著者
榊原 隆次
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.412-417, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
24

Parkinson's disease (PD) is a common neurodegenerative disorder, and lower urinary tract (LUT) dysfunction is one of the most common autonomic disorders, and nocturia is the major LUTS in PD with an estimated incidence rate of 70%. We review the pathophysiology of bladder dysfunction in PD, lower urinary tract symptoms (LUTS), objective assessment, and treatment options. In patients with PD, disruption of the dopamine D1–GABAergic direct pathway may lead to LUTS. Overactive bladder (OAB) is the most common LUT symptom in PD patients, and an objective assessment using urodynamics commonly shows detrusor overactivity (DO) in these patients. The post–void residual (PVR) volume is minimal in PD, which differs significantly from multiple system atrophy (MSA) patients who have a more progressive disease that leads to urinary retention. However, subclinical detrusor weakness during voiding may also occur in PD. Regarding bladder management, there are no large, double–blind, prospective studies in this area. It is well recognised that dopaminergic drugs can improve or worsen LUTS in PD patients. Therefore, an add–on therapy with anticholinergics is required. Beta–3 adrenergic agonists are a potential treatment option because there are little to no central cognitive events. Newer interventions, such as deep brain stimulation (DBS), are expected to improve bladder dysfunction in PD. Botulinum toxin injections can be used to treat intractable urinary incontinence in PD. Transurethral resection of the prostate gland (TURP) for comorbid BPH in PD is now recognised to be not contraindicated if MSA is excluded. Collaboration of urologists with neurologists is highly recommended to maximise a patients' bladder–associated QOL.
著者
榊原 隆次 舘野 冬樹 相羽 陽介
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.299-304, 2021 (Released:2021-12-27)
参考文献数
25

髄膜炎-尿閉症候群(meningitis-retention syndrome,MRS,尿閉と無菌性髄膜炎の同時発症)は,原因不明の急性尿閉をみた場合,一度は考慮すると良い疾患と思われる.最近さらに,MRSで髄膜刺激症状が無く,髄液異常のみを呈する不全型も知られるようになってきた.尿閉の病態機序として,脊髄内の排尿下行路の比較的選択的障害が推定されている.多発性硬化症,急性散在性脳脊髄炎,脊髄炎等はいずれも副腎皮質ステロイド剤などの免疫治療を要する一方,MRSは自然軽快することが多い.ステロイドパルス療法がMRSの経過を短縮するか否かについては,今後の検討が必要と思われる.MRSでは,急性期の尿閉を適切に対処し,膀胱過伸展を防ぐことが重要と思われる.
著者
榊原 隆次
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.176-180, 2020 (Released:2020-10-16)
参考文献数
31

パーキンソン病(PD,大脳皮質に広がった形はレヴィー小体型認知症[DLB])は,ときに高度の便秘をきたす場合があり,消化器科救急として偽性腸閉塞/麻痺性イレウスをきたす場合もある.さらに最近,PD患者の便秘が,運動症状などをほとんど伴わず,初発症状となりうることが明らかとなってきた(レヴィー小体型便秘Lewy body constipation).その機序として,腸管壁内(Auerbach)神経叢の変性・レヴィー小体出現を反映しているものと思われ,一部,大脳黒質・青斑核の病変も関与していると考えられる.救急受診を予防するためにも,PDの便秘に対して,十分な治療が望まれる.とくにレヴィー小体型便秘の患者さんは,内科・消化器内科を初診することが少なくないと思われ,脳神経内科と消化器内科の協力が重要と思われる.
著者
秋葉 崇 小川 明宏 寺山 圭一郎 土谷 あかり 中川 晃一 榊原 隆次 丸岡 弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.695-699, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
16
被引用文献数
2

〔目的〕足関節底背屈運動が血行動態と自律神経系に与える影響を検討し,起立性低血圧の対処法としての一助とすること.〔対象と方法〕対象は健常男性8人(年齢28.8 ± 5.3歳)とした.プロトコルは,5分間の安静座位の後,1分間の足関節底背屈運動を行い,再度5分間の安静座位を保持した.その間,循環動態と自律神経の反応を評価した.〔結果〕心拍数,一回拍出量,心拍出量は,安静時の値と比較して,足関節底背屈運動中の値が有意に高値を示した.また,その効果は運動後1分まで持続した.LF/HF,HFなどの自律神経系の反応は,有意な変化が認められなかった.〔結語〕足関節底背屈運動の即時効果が認められ,その効果は1分程度持続した.足関節底背屈運動が,起立直後の血圧低下を回避する方法としての一助となる可能性が示唆された.
著者
土井 啓員 榊原 隆次 岸 雅彦 露崎 洋平 舘野 冬樹 平井 成和
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1382-1385, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

パーキンソン病(PD)において消化管運動機能障害は高頻度でみられる自律神経系の合併症である.とくに胃排出能低下は,小腸上部へのL-ドパの到達を遅らせる可能性があり,薬物治療管理の視点から重要である.実際胃排出能低下がみられるPD患者では,L-ドパの血中濃度の立ち上がりが遅くなる割合が有意に高い.L-ドパの吸収遅延は薬効の発現に影響し,wearing-off,delayed-onを惹起する要因の一つといえる.六君子湯などの消化管運動機能改善薬は胃排出能の改善に有用である.経腸的L-ドパ持続投与法も進行期PD患者のL-ドパの血中濃度を安定させる選択肢として期待されている.
著者
榊原 隆次 福武 敏夫 平山 恵造
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.161-166, 1992-08-01
被引用文献数
1

単純ヘルペス脳炎(HSE)自験30例を,臨床症候・画像検査により側頭葉型,側頭葉脳幹型,脳幹型に分けると,脳幹型(7例,23%)は他の2型に比し,発病早期には頭痛,発熱が少なく,GOT・GPT値の異常高値がみられず,初回腰椎穿刺時の髄液圧が平均85mmH_2Oと低く,病像完成期には意識障害が高度であったが,脳波上での周期性同期性放電がみられないなどの特色を示した。脳幹障害を示唆する症候として,corectopiaや対光反射消失などの瞳孔異常,眼頭反射の消失や緩徐・急速相のない自発眼振などの眼球運動異常,無呼吸や吃逆様呼吸などの呼吸異常を認めた。硬膜下水腫の合併が2例にみられたが非手術的に軽快し,死亡例・再発例がなく,自然軽快例もみられるなど予後良好であった。以上の脳幹型HSEの特徴はHSEの早期診断および治療にとって重要と考えられた。