著者
阿部 なつ江 金松 敏也 末次 大輔 山崎 俊嗣 岩森 光 安間 了 平野 直人 折橋 裕二 原田 尚美 富士原 敏也
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.189-189, 2010

海洋研究開発機構・海洋研究船「みらい」によるMR08-06航海(通称:SORA 2009: South Pacific Ocean Research Activity 2009)は、南太平洋および沈み込み帯における地質学・地球物理学的研究ならびにチリ沖における古海洋環境変動復元研究を行う事を目的とし、平成21年1月15日(木)関根浜出港 ~ 平成21年4月8日(水)バルパライソ入港までの計84日間、3レグに渡り実施され,レグ1は、1月15日関根浜出港~3月14日バルパライソ入港までの59日間実施された。そのレグ1における航海実施概要と,太平洋横断中の海底地形・重力の測定結果を発表する。
著者
藤井 昌和 喜岡 新 山崎 俊嗣 沖野 郷子 田村 千織 関 宰 野木 義史 奥野 淳一 石輪 健樹 大藪 幾美
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

中央海嶺における火成活動は、固体地球から海洋へ熱・物質を供給する重要なプロセスであり、潜在的に全球の気候変動にも影響を与えている。海底拡大に伴う定常的なCO2放出量は2×1012 mol/yr(~0.041 ppmv)程度と考えられてきた(Resing et al., 2004)が、近年指摘され始めた海水準変動(海底での荷重変動)に伴う間欠的な海底マグマ噴出現象(Tolstoy, 2015, Crowley et al., 2015)が正しければ、中央海嶺からの一時的なCO2放出量はアイスコアや海底堆積物から復元される数百ppmの大気中CO2濃度と比較しても無視できないほど大きくなる可能性がある。これまでの古気候復元や将来予測では考慮されてこなかった中央海嶺火成活動の寄与を検証するため、中央海嶺からのCO2放出量を定量的に評価できる観測証拠の取得が望まれる。 そこで我々の研究グループは、全球気候変動における中央海嶺マグマ活動の役割を明らかにするため、学術研究船「白鳳丸」の次期3カ年航海へ新たな研究計画を提案した。本研究では、世界初の試みとなる長大測線の深海磁気異常と海底地形データの解析、および新たに開発する海底拡大–火成活動モデルに基づき、過去430万年間の中央海嶺のマグマ噴出量とそれに伴うCO2排出量の定量的推定を目指す。中央海嶺の拡大軸近傍において船上マルチビーム音響測深機によって海底地形を観測して海底地形の短波長変動を捉え、海底近傍での高分解能磁場変動を観測してグローバルな古地磁気強度変動と比較することで海底に詳細な年代軸を挿入する。研究対象は、南極大陸を囲むように分布する中央海嶺のなかでも、高いメルト生産量を持つ南太平洋の高速拡大海嶺およびインド洋–南大洋の低速–中速拡大海嶺とした。海水準変動に対するマグマレスポンスを海底地形記録から検出することに加えて、海水準変動の振幅が小さいと考えられている340万年以前の変動を捉えることを通して、”本当に海水準変動が中央海嶺メルトの噴出に直接的に作用し栓抜きのような役割を担っているのか?”を検証する。 本講演では、我々の観測計画の概要とこれまでに得られている知見を紹介するとともに、全球気候変動の理解における中央海嶺研究の意義を述べる。
著者
川幡 穂高 氏家 宏 江口 暢久 西村 昭 田中 裕一郎 池原 研 山崎 俊嗣 井岡 昇 茅根 創
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.19-29, 1994-02-28 (Released:2009-08-21)
参考文献数
31
被引用文献数
4 4

海洋における炭素循環の変動を調べるために, 西太平洋に位置する西カロリン海盆の海底深度4,409mから堆積物コアを採取して, 過去30万年にわたり平均1,000年の間隔で無機炭素 (炭酸カルシウム) と有機炭素の堆積物への沈積流量を詳細に分析した. その結果, 炭素カルシウムの沈積流量は過去32万年にわたって大きく変動し, 極小値が約10万年の周期をもっていることが明らかとなった. また, 有機炭素の沈積流量は, 主に氷期に増大したが, これは基礎生物生産が高くなったためであると考えた. 無機炭素と有機炭素の形成・分解は, 海洋と大気間の二酸化炭素のやりとりに関しては, 逆の働きをしている. そこで, 堆積粒子に含まれる両炭素の沈積流量の差を用いて, 大気中の二酸化炭素の変動と比較した. その結果, 約5万年前の炭酸カルシウムの沈積流量が非常に増加した時期を除いて, 大気中の二酸化炭素濃度の変動と堆積粒子中の有機・無機炭素沈積流量の変動は第一義的に一致しており, 大気中の二酸化炭素の変動と海底堆積物とが何らかの関連をもっていたことが示唆された.
著者
山崎 俊嗣 金松 敏也 小田 啓邦 横山 由紀子
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.海底堆積物中の磁性鉱物問の磁気相互作用を見積もった。ARM(非履歴性残留磁化)の獲得効率は、磁気相互作用に強く支配されている。そのため、堆積物から相対古地磁気強度を求める際の、堆積物の磁化獲得能の違いを補正(規格化)のためのパラメータとしては、ARMよりもIRM(等温残留磁化)の方が適している。2.北西太平洋における過去25万年間の高分解能の古地磁気強度スタックを構築した。堆積物から信頼できる相対古地磁気強度を求めるには、初期続成作用による磁性鉱物の溶解を受けたものを除く必要がある。低保磁力の磁性鉱物の割合を示す指標であるS比は磁鉄鉱の溶解に敏感であり、これを指標に溶解を受けた層準を除去できる。3.北太平洋の堆積物コアから、過去160万年間の相対古地磁気強度を求めた。このコアの相対古地磁気強度と岩石磁気特性を、堆積環境の異なる西部赤道太平洋のコアと比較すると、相対古地磁気強度は極めて良い一致を示すが、岩石磁気特性の変化は大きく異なる。ウェーブレット変換を用いた時系列解析により、古地磁気強度には10万年スケールの変動が見られること、岩石磁気パラメータは10万年スケールの変動が含まれる場合でも古地磁気強度とは同期しておらず両者に有意な相関はないことを明らかにした。従って、堆積物の性質の変化は相対古地磁気強度に影響しておらず、古地磁気強度記録に見られる10万年スケールの変動は地磁気変動を反映している。4.東部赤道インド洋の堆積物コアから、過去80万年間の相対古地磁気強度及び伏角の変動記録を得た。西部赤道太平洋に見られる伏角異常域は、東部赤道インド洋には延びていない。両海域について、古地磁気強度と伏角の関係を比較することにより、長周期の伏角の変動は、双極子磁場が弱いときに相対的に停滞性非双極子磁場の影響が大きくなることにより生じるというモデルが支持されることを示した。
著者
島 伸和 伊勢崎 修弘 兵頭 政幸 山崎 俊嗣
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、海底電位差磁力計を新たに開発し、背弧海盆であり海底拡大がはっきりしているマリアナトラフをターゲットにして、マリアナトラフの詳細なテクトニクスの解明と、マリアナトラフ付近での電気伝導度構造の推定を行なった.開発した海底電位差磁力計は、すでに実用段階に入っており、その大きさとしては世界最小レベルであり、機動力という点でも優れている.また、この電極には、FILLOUXタイプの電極を採用して、このタイプの電極を国内で安定した性能で作る体制を整えた.海上での観測で得られた海底地形、重力、地磁気データを解析することにより、次のように詳細なテクトニクスをあきらかにした.(1)北緯16〜18度付近は、約6Maに海底拡大を開始した.拡大速度(片側、以下同じ)は20mm/年程度と遅い.(2)北緯16度以北では、拡大開始時の拡大軸の走向は北北西-南南東であった.つまり、トラフ北部では西マリアナ海嶺の走向にほぼ平行であるのに対し、南へ行くに従い西マリアナ海嶺とは斜行するようになる.トラフ中部及び北部では、現在の拡大軸の走向は南北に近い.(3)北緯14度以南のトラフ南部では、海底拡大は3Ma頃開始し、拡大速度は35mm/年程度と中部・北部よりやや速い.中軸谷が存在せず、地形的には東太平洋海膨型の速い拡大の特徴を持つ.(4)北部マリアナトラフにおいては、リフフティング/海底拡大の境界は北緯22度付近にある.北緯20〜22度では約4Maに拡大を開始した.1年間設置して観測した海底電位差磁力計によるデータの初期的な解析結果より、マリアナ島弧火山下には、70kmの深さに部分溶融と見られる電気伝導度の高い領域があることがわかった.また、マリアナトラフ下には、数10kmのリソスフェアに対応すると考えられる低電気伝導度層が存在することを明らかにした.