著者
榎本 文雄
出版者
華頂短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究成果報告書は,『雑阿含経』(『大正新脩大蔵経』第2巻,pp.1ff.)に対応するインド語テキストを収集したものである。『雑阿含経』のインド語テキスト(Samyuktagama)は失われ,その一部が断片的に現存するにすぎない。かつて,『雑阿含経』は説一切有部に所属すると考えられていたが,説一切有部は,インド仏教の最大部派の一つで,北インドのみならず,中央アジアにまで広がったため,その内部にカシュミール有部やガンダーラ有部などの幾つかの分派が生じた。最近の研究によって『雑阿含経』は根本説一切有部の伝承に最も近いことが明らかにされてきた。筆者は根本説一切有部を説一切有部内部の一分派と見なす。根本説一切有部は,しだいに説一切有部内部で最大の分派になっていったと考えられる。本研究成果報告書には,説一切有部ないし根本説一切有部の文献から,『雑阿含経』の各経に最も近いインド語テキストの箇所が収集されている。そのインド語テキストは以下の三種からなる。(1)インド語テキストの写本断片。(2)説一切有部の文献の中の引用箇所。(3)説一切有部の文献に所属ないし由来し,『雑阿含経』に部分的に対応する箇所。本報告書は,『雑阿含経』の最後の章である*Samgitanipata(『雑阿含経』巻4,22,36,38-40,42,44-46,48-50)を扱う。
著者
榎本 文雄
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.400-392, 1998
被引用文献数
1
著者
肥塚 隆 淺湫 毅 橋本 康子 深見 純生 小野 邦彦 上野 邦一 榎本 文雄 渡辺 佳成 丸井 雅子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

クメール王国の刻文に頻出する devaraja の語は、 「神のような王」を意味し、王の没後にその墓廟として寺院が造営され、神仏と一体化した王像が安置されたと考えられてきた。また東部ジャワでも、同様な信仰があったとされてきた。しかしインドではこの語は「神々の王」の意味で用いられるのが一般的で、王を神格化する信仰が盛行した形跡はない。南インドでは王像が神像と並べて寺院に安置されることは珍しくないが、むしろ王権の神聖さの明示にあったと考えられる。