著者
河村 宏
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.305-315, 2011 (Released:2011-09-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

DAISYは,視覚障害やディスレクシア(識字障害)などにより出版物を読むことが困難な人々のために作られた,アクセシブルな電子出版物の国際標準規格である。多様な科学と文化の記録された知識を,出版と同時に誰でもどこでも読めるようにすることを目指し,IFLA/LPDメンバー図書館からなるDAISYコンソーシアムは,DAISY規格の開発を行った。標準化の重要性,DAISYコンソーシアムの起源と目的および戦略を,創設者の一人という立場から解説する。DAISY4とEPUB3の統合の結果,編集・交換フォーマットであるDAISY4は利用者には見えにくくなる。DAISYがなぜこのような「メインストリーム化」を図るのか,その理念と今後の展望を記す。
著者
石川 准 松原 聡 湯瀬 裕昭 菊池 尚人 松原 洋子 山口 翔 南谷 和範 河村 宏
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

100名の参加者による共同自炊型電子図書館実証実験を行った。情報提供施設に裁断・スキャン・OCR作業を委託し、3年間で1052冊をテキスト化した。参加者へのアンケート調査を毎年実施し、満足度や課題について分析を行った。参加者のコミットメントとインセンティブに影響を与える要素を検証するため、見出しマークダウン対応の読書アプリの作成や、OCR認識精度向上のための誤り補正ソフトウェアの開発を行い、その有効性を検証した。アメリカのBookshare、フランスの国立国会図書館、ジュネーブ国際電気通信連合において現地調査を実施し、電子書籍のアクセシビリティを推進するための制度・政策に関して知見を得た。
著者
藤田 博子 舘田 美保 田村 一 河村 宏
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.62, 2007

<Br>【目的】国立更生施設の理療教育課程(以下 理教)の必須科目である臨床実習において2名の実習生に心理教育的支援を実施したので経過を報告する。<br><br>【プロフィール】 事例1(X年度)は、40歳代、男性、網膜色素変性による視覚障害、軽度難聴あり、事例2(X+1年度)は、20歳代、男性、未熟児網膜症による視覚障害。2例とも理教専門課程3年生。支援開始時、教官らは臨床実習の単位習得及び課程修了の困難を危惧し、かつ指導の難しさ(コミュニケーションが難しい、やる気を感じられない)を感じていた。<br><br>【支援の経過】臨床実習の観察や本人・関係教官との面談等からの情報収集により心理教育的アセスメントを行なった。結果、事例1では、コミュニケーションの難しさの背後に難聴の存在があること、医療面接時に実施する質問内容が十分に身についていないこと、事例2では、青年期特有の職業を中心とした進路選択の課題、障害のある自己の捉え方の課題を抱え、かつ不安が強く自信がもてない状況にあることが明らかになった。そこで、週1回1時間半程度、各約8ヶ月間、教材開発の場を利用した支援を実施した。事例1では試作版の医療面接教材とロールプレイを用いた面接の練習方法の検討、事例2では試作版の医療面接教材の改定作業を行なった。この支援時の様子は本人の了解を得て適宜教官に伝えた。事例2では支援者会議を実施した。2例ともに、教材開発への無断欠席はなく、提示した資料などに意見を述べる等積極的な様子がみられた。また、支援終了時には臨床実習の単位取得、理教課程を修了することができた。<br><br>【考察】心理教育的支援は、事例を学習面、心理社会面、進路面、生活健康面と多角的な把握、指導・支援者の間に繋がりチーム形成を可能にし、多角的な支援を実現したものと考えられる。また、教材開発の場は、学生に自己研究の機会を提供し現実に向き合う態度を養ったものと推察する。
著者
河村 宏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.421-424, 2004-08-01

情報技術の進化は,それ自体が障害者へのより良いサービスを保証するものではなく,常にアクセシビリティーに留意した技術の開発が必要である。障害者の権利としての情報アクセスを保証するための留意点と,分かりやすさにまで踏みこんでアクセシビリティーの充実をはかる切り札とも言えるSMILの可能性について概説する。