著者
佐藤 隆士 鈴木 祥悟 槙原 寛
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.46-49, 2006-06-25
参考文献数
15
被引用文献数
1

Anthracophora rusticola Burmeister is a scarabaed beetle threatened about its decline in Japan. Recently, the founding of larvae or pupae of the beetle from the nest of raptors, especially Honey Buzzard Pernis apivorus Taczanowski, have been repeatedly reported. These founding imply that the beetle would specifically breed in the raptor's nest and that the decline of the beetle, might be caused by the reduction of the breeding of raptors in Japan. In this study, we surveyed two nests of Honey Buzzard to clarify the nest utilization pattern of the beetle. One of them had been confirmed to be annually used by raptors for their breeding, and the other seemed not to be used by raptors recently. One dead body of adult and 23 cocoon shells of the beetle were discovered from the former nest. All cocoon shells were found from lower part of the nest where was relatively dry compare to upper part. None was found from the latter nest. We discussed breeding pattern of beetles on raptors nests.
著者
末吉 昌宏 前藤 薫 槙原 寛
出版者
森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.171-191, 2003-09
被引用文献数
7 2

茨城県北部の温帯落葉樹林の二次林、混交林、自然林に調査地を設定し、皆伐後の二次林回復時における有弁類を除く双翅目短角類の種数・個体数を通年で調査した。その結果、41科441種余りを見い出し、それら短角類群集の種構成は森林の成熟に伴って変化する傾向にあることが明らかになった。植食性、菌食性、腐食性、捕食性および捕食寄生性といった短角類の多様な食性を代表する分類群としてミバエ科、トゲハネバエ科キイロトゲハネバエ属、ハナアブ科、クチキバエ科、キアブ科、キアブモドキ科、アタマアブ科が挙げられ、それぞれが森林の遷移に対して異なった応答を示すことが明らかになった。また、本研究では森林に生息する主要な短角類として、オドリバエ科、ハナアブ科、シマバエ科が挙げられ、そのうちハナアブ類群集の種構成は遷移の進んだ林齢の似通った二次林および自然林間では殆ど変化は無く、皆伐地、混交林、壮齢林のように異なる森林タイプで大きく異なっていた。そのため、ハナアブ科は様々な森林タイプを含む景観の多様性を評価するのに有用であると考えられる。
著者
山田 房男 槙原 寛 岩田 隆太郎
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

針葉樹一次性穿孔性甲虫類の中で個体密度変動が顕著と考えられるモミ属・トウヒ属害虫のオオトラカミキリXylotrechus villioni Villardについて,その[1]分布,[2]枝の食害,[3]幼虫の形態,[4]天敵,[5]誘引捕獲法の開発を中心に調査を続行した。1.分布:樹幹上の食痕の確認により,紀伊半島における分布を新たに明らかにした。また本種模式産地京都府産の個体を得て,種全体の亜種分類への足掛りを得た。2.枝の食害:長野県松本市扉鉱泉国有林(混交林)のウラジロモミ林分,山梨県鳴沢村富士山麓二合国有林ウラジロモミ造林地,などにおける枝に対する食害様式の調査を行なった。その結果,産卵はむしろ枝に対するものの方が幹に対するものより多く,またその大部分が幼虫期に死亡もしくは幹部へ移行し,羽化時には枝内からはほとんど姿を消すことが示唆された。3.幼虫の形態:本種幼虫は未だ知られていず,今回山梨県鳴沢村富士山麓二合国有林ウラジロモミ造林地において,同樹種から幼虫を複数頭得てその体表面微細形態を調べ,近似種すべてとの違いを明らかにした。4.天敵:本種の個体数の制限要因としては,寄生蜂・病原菌・宿生樹の樹液などが考えられるが,個体密度が極端に低いためその特定は困難を極める。しかし本種幼虫の枝における食痕が,キツツキ類の穿孔と見られるものによって終止しているものがかなりの数見られ,このことから,これらの穿孔性鳥類が天敵としてかなり重要であることが示唆された。5.誘引捕獲方法:市販甲虫誘引トラップ(カイロモンを装着)を用い,成虫出現期の夏期に神奈川県清川村札掛一の沢考証林(混交林)のモミ林分において誘引捕獲調査を実施したが,林分全体での個体密度が極端に低いためか,これまで同様捕獲には至らなかった。
著者
北島 博 菅 栄子 槙原 寛
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.192-196, 2006-06-01
被引用文献数
1 1

コウモリガ幼虫を市販の蚕用人工飼料を用いて,25℃の長日区(LD16:8)と短日区(LD10:14)で220日間飼育した。蛹化率は長日区(37.6%)の方が短日区(13.6%)より有意に高かった。長日区では雌雄とも蛹化したが,短日区では雄の蛹化だけがみられた。羽化率は長日区(25.6%)の方が短日区(12.8%)より有意に高かった。長日区の雄,雌,および短日区の雄における平均幼虫期間は,それぞれ158.6日,159.7日,および151.6日間,平均蛹期間はそれぞれ23.9日,22.6日,および22.5日間であった。以上より,本種幼虫を蚕用人工飼料を用いて飼育できること,本種幼虫の蛹化には日長条件が密接に関係しており,蛹化率を高めるには25℃の場合長日の方が短日より望ましいことが明らかとなった。