著者
平松 靖史 品川 晃二 高畑 統臣 佐藤 俊雄 水田 玲美 権守 邦夫 宮崎 哲次 小嶋 亨
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.145-149, 1998-07-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

アマニタトキシン (キノコ毒) 中毒による劇症肝炎を報告する。71歳, 男性, 下痢を主訴にして来院。入院時の血液生化学検査でGOT518U/L, GPT333IU/L, BUN77.3mg, Cre 7.0mgと急性の肝腎障害を認めた。意識レベルは清明であったが, 入院後, 劇症肝炎を来たし血漿交換等の治療に抵抗し死亡した。又一緒に毒キノコ中毒になり死亡した妻は司法解剖され, 採取された血液, 脳, 肝臓の組織からキノコ毒であるα-amanitinが検出された。司法解剖でキノコ毒を証明しキノコ中毒死を証明した法医学的報告は今までなく, その検査結果も合わせ報告する。本例も死後肝生検で致命的劇症肝炎像を証明した。
著者
吉岡 尚文 権守 邦夫
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

様々なアナフィラキシーショックのうち、抗原・抗体反応に起因するショックは例えば、IgA欠損症や他の血漿蛋白欠損患者への輸血でしばしば経験されることである。本研究はこれに類似するモデルをin vitroで作成し、肺動脈由来内皮細胞の挙動を検索することにより、その病態の解明と治療への応用を検討することを目的とした研究である。平成14年度の実験では、ヒト肺動脈由来の市販内皮細胞を培養し、コンフルエントになった時点で、抗ヒトハプトグロビン(Hp)を加えインキュベートし、次いで抗原液(ヒトHp)を添加後、細胞培養上清中に放出されると予想される様々な物質を経時的に測定した。その結果、ICAM-1とVCAM-1に放出量の変化が認められたことから、平成15年度は抗原や抗体の容量依存性の検討、さらに培養液中に白血球細胞やTNFαを加え、炎症反応を促進させる系を作成した。この系を用い、ICAM-1とVCAM-1の濃度を1時間ごとに6時間迄、12時間ごとに48時間迄経時的に測定し、抗原や抗体の量、白血球細胞や、TNFαの影響を検討したが、再現性のあるデーターは得られなかった。むしろ、細胞培養液に異物(ある種のヒト血清蛋白や抗体であるウサギ血清)を加えることで、細胞は刺激されてICAM-1とVCAM-1のような物資を放出したのではないかということが示唆される結果を得た。肺動脈の内皮細胞は何らかの物質を放出している可能性が示唆されたが、今回の研究からはアナフィラキシーショックと関連ある重要因子の特定や内皮細胞の確定的反応を確認することは困難であった。
著者
影浦 光義 仁平 信 工藤 恵子 寺田 賢 権守 邦夫
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

我々は,1)連合王国(イギリス),アメリカ合衆国およびカナダの法中毒学研究室の実務の調査・研究および資料の収集;2)法中毒学研究室ガイドラインなどの収集した欧米の参考資料の翻訳;3)各研究室に必須の標準操作手順(Standard Operating Procedures)マニュアルの作成など;を行い,試料の採取・取扱いおよび検査のQuality Control/Quality Assuranceに必須の事項を整理するとともに,薬毒物鑑定を始めとする我が国の法中毒学実務を改革する方策を研究した.結論として,我々は,1)検査研究室は法中毒学研究室ガイドラインに沿った標準操作手順マニュアルの整備,研究室が履行したすべての文書化,分析法および各検査のバリデーション,および容認基準を逸脱した結果に対する修正作業(Corrective Action)を行うこと;2)他機関に検査を委託する研究室は,委託先の研究室の使命/目的が当該研究室のそれと合致しているか確認するとともに,委託する研究室に検査試料を手渡すまでは,検査試料に関する全責任を負うこと;関係政府機関は,薬毒物鑑定(検査)に不可欠の薬毒物標準品の入手を容易にする施策を講じるとともに,薬毒物検査(鑑定)を含む司法/行政解剖に関わる鑑定に対して,その必要経費および鑑定料を相当の代価として,当該名目で支払うこと;4)法医学教室(組織)は教室が縮小傾向にある現在,組織の変革は必至であり,英知を集めて将来を真剣に議論すること:を強く勧告する.
著者
鈴木 修 渡部 加奈子 野澤 秀樹 権守 邦夫
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

1. LC-TOFMS装置の立ち上げと習熟: 導入したLC-TOFMS装置は、最新鋭のもので、制御システムはかなり進化している。TOFMS装置自体も従来の四重極型やイオントラップ型とは原理的に異なっている。最近になって、ようやく本装置を自由に使いこなせるようになった。2. マジックマッシュルームからのサイロシンとサイロシビンの検出: きのこ毒の中で、低分子かつ強力な有害活性を有す物質である。まずこれらの物質の抽出法を確立し、LC-TOFMSとLC-Qq-TOFMSの両モードで分析比較したところ、両モードにおける検出限界に余り差はなく、いずれも注入量で約20pgであった。現在異性体であるブフォテニンを内部標準とし、実験を継続しているところである。3. 強力きのこ毒アマニチン類のLC-TOFMSによる分析: ドクツルタケやシロタマゴテングタケに含まれるアマニチン類は、特に毒性が強く、数ミリグラムでヒトを死亡させるほどである。従って、この毒素を生物学的化学兵器として使用する事も可能と考えられる。この毒素類は分子量900以上の環状ペプチドで独特の構造を持つ。従って、同じく環状ペプチド構造を持つシクロスポリンAを内部標準物質として用い、まずはα-アマニチンの分析法を構築した。検出限界は注入量で、50pgと高感度であった。4. MALDI質量分析イメージングシステムの立ち上げと法医学的応用: 本科学研究費補助金で導入したABI社製QSTAR XL TOFMS装置にはオプションとして、イメージングシステムを立ち上げる事が可能であるため、そのシステムを立ち上げた。現在慢性覚せい剤やコカイン中毒モデルラットを作製し、慢性中毒症状発現メカニズムを解明すべく、鋭意実験を行っている。