著者
兒玉 裕二 石川 信敬
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.41-51, 1993-03
被引用文献数
1

融雪に寄与する熱源としての重要な要素である短波長放射の特徴について,1988年1月1日から消雪日の4月3日まで,北海道大学低温科学研究所裏の気象観測露場で観測を行い,以下の結果を得た。 1) 全アドベドは,積雪期には融雪と新降雪によって 0.7-0.9 で推移し,融雪期には新降雪の日を除いて徐々に減少し,消雪日には 0.2まで下がった。 2) 近赤外領域の反射率は,可視領域のそれよりも 10-20%小さく,消雪後はその関係が逆転した。 3) 日射に対する可視と赤外領域の割合は50%ずつであった。 4) 全反射に対する可視領域の割合は55%,近赤外領域の割合は45%であった。 5) 晴天指数が減少すると日射に対する近赤外領域の割合が減少した。 6) 融雪期において,朝夕の全アドベド,可視や近赤外領域の反射率は日中のそれよりも大きくなる傾向が認められた。融雪期前には,このような傾向はあまり強くなかった。
著者
尾関 俊浩 秋田谷 英次
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1-10, 1995-02

サン・クラストが形成される熱収支領域及び雪質条件を明らかにすることを目的に,4融雪期にわたって野外観測を行なった。観測期間に9回15例のサン・クラスト形成を観測した。サン・クラストは 1mm程度の薄い氷板であり,その下には深さ1cm程の空洞が形成された。サン・クラスト形成時には 200から 450W/m^2の短波放射フラックスが積雪に吸収されていた。また積雪表面は長波放射と蒸発によって冷却されており,長波放射収支と顕熱,潜熱のフラックスの和は常に負の値(0〜ー140W/m^2)であった。これはサン・クラストが維持され,その下で内部融解が起こるのに適した熱収支条件であった。サン・クラストは平均4.2×10^2kg/m^3のざらめ雪が変態して形成された。さらに表層の雪はサン・クラストを形成する過程で大きな密度のざらめ雪を経なければならなかった。
著者
鈴木 啓助 石井 吉之 兒玉 裕二 小林 大二 Jones H.G.
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.93-108, 1993-03
被引用文献数
6

融雪におよぼす森林の影響を検討するために,カナダ東部北方針葉樹林地において,融雪水の流出機構に関する調査を行なった。森林内外に気象・融雪に関する観測機器を設置し,その他の測定方法も内外で同一にして調査を行なった。その結果,森林内外の降水中のNH_4^+とNO_3^-の窒素化合物濃度については林内で林外より低濃度になっており,生物活動による化学変化および消費が推察された。また,積雪下面融雪水中の溶存物質濃度は,林外でのみ日変化が明瞭であり,日変化のパターンはH^+とNO_3^-が同じで,Ca^2^+とSO_4^2-はそれと逆の変動パターンを示す。林外での積雪下面融雪水の水量とH^+濃度による流出成分分離の結果,各融雪日の融雪初期には,積雪下層の積雪内部融雪水が,押し出し流によって流出し,その後に積雪表面から供給された当日の融雪水が流出すると考えられる。
著者
秋田谷 英次 成田 英器 小林 俊一 和泉 薫 対馬 勝年 石坂 雅昭 楽 鵬飛
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.51-61, 1994-03
被引用文献数
2

中国黒竜江省は冬期の降水は少なく寒冷な気候帯にある。現地で冬期間の気象観測,さらに3月には積雪調査と道路状況を視察した。その結果次の事が明かとなった。積雪が少なく寒冷なため,積雪はしもざらめ雪の発達が著しい。また,しもざらめ雪は結合力が弱いため,いったん堆積した雪が強風下で大陸性地吹雪と呼ばれる吹雪となる。この吹雪が堆積すると寒冷な気象の下で硬しもざらめ雪を形成する。近年,中国では道路交通の重要性が増したが,道路の維持管理や車の性能が冬道には不十分である。そのため,道路上の吹き溜りは量が少なくて大きな交通障害となったり,大事故の恐れがある。その対策には吹き溜り防止工,道路の維持管理および車の冬期装備を考慮しなければならない。
著者
石田 完
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.59-72, 1964
著者
佐藤 晋介 立花 義裕 遠藤 辰雄
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.109-121, 1993-03

石狩川河口付近に設置した1台のドップラーレーダー観測から,大雪が降ったときの陸風の時間変化とエコーの形態の関係を調べた。観測された陸風の強さと厚さには明かな日変化が認められ,陸風は北海道内陸部の放射冷却によって生成される冷気流であることが確認された。この陸風が弱いまたは存在しない期間は,LモードまたはTモードの筋状エコーが見られ,陸風が発達すると帯状エコーが形成された。帯状エコーは陸風が強い時の方が発達し,陸風が発達すると帯状エコーが形成された。帯状エコーは陸風が強い時の方が発達し,陸風の厚さは最大1kmに達した。発達した帯状雲の成因は上空の強い寒気の侵入であると考えられ,それによって対流不安定な成層が形成されるのと同時に,陸風も強化される。そして,対流雲の発達過程には,不安定成層の存在と陸風と季節風の間に形成される下層収束が重要な役割を担っていると考えられる。
著者
小林 大二
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.405-407, 1970-03
被引用文献数
2
著者
秋田谷 英次 石井 吉之 成田 英器 石川 信敬 小林 俊一 鈴木 哲 早川 典生 対馬 勝年 石坂 雅昭 楽 鵬飛 張 森
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.35-50, 1995-02

1994年3月上旬,中国黒竜江省の 1500km を車で走破し積雪と道路状況を調査し,道路雪害の実態を明らかにした。北海道と比べて寒冷ではあるが雪は極端に少なく,吹雪と吹溜の発生頻度と規模は小さい。しかし,除雪作業や車の冬期用装備がされていないため,交通量が増加すれば深刻な道路雪害となることが予想される。平地の農耕地内の道路は農地からの土砂で著しく汚れた圧雪た氷板からなり,そのため滑りの危険は小さいが,凹凸がはげしい。山地森林内の道路は汚れのすくない圧雪と氷板からなり,滑りの危険が大きい。この地方の特徴である道路に沿った並木は配置が不適当なため,吹雪の面から見ると,むしろマイナスの効果が大きい。吹雪対策としては側溝と盛り土された道路,および効果的な並木の配置がある。さらに,簡単な除雪機による吹雪直後の除雪が効果的である。山地の坂道やカーブでは滑り止めの土砂散布も必要である。
著者
小林 俊一
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.79-83, 1985-03
被引用文献数
6