著者
荒井 一樹 松浦 大輔 杉田 翔 大須 理英子 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11245, (Released:2017-07-19)
参考文献数
17

【目的】延髄外側梗塞患者において自覚的視性垂直位(以下,SVV)と静止立位バランス,歩行非対称性の関係を検討する。【方法】Body lateropulsion(BL)を呈する延髄外側梗塞患者9 名において,SVV 値と立位重心動揺計の総軌跡長,矩形面積,足圧中心左右偏位および加速度計より算出した歩行非対称性との関係をSpearman の相関係数を用いて検討した。【結果】SVV 値は平均7.4(SD:9.5)度であった。SVV 値と開眼足圧中心偏位とは相関しなかったが,閉眼足圧中心偏位と相関を認めた(r = 0.75, P < 0.05)。また,SVV 値の絶対値は歩行非対称性と有意な相関を認めた(r = –0.78, P < 0.05)。【結語】BL を呈する延髄外側梗塞患者において,SVV 偏位は閉眼の静止立位バランスと歩行非対称性と関連した。その因果関係については今後の検証が必要である。
著者
松永 玄 山口 智史 鈴木 研 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11163, (Released:2016-06-04)
参考文献数
40

【目的】通所リハビリテーションを2 年間利用した脳卒中者の歩行能力と下肢筋力の変化を検討する。【方法】脳卒中者126 名(平均年齢64 歳)の利用開始時,利用後3,6,12,24 ヵ月の歩行能力と下肢筋力を,開始時の歩行速度によりHousehold 群(0.4 m/s 未満),Limited 群(0.4 m/s ~0.8 m/s),Full群(0.8 m/s 以上)に分類した。【結果】Household 群の歩行速度は,開始時と比較し,6 ヵ月以降で有意に向上し,麻痺側筋力は利用後12,24 ヵ月で有意な増加を認めた。Limited 群の歩行速度は,6 ヵ月以降で有意に向上し,麻痺側筋力は24 ヵ月で有意な増加を認めた。Full 群は有意な変化を認めなかった。【結語】2 年間の通所リハビリテーション利用により,生活期の脳卒中者においても歩行速度と下肢筋力は改善・維持することが示され,その傾向は開始時の歩行能力が低い群で特に得られることが示唆された。
著者
小向 佳奈子 藤本 修平 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.819-824, 2016-09-10

要旨 【目的】リハビリテーション分野において,経験に基づく臨床思考はよく用いられる.しかし,臨床思考が経験によってどのように変化するかについての検討はない.本研究では,装具を選定する際の理学療法士の臨床思考を明らかにし,経験年数による相違について検討した.【対象と方法】質的調査と量的調査を混合して行うミクストメソッドを用いた.まず,構造化面接により,装具選定の際にどのような視点や評価指標を参考にしているかについて,理学療法士22名を対象に調査した.その結果より,主要な視点と用いる評価についての質問紙を作成した.次に,作成した質問紙を用いて量的調査を理学療法士40名に実施した.解析は,視点ごとに選択している評価の割合を集計し,経験年数による相違を検討した.また,視点と評価の関連を視覚的に検討するため,コレスポンデンス分析を実施した.【結果】質的調査から,視点として装具の必要性,角度設定など6項目が,評価として可動域,筋緊張など14項目が抽出された.量的調査の結果,装具の必要性における予後の評価や,角度設定における麻痺側の支持性の評価について,経験年数によって相違があった.コレスポンデンス分析の結果,経験年数4年目以上のほうが3年目以下よりも,評価と視点が集約する項目が明確であった.【結語】理学療法士は多様な視点や評価から装具を選定しており,それらは経験年数によって相違があることが示唆された.
著者
西脇 香織 近藤 国嗣 里宇 明元 千野 直一
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.257-266, 2002-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
36
被引用文献数
3 1

Peripheral nerves have a potency to regenerate vigorously after injury, but often it is difficult to achieve a sufficient functional recovery. Although advances in microsurgery and a better understanding of nerve regeneration have improved the outcomes of nerve repair, a delayed and misdirected reinnervation still be a problem hindering functional restoration. Rehabilitation managements of peripheral nerve injury, such as electrical stimulation, exercise training and other approaches, have been in clinical use, but their effects on promoting reinnervation remain controversial. In this paper we review the basic studies which have investigated the mechanisms and efficacies of electrical stimulation, exercise training and motor/sensory reeducation. Electrical stimulation could elicit effects on the regenerated nerves, but inappropriate stimulation conditions might disturb regeneration. Exercise training often improves functional recovery after nerve injury, but overloaded and forced exercise might have a detrimental effect. The peripheral axonal misdirection is reflected in a cortical reorganizational changes. Some studies have revealed beneficial changes in the cortical map after motor/sensory reeducation programs in monkeys with nerve injury, which may explain the improved functional outcomes after rehabilitation in humans.
著者
數田 俊成 武田 湖太郎 田中 悟志 小田柿 誠二 大須 理英子 大高 洋平 近藤 国嗣 里宇 明元
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.18-22, 2013-02-01 (Released:2015-02-20)
参考文献数
16

経頭蓋直流電気刺激 (transcranial direct current stimulation: tDCS) は頭蓋上に配置した電極から微弱な電流を与える刺激法で, 脳機能を促進あるいは抑制すると言われている。本研究は15単語の記銘・再生を繰り返すRey’s Auditory Verbal Learning Test (RAVLT) を用い, tDCSが聴覚言語性記憶に及ぼす影響について検証した。健常者12名 (21–32歳) を対象とし, RAVLTの記銘2回目からtDCSを用いて左頭頂葉下部, 後部側頭葉を刺激した (刺激強度: 2 mA) 。陽極刺激条件では10分間, 偽刺激条件では15秒間刺激を与えた。RAVLTの2回目再生数は, 陽極刺激条件が偽刺激条件より有意に多かった。健常者においてtDCS陽極刺激により聴覚言語性記憶の有意な増強が認められた。tDCSは記憶機能賦活に役立つ可能性がある。
著者
井上 靖悟 大高 洋平 小田 ちひろ 後藤 悠人 守屋 耕平 工藤 大輔 近藤 国嗣 松浦 大輔
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.47-54, 2017-03-10 (Released:2017-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,新人理学療法士に対する転倒予防の新たな教育プログラムが,リハビリテーション病院の理学療法中の転倒を減少させるのかについて検討することである。【方法】2011年4月から2016年3月の5年間に理学療法中に発生した転倒事例について後方視的に調査を行った。2014年4月より新しい理学療法士の新人教育プログラムを導入し,その前後の転倒発生の変化について調査した。新しく導入したプログラムは,理学療法中の過去のインシデントを基に,各動作における環境設定や介助方法などリスク管理に必要な注意点を細分化したリストを活用した実践型プログラムである。指導者はリストの各項目について説明を加えながら実際の動作を見せることで新人の指導を行い,新人は指導者の行う場面の見学,そして模倣を繰り返した。また,指導者は随時実施内容の修正やフィードバックを与え,新人の技術向上を図った。経験段階をすべての項目についてチェックし,最終的にすべての技術を1人で実践できることを目標とした。この教育研修プログラムを,新人教育期間である4月から6月の3か月間にわたり理学療法科全体で実施した。 年間転倒件数および理学療法士1人あたりの年間転倒発生件数,転倒時動作の種類,転倒時動作の自立度について,新しい教育プログラムを導入した前後で比較した。【結果】新人理学療法士の数は,平均±標準偏差にて,教育プログラム導入前10.0±1.7名,導入後9.5±2.1名と大きな変化を認めなかった。新人理学療法士の平均転倒件数は,導入前は10.7±2.5件,導入後は5.0±1.4件と半減し,理学療法士1人あたりの平均年間転倒発生件数も,導入前1.1±0.1件,導入後0.5±0.5件と半減した。転倒時動作の種類は歩行が一番多かったが,教育プログラム導入後は,そのうち介助歩行の患者の転倒が減少する傾向を示した。【結論】新人理学療法士に対する動作ごとのリスク管理のリストを用いた現場教育は,理学療法中の転倒件数の減少に有効である。
著者
村神 瑠美 倉山 太一 後藤 悠人 谷 康弘 田所 祐介 西井 淳 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】中枢神経系は複雑な歩行制御を,速度に依らない特定のシナジーを用いて簡易化し,恒常的な制御を行うとされている。Ivanenko(2006)らは健常成人の32個の下肢・体幹・肩の歩行筋活動パターンの90%以上が,わずか5つの因子で説明でき,さらにその因子は一定の速度範囲において不変であると報告した。しかし一方で,極端に遅い速度域で健常者が歩行した場合,歩幅や歩行率などの変動性が増大することから,極低速域では恒常的な歩行制御が成立しない可能性がある。脳卒中患者ではそのような低速度域で歩行している場合も多く,歩行介入を考えた場合,極低速域における歩行制御に関する知見は重要な意味を持つと考えられる。そこで本研究では極低速域における歩行制御を筋活動の側面から明らかにすることを目的に,健常者を対象として通常速度域から極低速域における筋電解析,運動学的解析を行った。【方法】対象は健常成人男性20名(26.8±4.53[歳],体重64±8[kg],身長1.72±4.31[m])とした。計測課題は10,20,40,60,80,100[m/min]の6条件でのトレッドミル歩行を擬ランダムな順序で実施した。表面筋電計(Trigno,DELSYS)にて,歩行中の体幹・下肢16筋(外腹斜筋,腹直筋,大腿直筋,外側広筋,長腓骨筋,前脛骨筋,ヒラメ筋,腓腹筋外側頭,半腱様筋,大腿二頭筋,脊柱起立筋,中殿筋,大殿筋,大腿筋膜張筋,縫工筋,長内転筋)を測定した。運動学的指標として歩幅,歩行率などを三次元動作解析装置(Optotrak,NDI)を用いて計測した。筋電解析は,最初に各速度における各筋の表面筋電図について,1歩行周期で正規化し,20歩行周期分の加算波形を作成した。続いて,被験者ごとに得られた16筋の加算波形に対して速度ごとに主成分分析を行い,固有値0.5以上の主成分波形を抽出した。更に速度60[m/min]の主成分波形と,その他の速度の主成分波形の間で相関係数を算出,正規化(Fisher-Z変換)した数値を各波形の類似度とした。運動学的解析については,歩行比(歩幅/歩行率)を算出した。統計は,主成分波形の類似度,及び歩行比について,速度を因子とした一元配置分散分析を実施し,有意差が得られた場合に下位検定として各速度間での多重比較(paired-t検定)を実施した。有意水準は5%とした。解析および統計にはMatlab 2012aならびにSPSS 19.0を用いた。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会にて承認され,全対象者に内容を説明後,書面にて同意を得た。【結果】主成分分析の結果,平均で5.1個の主成分が得られた。主成分波形の類似度(相関係数のz値)は,第1主成分では極低速域(10,20[m/min],<i>z</i>=0.8)が他の速度域(<i>z</i>=0.9~1.1)に比べ有意に低下した(<i>p</i><.05)。第2~第4主成分では10[m/min]でそれぞれ<i>z</i>=0.6,<i>z</i>=0.5,<i>z</i>=0.4であり他の速度(<i>z</i>=0.7~1.1,<i>z</i>=0.6~0.9,<i>z</i>=0.5~0.8)と比べ有意に低下した(<i>p</i><.05)。第5主成分においては全速度間で有意差はみられなかった(<i>z</i>=0.3~0.6)。歩行比については,60[m/min]以上ではほぼ一定(0.0051~0.0056[m/steps/min])の値を示したが,低速域では10,20[m/min]でそれぞれ0.0093,0.0066[m/steps/min]と速度が低下するにつれて有意に増加した(<i>p</i><.05)。また極低速域では,歩行比の変動係数が10,20[m/min]でそれぞれ0.38,0.26となり,通常速度(0.15~0.17)と比べて増加傾向であった。【考察】極低速域における筋活動の主成分波形は,通常速度域とは有意に異なった。このことから通常速度でみられる恒常的な筋活動パターンは,極低速域では成立しないことが示唆された。特に20[m/min]以下の速度では,主成分波形の類似度が他の速度よりも有意に低下し,また運動学的な観察においても,歩行比が有意に増大し変動性も増加傾向にあったことから,これ以下の速度では歩行の恒常性が維持されず,通常速度域とは異なる歩行制御がなされていることが推察された。以上の知見より,極低速域にて歩行する患者への歩行介入において,いわゆる正常歩行パターンを適用することが好ましくない可能性を示した。【理学療法学研究としての意義】低速歩行に関して,従来のメカニズムとは異なる可能性があるという示唆が得られ,脳卒中患者など超低速歩行で歩行する病態へのアプローチにおける基礎的な知見を提供した。
著者
森田 とわ 山口 智史 小宅 一彰 井上 靖悟 菅澤 昌史 藤本 修平 飯倉 大貴 田辺 茂雄 横山 明正 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ea0348, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 膝蓋骨骨折や膝蓋腱断裂,大腿四頭筋断裂などでは,膝伸展筋の機能不全によって歩行時に膝折れを呈し,膝伸展位保持が困難になる.この膝折れを防止するために,膝伸展位保持装具(以下,膝装具)が使用されることがある.支持性の良い膝装具は膝伸展筋力を代償するだけでなく,他の関節周囲筋の筋活動を変化させる可能性がある.しかしながら,膝装具使用時の歩行時筋活動量について言及された報告はない.本研究では,膝装具が歩行時の下肢筋活動量へ及ぼす影響を検討した.【方法】 対象は健常成人9名(年齢:24.4±2.8歳,身長:1.73±0.04m,体重61.2±6.3kg)とした.課題は20m/minに設定したトレッドミル上での膝装具装着および非装着の2条件の歩行とした。膝装具は,両側支柱付きのニーブレース(アルケア株式会社)を使用し,十分な練習後に装着非装着での歩行,装具装着での歩行の順番で課題を行った. 表面筋電図の測定には,筋電図記録用システム(Delsys社)を使用した.記録筋は,両側下肢の大殿筋(GM),内側ハムストリングス(MH),大腿直筋(RF),ヒラメ筋(SOL),前脛骨筋(TA)とした.電極は,筋腹上に能動筋電を貼付し,サンプリング周波数は1kHzで記録した.また,両側の母趾球部と踵部にフットスイッチを貼付し,歩行周期の特定および時間距離因子(重複歩幅,歩行率,立脚期割合)の算出をした.得られた筋電図波形は、全波整流後30歩行周期分を加算平均して平滑化した後,フットスイッチの情報から,立脚相と遊脚相に分け,それぞれの積分値(μVs)を算出した.また歩行時の重心動揺を計測するため,小型加速度計(ワイヤレステクノロジー社)を使用した.加速度計は,第三腰椎棘突起部に伸縮ベルトで固定し,サンプリング周波数60Hzで記録した.加速度データは,10歩行周期分のデータを加算平均し平滑化した後,時間で2回積分し変位を算出した.その変位から1歩行周期における左右移動幅を算出した.統計解析は,装具の有無による各筋活動量と時間距離因子,重心動揺の違いを検討するため,対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属機関の倫理審査会により認可され,事前に全ての対象者に研究内容を説明し,同意を得た.【結果】 装具着用により,装着下肢の立脚相においてGM,MH,RF,TAの筋活動量が有意に減少した.装具着用側の立脚相における各筋の平均積分値は(装具あり条件、装具なし条件)で,GM(6.33μVs,7.98μVs),MH(4.22μVs,5.39μVs),RF(1.43μVs,1.80μVs),TA(2.71μVs,3.53μVs)であった.一方,SOLについては,装具あり条件7.79μVs,装具なし条件7.88μVsで統計的有意な差を認めなかった(p=0.783).遊脚相においては,いずれの筋でも筋活動量に有意な差を認めなかった.また,装具非装着側の立脚相および遊脚相においては,いずれの筋でも装具着用の有無による有意な筋活動量の差を認めなかった.時間距離因子については,装具着用の有無による有意な差を認めなかった.重心の左右移動幅は,裸足歩行17.7cm,装具歩行23.8cmで装具装着により有意に増加した.【考察】 膝装具は,膝伸展筋以外の筋活動量も減少させることが示された.GM,MH,RFの筋活動量の減少は,膝装具によって体重支持に必要な筋活動が代償されたためだと考えられる.重心の左右移動幅が増大したが,これは膝関節を伸展位に保持したことにより,下肢を振り出すために生じた体幹側屈や分回し歩行などの代償動作が影響していると推察される.分回し歩行では,初期接地において通常より底屈位での接地になり,このことが,荷重応答期におけるTAの筋活動量が減少につながった可能性がある.また,立脚相のSOLにおいては,有意な変化を認めなかったことから,SOLの役割である下腿が前方へ倒れていく速度の制御に必要な筋活動は,膝装具によって影響をうけないと考えられた.しかしながら,本研究においては各関節の関節運動に言及することはできないため,今後,三次元動作解析装置などを用い検討する必要があると考えられた.【理学療法学研究としての意義】 膝装具を使用することにより,膝関節周囲筋だけでなく股関節や足関節の筋活動量も減少することが示唆された.膝装具を適用する際には,他の下肢筋の負荷をも軽減できる一方で,筋力低下の誘引にもなると考えられ,十分な配慮が必要である.
著者
荒井 一樹 松浦 大輔 杉田 翔 大須 理英子 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.364-371, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
17

【目的】延髄外側梗塞患者において自覚的視性垂直位(以下,SVV)と静止立位バランス,歩行非対称性の関係を検討する。【方法】Body lateropulsion(BL)を呈する延髄外側梗塞患者9 名において,SVV 値と立位重心動揺計の総軌跡長,矩形面積,足圧中心左右偏位および加速度計より算出した歩行非対称性との関係をSpearman の相関係数を用いて検討した。【結果】SVV 値は平均7.4(SD:9.5)度であった。SVV 値と開眼足圧中心偏位とは相関しなかったが,閉眼足圧中心偏位と相関を認めた(r = 0.75, P < 0.05)。また,SVV 値の絶対値は歩行非対称性と有意な相関を認めた(r = –0.78, P < 0.05)。【結語】BL を呈する延髄外側梗塞患者において,SVV 偏位は閉眼の静止立位バランスと歩行非対称性と関連した。その因果関係については今後の検証が必要である。
著者
松永 玄 山口 智史 宮本 沙季 鈴木 研 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.106-111, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
12

【目的】本研究は,脳卒中者において,リハビリテーション特化型の通所リハビリテーション(以下,デイケア)の終了理由を利用期間別に調査し,デイケアの役割や利用の在り方を検討することを目的とした。【方法】脳卒中者114 名のデイケア終了理由を改善,死亡,入所,拒否,入院,その他に分類し,利用期間別に検討した。【結果】終了理由は,改善が24 名,死亡が16 名,入所が15 名,拒否が14 名,入院が9 名の順であった。その他は36 名であった。利用期間別でもっとも多い終了理由では,1 年未満では拒否,1 年以上2 年未満では死亡,2 年以上3 年未満および3 年以上4 年未満では改善と入所,4 年以上5 年未満では拒否,5 年以上では改善であった。【結論】終了理由は利用期間により異なることから,リハビリテーション特化型デイケアの役割が,脳卒中後の心身状態や生活環境の変化に関連して変化することが示唆された。サービス提供にはこの点に配慮が必要である。