著者
川幡 穂高 氏家 宏 江口 暢久 西村 昭 田中 裕一郎 池原 研 山崎 俊嗣 井岡 昇 茅根 創
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.19-29, 1994-02-28 (Released:2009-08-21)
参考文献数
31
被引用文献数
4 4

海洋における炭素循環の変動を調べるために, 西太平洋に位置する西カロリン海盆の海底深度4,409mから堆積物コアを採取して, 過去30万年にわたり平均1,000年の間隔で無機炭素 (炭酸カルシウム) と有機炭素の堆積物への沈積流量を詳細に分析した. その結果, 炭素カルシウムの沈積流量は過去32万年にわたって大きく変動し, 極小値が約10万年の周期をもっていることが明らかとなった. また, 有機炭素の沈積流量は, 主に氷期に増大したが, これは基礎生物生産が高くなったためであると考えた. 無機炭素と有機炭素の形成・分解は, 海洋と大気間の二酸化炭素のやりとりに関しては, 逆の働きをしている. そこで, 堆積粒子に含まれる両炭素の沈積流量の差を用いて, 大気中の二酸化炭素の変動と比較した. その結果, 約5万年前の炭酸カルシウムの沈積流量が非常に増加した時期を除いて, 大気中の二酸化炭素濃度の変動と堆積粒子中の有機・無機炭素沈積流量の変動は第一義的に一致しており, 大気中の二酸化炭素の変動と海底堆積物とが何らかの関連をもっていたことが示唆された.
著者
木村 学 木下 正高 金川 久一 金松 敏也 芦 寿一郎 斎藤 実篤 廣瀬 丈洋 山田 泰広 荒木 英一郎 江口 暢久 Sean Toczko
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.47-65, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
98
被引用文献数
1

2007年開始の南海トラフ地震発生帯掘削計画は,プレート境界で起こる地震発生,断層メカニズムの理解を目的に実施,掘削の結果,これまで以下の主要な成果が得られた.1)南海前弧域は,~6Ma以降の沈み込み,特に2Ma以降の付加体の急成長によって形成され,プレート境界の上盤を形成することとなった.2)プレート境界と分岐断層に沿うすべりは,海底面まで高速ですべり抜けたことがある.3)粘土鉱物に富む断層ガウジは静的にも動的にも,絶対的に弱い.4)掘削によって応力測定に成功した.多くの地点で最大水平圧縮方向はプレートの収束方向とほぼ平行であり,次の南海地震に向けての応力蓄積の進行が示唆される.5)掘削孔設置の観測計が,2016年4月1日に南海プレート境界で72年ぶりに発生した地震による圧力変動を観測した.海底観測網による微小津波観測と同期しており,上盤内の地震時体積収縮を世界で初めて観測した.