著者
横山 実紀 大沼 進 広瀬 幸雄
出版者
NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.21-32, 2017-11-30 (Released:2019-09-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は指定廃棄物の長期管理施設の問題を模した指定廃棄物処分立地ゲーム(広瀬 2015)を基に,無知のヴェールがNIMBY問題の合意形成を促進する可能性を検討した.当該ゲームでは,利害を知る当事者(“市長”)が議論する段階と自分の利害関係について無知だが潜在的に当事者となり得る状況(無知のヴェール)下にあるプレーヤー(“市民”)が議論する段階があり,最終決定は後者に委ねられる.この状況で最終決定者は公正な決定を行えるか,決定に関与できない利害当事者が受容できるかを検討した.研究1では不公正な決定が8グループ中3つでみられ,利害当事者の受容も高まらなかった.研究2では,全員が利害当事者となって議論し,それでは合意に至らないという経験を経てから同様の段階的意思決定を行ったところ,不公正な決定はみられず,利害当事者の受容の割合が増えた.以上より,単に無知のヴェールによる決定だけでは不十分で,利害当事者だけによる議論では合意形成が困難であるという経験の必要性が示唆された.
著者
相馬 ゆめ 横山 実紀 中澤 高師 辰巳 智行 大沼 進
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.11-23, 2022-09-15 (Released:2022-09-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1

An enormous amount of removed soils were produced by the decontaminated works derived from the Fukushima nuclear power plant accident. Public understanding and dialogues are required to realize the final disposal of the removed soils. This study contemplated the plural principles of common goods surrounding the removed soils. A group discussion experiment was conducted, setting three arguing points. Before the experiment, the Discourse Quality Index (DQI) was developed to visualize the discussion qualities by plural evaluators, which was confirmed the validity showing sufficient matching rates between the evaluators. Results of the experiment by the analysis of DQI score showed that statements from the points of Utilitarianism were observed the most, while the statements from maximin were fewer. However, many decisions of the groups gave priority to the inequity alleviation and the maximin principles.
著者
村田 絵美 志方 万莉奈 岡田 真実 佐橋 磨衣子 横山 実香 小西 洋太郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.14, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】本研究は,玄米の発芽過程で生じる内因性酵素や機能性成分を利用し,製パン性(品質と機能性)を向上させる最適条件について検討した.【方法】強力粉100%パン(コントロール)および10%発芽玄米粉(2012年産コシヒカリを0,1,2,5日間発芽)を添加した計5種類のパンを,Panasonic SD-BMS104ホームベーカリー(約2時間のShort Course, SCおよび4時間のLong Course, LC)で焼成した.パン材料,発酵生地,焼成後のパンについて,還元糖量(BCA法),総遊離アミノ酸量(TNBS法),フィチン酸量(Wade法),GABA量(酵素法)を測定した.またパンのクラムについては卓上型物性測定機TPU-2CLを用いて硬さと凝集性を測定した.【結果】(1)発芽玄米の還元糖量は発芽2日目までは減少し,3日目以降は増加した.総遊離アミノ酸量とGABA量は,発芽日数を長いほど増加する傾向にあった.フィチン酸量は発芽3日目までは増加したが,その後減少した.(2)製パン工程において,還元糖量,総遊離アミノ酸量,GABA量はいずれも,発酵生地の段階で有意に増加し,パン焼成により減少した(しかし材料中の含量よりは高い).フィチン酸量は材料,発酵生地,パンの順に減少した.(3)SC, LCにかかわらず,焼成後のパンの比容積はコントロールと差はなかった(4~5 ml/g).SC, LCにかかわらず,発芽日数の長い発芽玄米を使ったパンほど,柔らかくなる傾向にあり,5日発芽パンが最も柔らかかった.発芽玄米パンの凝集性はいずれもコントロールよりも低かったが,発芽玄米パン同士で比較すると1,2日発芽玄米パンにおいて高かった.
著者
横山 実
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.141-158, 1987

日本と韓国の非行少年について,比較研究をおこなう手はじめとして,両国の公の統計の分析をおこなった.公の統計を用いる比較研究には,多くの問題点が存在している.しかし,日本と韓国の比較研究は,他国間のそれと比べて,その問題点は,より軽微であると思われる.何故ならば,日本と韓国との間には,統計作成の方法,法律における犯罪の定義等で,類似性がみられるからである.公の統計によると,日本では,1970年代の後半から1980年代前半にかけて,人口あたりの非行少年の比率が増大している.この間,成人や年長少年の犯罪は,かならずしも増加していない.著しく増加したのは,年少少年による軽微な犯罪である.このような犯罪の数は,統制機関の活動如何によって,簡単に増減しうる.戦後最悪といわれた高い非行率は,社会統制機関,特に警察が,補導および検挙の活動を活発化したために,もたらされたのであろう.韓国においても,これと同じ現象が見られるであろうか.韓国では,1970年代に,高度経済成長期を迎えた.この間,成人の犯罪率も,少年のそれも,ともに増加している.少年が犯した犯罪の内訳では,日本に比べて,暴力犯の比率が高い.身分別では,学生の比率が高まりつつあるとはいえ,無職が3分の1強を占めている.経済状態では,下層階級の者が9割近くを占めている.年齢別では,18〜19歳の年長少年が,半数近くとなっている.公の統計から,これらの特徴を読みとる限りでは,韓国の社会統制機関は,成人や年長少年の犯罪の処理に,追われているようである.日本で最近見られているような現象は,韓国において近い将来に生じるとは,いえないようである.