著者
鈴木 健二 武田 綾
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.660-669, 2013-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

子どもをもつ摂食障害の女性患者が増加して,臨床でどう評価すべきかの課題が出ている.そこで摂食障害の患者の結婚,妊娠,出産,育児について,コントロールの女性と,面接調査による比較研究を行った.対象群は,筆者らが治療を行った子どもをもつ20名の摂食障害患者の女性で,コントロール群は子どもをもつ20名のボランティア女性であった.摂食障害の女性はコントロール群の女性と比較して,妊娠中も過食や嘔吐などの食行動異常は続くことが多く,妊娠で精神状態も悪化し,飲酒や喫煙が多かった.出産時異常に差はなかったが,産後うつ病が多く,育児期の精神状態も悪く,出産後に過食や嘔吐は増加し,子育て不安も強く,子どもへの虐待経験も多かった.また,結婚から出産後までの間に摂食障害が再発した者は30%存在した.結論として,摂食障害の患者は,食行動異常が回復しても,子どもの育児期間を含めての長期間のサポートの必要性があると考えられる.
著者
鈴木 健二 武田 綾
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.174-182, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
20

摂食障害のリハビリテーション施設である 「ミモザ」 に通所した経験をもつ75名の摂食障害患者に対する追跡調査の一環として再発経験について調査を行った. 対象者の平均年齢は34.7歳, 発症年齢は17.7歳, 発症からの期間は17年であった. 対象者75名のうち34名 (45.3%) という高い割合で再発経験者が存在していた. 再発経験者とそうでない者を比較すると, 調査時において再発経験者の中で症状消失者は32.4%で, 再発のない者の56.1%より有意に少なかった. また再発経験者はパーソナリティ障害の併存が多かった. 再発時の平均年齢は26.2歳で, 発症から平均8.1年後に再発していた. 再発群において, 発症時は76.5%が神経性食欲不振症制限型であったが, 再発時は神経性食欲不振症過食排出型と神経性過食症排出型が合計67.7%を占めていた. 以上から, 摂食障害は再発することが多い疾患であり, 再発すると過食・嘔吐タイプに変化し, 再発は摂食障害の遷延化の要因の一つであると推定された.
著者
鈴木 健二 武田 綾
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.660-669, 2013
参考文献数
20

子どもをもつ摂食障害の女性患者が増加して,臨床でどう評価すべきかの課題が出ている.そこで摂食障害の患者の結婚,妊娠,出産,育児について,コントロールの女性と,面接調査による比較研究を行った.対象群は,筆者らが治療を行った子どもをもつ20名の摂食障害患者の女性で,コントロール群は子どもをもつ20名のボランティア女性であった.摂食障害の女性はコントロール群の女性と比較して,妊娠中も過食や嘔吐などの食行動異常は続くことが多く,妊娠で精神状態も悪化し,飲酒や喫煙が多かった.出産時異常に差はなかったが,産後うつ病が多く,育児期の精神状態も悪く,出産後に過食や嘔吐は増加し,子育て不安も強く,子どもへの虐待経験も多かった.また,結婚から出産後までの間に摂食障害が再発した者は30%存在した.結論として,摂食障害の患者は,食行動異常が回復しても,子どもの育児期間を含めての長期間のサポートの必要性があると考えられる.
著者
鈴木 健二 武田 綾
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.354-363, 2014

この研究は,先に発表した「摂食障害をもつ女性の結婚,妊娠,出産,育児についてコントロール群との比較研究」と同時に行った子どもの身体的,心理的,行動的障害についての研究報告であり,摂食障害の母親から生まれた子どもの日本で初めての本格的研究である.摂食障害の母親をもつ子ども30人と,コントロール群の子ども36人と発達上の問題を比較した.摂食障害の母親をもつ子どもは乳児期での発達の遅れが多く,3歳以降の排泄の問題をもち,被虐待経験も多くもっていた.摂食障害の母親のリスク因子との相関の分析では,妊娠中に喫煙した母親から生まれた子どもは生下時体重が低く,被虐待経験は,産後うつ病をもつ母親からが多かった.また妊娠中に激しい食行動異常をもっていた母親から生まれた子どもは脳に障害をもっていた.摂食障害が回復していない母親から生まれた子どもはハイリスクの状態にあると考えられるので,さまざまな専門家が協力して長期的なサポートを行う必要がある.
著者
武田 綾 鈴木 健二 白倉 克之
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.513-519, 2002-08-01
被引用文献数
3

アルコール依存症を合併した摂食障害(合併群)の転帰について摂食障害単独群(単独群)との比較研究である.1990〜1998年に受診した30歳以下で半構造化面接のできた摂食障害患者130名に対し,2000年10〜12月にアンケートと電話で追跡調査を行った.対象者のうち102名(78%)が回答し,平均追跡期間は4.6年であった.2つの群は初診時において,初診年齢,パーソナリティ障害,AN-Rの割合,結婚・離婚経験など多くの点で違いがあった.調査時点で合併群は非常に高い死亡率(25%)があり,離婚経験は38%,問題飲酒も42%がもっており,症状消失とED-NOSが半数を占めた単独群と比較して,合併群の長期転帰は非常に悪かった.両群に共通した転帰良好因子は嘔吐が少ないことであった.