著者
油川 英明
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.345-351, 2012 (Released:2023-03-01)
参考文献数
7

社会的に話題となっているいわゆる「水の結晶」について実験的に検証を行った.その結果,この結晶は過冷却水滴の凍結過程において形成され,それは,ある条件が満たされた水滴の凍結氷球上に雪結晶状の形態となって形成されるものである.そして,その条件から外れた水滴には結晶が形成されないか,あるいは歪んだ形状の,いわゆる「醜い結晶」ができる.その水滴に関わる条件とは,氷点下で比較的長い冷却時間を経過することであり,加えて,その粒径について適当な大きさのもの(本実験では0.15〜0.52mm)が選択されることである.このように,いわゆる「水の結晶」は当然ながら科学的な成因によるものであり,言葉をかけるとか音楽を聴かせるなどの呪術的な「根拠」は問題外としても,科学的見地から具体的に検証されるべきであり,今回は相応に検証され得たものと考える.
著者
小林 大二 加藤 喜久雄 油川 英明 兒玉 裕二 石川 信敬
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

融雪期の洪水で、その流出量が予想外に大きく危険な洪水は、融雪出水に雨の流出が重なった場合である。融雪出水期は豪雪地帯では1ケ月前後の長期にわたる。出水期の中期から末期にかけては日々出水が重なり、川の水位の高い状態が継続する。又斜面では地中流出が続くため地盤がゆるんでくる。そこへわずか30-50mm程度でも雨が重なると、水位は異常に高くなり洪水となるとともに、崖くずれが続発して、大災害となる。しかるに積雪を通しての、雨及び融雪水の出水予測は、その流出機構の煩雑性のため研究例が少なく、未解明な問題として残されている。融雪出水に重なる雨による異常出水の流出機構の解明と流出予測を試みるのが、本研究の目的である。研究は石狩川支流の雨龍川源頭部の豪雪地帯で行った。毎年融雪出水期を通じて、洪水の危険を有した出水は3-4回ある。63年度は、晴天の継続による出水の異常重量が2回、晴天日に続く雨による異常出水が1回あった。この雨量はわずか30mm前後であったが、夏期のこの程度の雨による出水の4-5倍以上の出水となった。夏の大雨の出水に比べると、積雪のため流出のピークが3時間程度遅くなっている。積雪1mにつきピークの遅れは2-4時間増すことが新たに設置された大ライシメーター(3.6×3.6m)及び堰によって確認された。河川水の比電導及び化学成分の分析結果によると、地中流出が約8割、表層流出が約2割となった。融雪出水が地すべり発生の要因となることが確かめられた。δ0の分析によって、河川水と融雪水のそれのわずかではあるが有意な差が認められた。積雪下の川の水温は融雪期を通じて3-4℃と高いが、この水温は、1.5の深の地温に相当する。融雪出水の主成分である地中流出水の流出経路の深さの概略がうかがえよう。