域や内陸では可降水量の日変化は一般に不明瞭であったが,濃尾平野や静岡県沿岸においては夜間に可降水量が増加する傾向がみられた.また,盆地内では夜間の可降水量の漸増あるいは一定値を保つ傾向が観測され,局地循環に伴って輸送される水蒸気が盆地上空で局所的に収束している可能性が示唆された.
著者
児玉 安正 佐藤 尚毅 二宮 洸三 川村 隆一 二宮 洸三 川村 隆一 吉兼 隆生
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

亜熱帯域には3つの顕著な降水帯(亜熱帯収束帯)があり,梅雨前線帯はそのひとつである.本研究では,各収束帯の生成メカニズムについて研究した.SACZ(南大西洋収束帯)について,ブラジル高原の影響をデータ解析と数値実験の両面から調べた.亜熱帯ジェット気流の役割に関連して,ジェット気流に伴う対流圏中層の暖気移流と降水の関係を論じたSampe and Xie(2010)仮説が梅雨前線帯だけでなく,SACZとSPCZ(南太平洋収束帯)にも当てはまることを示した.梅雨前線帯が南半球の収束帯に比べて向きや緯度が異なることについて,黒潮の影響を論じた.
著者
中井 専人 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.895-905, 1998-12-31
参考文献数
30
被引用文献数
1

1992年6月5日09UTC(00UTC=09JST)から18日06UTCに梅雨前線付近に現れた74個のメソスケール雲クラスターの出現特性を調査した.雲クラスターの寿命と最大雲域面積との間には正相関があり, 平均値はそれぞれ12.4時間, 7.1×10^4km^2であった.これらは日本付近の雲クラスターについて過去に報告された値に近く, 熱帯や北米大陸上で報告された値より小さかった.メソαスケール雲クラスター(MACC)の多くは13時間以上の寿命を持ち, 前線付近に出現するものが多かった.また, 夜間から早朝にかけて多く出現する弱い傾向があった.メソβスケール雲クラスター(MBCC)は12時間以下の寿命を持つものが多く, 出現には日変化も前線との位置に対する依存性も明瞭ではなかった.MACCの多かった期間は, 雲クラスター出現域で前線の影響と考えられる強い鉛直シアーが見られた.MBCCの多かった期間は, 雲クラスターの出現域が前線から離れた亜熱帯高気圧の勢力下にあった.
著者
松本 淳 遠藤 伸彦 林 泰一 加藤 内藏進 久保田 尚之 財城 真寿美 富田 智彦 川村 隆一 浅沼 順 安成 哲三 村田 文絵 増田 耕一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

1950年代以前のアジアモンスーン諸国における紙媒体気象データをデジタル化したデータセットを作成し,20世紀全体でのアジアモンスーンと台風の活動や経路の長期変動を解析した。その結果,日本の冬季モンスーンが弱まり,冬の期間が短くなる傾向や,フィリピンで夏の雨季の開始時期が近年遅くなる傾向,東南アジアで降雨強度が強まる傾向,台風発生数の数十年周期変動,台風の低緯度地方での経路の長期的北上傾向等が見出された。