著者
横山 昌幸
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-97, 2018-03-25 (Released:2018-06-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

EPR効果についての誤解と批判について解説する。1986年に論文発表されてから30年以上が経過し、現在ではEPR効果は日本DDS学会はいうに及ばず、医薬工の関連する学会でも説明なしに引用されるほど広く知られた概念となっている。そんな状況であるからこそ、EPR効果について基本的な誤解が起こり得ると、筆者は考えている。また、誤解はなくとも、どこまでの現象をEPR効果として定義するかについては、議論があるところである。本稿の前半部分では、EPR効果の歴史と定義について記述し、誤解されやすい点について解説を加えた。本稿の後半部分では、EPR効果に対する批判論文を引用し、その内容の要点をまとめて、筆者の意見を加える。筆者の意見の大半は、この批判に反対するものであるが、このような批判を通じて議論を起こすことは科学の発展に不可欠なことと考えている。
著者
横山 昌幸
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.615-622, 2006 (Released:2007-03-30)
参考文献数
29

2000年にナノテクノロジーの振興が提唱される以前から, DDSではナノサイズのキャリアが当然のごとく使用されてきた. それは, 1990年代までにナノサイズを用いる意義がDDSで深く認識されてきたことと, ナノサイズのキャリアを作製する技術が得られていたことによる.本稿では, 薬物キャリアがナノサイズである意義と, キャリアの投与経路, そしてキャリアの形態を分類して説明する. 最後の章では, 各キャリア形態の最近の発展を概観するとともに, 関連したトピック (ナノメディスンと分子イメージング) についてまとめる.
著者
小出 裕之 浅井 知浩 畑中 剣太朗 清水 広介 横山 昌幸 石田 竜弘 際田 弘志 奥 直人
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.129, no.12, pp.1445-1451, 2009-12-01 (Released:2009-12-01)
参考文献数
21
被引用文献数
10 12

Liposomes modified with polyethylene glycol (PEG) can stably exist in the bloodstream because the PEG on the liposomes attracts a water shell to the liposomal surface. Since these liposomes are long circulating nanocarriers, they are used as drug and gene delivery tools. Repeat injection of PEGylated liposomes, however, is known to induce the accelerated blood clearance (ABC) phenomenon. In the ABC phenomenon, PEGylated liposomes that are injected subsequent to the first injection are cleared rapidly from the bloodstream and accumulate in the liver, resulting in loss of their long-circulating characteristics. The induction of ABC phenomenon is related to the production of anti-PEG IgM from splenic B cells. To elucidate the mechanism of the phenomenon, we firstly examined the relationship between the induction of ABC phenomenon and the concentration of PEGylated liposomes, and observed that the high dose of those did not induce the phenomenon. Next, we investigated whether polymeric micelles trigger ABC phenomenon or not. Finally, the size-dependency of ABC phenomenon was investigated by use of variously sized PEGylated liposomes and polymeric micelles having PEG chains. Our data suggest that the initiation of ABC phenomenon would be size-dependent, and particles smaller than 30 nm did not induce ABC phenomenon. We anticipate that the elucidation of the ABC phenomenon will be helpful for the development of DDS formulations.
著者
岡野 光夫 大和 雅之 菊池 明彦 横山 昌幸 秋山 義勝 清水 達也 KUSHIDA Ai 青柳 隆夫
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、温度変化に応答して水溶性を大きく変化させる温度応答性高分子のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)とその誘導体で修飾した温度応答性パターン化表面を、電子線重合法を用いて作製し、これら表面の物性解析と異なる細胞種を用いた共培養、ならびに共培養細胞シートの作製への応用可能性を追究した。今年度は、パターンサイズの異なるパターン化温度応答性表面を作製した。具体的には、電子線重合法によりPIPAAmであらかじめ修飾された表面に、疎水性モノマーのブチルメタクリレート(BMA)溶液を塗布、パターンサイズの異なるマスクを介して電子線照射し、パターン化温度応答性表面を調製した。このとき、パターンサイズが100μm程度では、照射電子線の潜り込み等によりパターンサイズがマスクに比して変化する可能性が示唆された。この手法で、温度制御により部位特異的に親水性/疎水性(細胞非接着性/接着性)を制御しうる表面が調製できた。これらの表面を用い、肝実質細胞と、血管内皮細胞のパターン化共培養系を構築した。さらに、培養皿表面全体が親水性を示す20℃ですべての細胞を、パターン化形状を維持したまま1枚のシートとして回収できた。次に、共培養による肝実質細胞機能の変化をみるために、肝実質細胞から産生されるアルブミンの定量、ならびにアンモニア代謝に伴う尿素合成能を解析した。パターン化共培養により、いずれの機能も肝実質細胞単独培養系に比して高い数値を示した。さらにパターンサイズが小さいほど機能亢進することが明らかとなった。このとき、より小さなパターン化共培養系で肝実質細胞の培養期間が延長できる点も明らかとなった。以上の結果は、肝実質細胞と内皮細胞シートとの重層化によって得られた知見とよく一致していたことから、細胞-細胞間の距離がきわめて重要な影響を与え、細胞機能の発現につながるものと考えられる。