著者
浦辺 研一 池本 孝哉 武井 伸一 会田 忠次郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.129-135, 1986-05-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
8
被引用文献数
4 5

1978年と1980年の6月から7月にかけて,埼玉県大宮市郊外の水田に生息するアキアカネ幼虫とシナハマダラカ幼虫について,捕食者-被捕食者関係の野外調査を行った。アキアカネ幼虫は,6月上旬には5∼9齢幼虫になり,7月上旬までに10齢(終齢)を経てすべて羽化した。6月上旬における生息密度は高く,調査したA水田(920m2)では約5万匹,B水田(1,000m2)では約3万匹と推定された。シナハマダラカ幼虫密度は,アキアカネ幼虫密度が減少した6月下旬頃から増加した。またA水田内における両者の場所的な分布には重なり合わない傾向が認められた。水田より捕獲したアキアカネ幼虫の腸管内容物について,血清学的方法によりシナハマダラカ幼虫体成分の検出を試みたところ,陽性反応を示し,実際の水田における捕食関係が確認された。その割合(捕食率)は6月上旬には低く(0∼2.7%),6月20日前後に最も高まる(33.3∼56.5%)傾向がみられた。アキアカネ幼虫によって捕食されたシナハマダラカ幼虫の割合(被捕食率)は,6月上旬から中旬にかけて90∼100%の値も推定され,シナハマダラカの発生初期におけるアキアカネ幼虫の捕食者としての役割は大きいと思われた。
著者
浦辺 研一 池本 孝哉 武井 伸一
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.265-272, 1990-09-15 (Released:2016-08-26)
被引用文献数
2 2

The prey-predator relationship between larvae of the mosquito Anopheles sinensis and nymphs of the dragonfly Sympetrum frequens in rice field areas was investigated in the suburbs of Omiya City, Japan, during the period from June to July of 1979 (for Area-A and the whole area) and 1980 (for Area-B), and July 1986 (for the whole area). The average density of S. frequens nymphs in Area-A (210a) and Area-B (430a) was 23-41/m^2 and 2-6/m^2,respectively. On the contrary, densities of An. sinensis larvae were very low in Area-A and high in Area-B. In both the areas, the density of S. frequens nymphs in a rice field was much different from those in neighbors. The precipitin test of the gut content of S. frequens nymphs with antiserum against An. sinensis larvae indicated that the proportion of An. sinensis larvae preyed by S. frequens nymphs was estimated to be 83.3 to 100% in Area-A and 0 to 87.5% in Area-B. The density of S. frequens nymphs in the whole area (97ha) was about 4/m^2 during the first half of June of 1979 and 1986. The distribution of nymphs in the area was contagious. On 17 June 1979,18.2% of S. frequens nymphs had detectable An. sinensis antigen in the gut, and 39% of An. sinensis larvae were estimated to be preyed by S. frequens nymphs during the day. An. sinensis larvae in the survey area could be controlled effectively by S. frequens through appropriate management of rice fields.
著者
三宅 定明 日笠 司 浦辺 研一 原口 雅人 大村 外志隆
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.753-757, 2008 (Released:2008-12-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1 3

埼玉県内で生産されたキノコの放射能調査を実施した。137Csは全ての試料から検出され,子実体は0.012~2.1Bq/kg生,培地(菌床)は0.080~1.8Bq/kg乾であった。子実体の137Cs濃度はキノコの種類によって異なり,ヒラタケ及びエノキタケが低く,シイタケ及びマイタケが高い傾向がみられ,種類別の平均値でみると30倍以上異なった。また,137Csの濃度比(子実体/培地)は0.11~0.53であり,他の野菜等の移行係数に比べ高い傾向を示した
著者
山本 徳栄 浦辺 研一 高岡 正敏 中澤 清明 後藤 敦 羽賀 道信 渕上 博司 木俣 勲 井関 基弘
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.518-526, 2000-06-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
17
被引用文献数
14 28

水道水によるクリプトスポリジウム症の大規模な集団感染が1994年6月に埼玉県越生町で発生した. この事件の疫学的調査の結果と対応を総括した. 全住民 (13, 809名) に対する健康調査を実施した結果, 回答者12, 345名のうち8, 812名 (714%) が下痢や腹痛を発病し, 2, 856名が病院で外来診療を受け, 24名が入院した. 町外からの来訪者も感染し, 感染者の総数は9, 140名に達した. 流行時に1日だけ町内に滞在し, 感染した14名の潜伏期間は平均4.4日 (5日~8日) であり, 7名はコツプに半分~2杯の水道水を飲用して感染した。小・中学生の発症例1, 013名の有病期間は平均52日 (1~15日) であり, 発熱した469名の体温は平均37.8℃ (34.7~40.3℃) であった. また, 成人187名の有病期間は平均48日 (1~18日) であったCryptosporidium parvumのオーシストは患者便から検出され, 水道水, 浄水場の原水 (河川水), 浄水場のすぐ上流に位置する下水処理施設の放流水からも検出された. 流行の発生前, 渇水により河川水の水量が著しく減少していたが, 夜間の豪両で原水の濁度が急上昇した. しかし, 不適切な浄水処理により水道水が汚染されたことが, 集団感染の発端となった. また, 患者便に含まれる大量のオーシストが下水処理場から河川水 (水道原水) に流入し, 水道水を介してさらに感染者が増加するという循環が流行の規模を拡大させた.
著者
三宅 定明 吉田 栄充 野本 かほる 浦辺 研一 柴田 穣 髙野 真理子 杉山 英男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.563-569, 2015-09-15 (Released:2015-09-29)
参考文献数
15

埼玉県住民の食品からの放射性物質の摂取量及び内部被ばく線量を推定するため,日常食(陰膳食)の放射能調査を実施した。134Cs及び137Csの平均値は,2011年度は0.43及び0.48Bq/人・日,2012年度は0.065及び0.15Bq/人・日であった。成人の預託実効線量は,2011年度は5.5μSv,2012年度は1.1μSvであった。2011年度の値は,福島第一原子力発電所事故以前の値と比べると,約80倍高い値であったが,一般公衆の線量限度1mSv/年の1%以下であった。
著者
吉田 栄充 三宅 定明 浦辺 研一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.831-836, 2009-12-15
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

γ線スペクトロメトリーを用いて,埼玉県内に流通しているハーブティーの放射能調査(<SUP>134</SUP>Cs,<SUP>137</SUP>Cs及び<SUP>40</SUP>K)を行った。<SUP>134</SUP>Csは49検体全て不検出であったが,<SUP>137</SUP>Csは10検体から検出され(2.1~240Bq/kg乾),それらは全てヨーロッパ産であった。また,<SUP>40</SUP>Kは全検体から99.9~1400Bq/kg乾検出された。<BR><SUP>137</SUP>Csについては,アイブライトでポーランド産とブルガリア産で大きく濃度が異なり,明らかな地域差が見られた。また今回の調査により,成人が1年間ハーブティーを1日1杯ずつ飲み続けたときの<SUP>137</SUP>Csの預託実効線量を求めると約1.0×10<SUP>-3</SUP>mSvとなり,通常のハーブティーの摂取においては,<SUP>137</SUP>Csの被ばく線量の寄与は非常に少ないものと考えられた。
著者
三宅 定明 吉田 栄充 高橋 邦彦 飯島 正雄 浦辺 研一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.471-475, 2010 (Released:2010-08-27)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

γ線スペクトロメトリを用いて,日本に流通している健康食品(サプリメント)73検体の放射能調査(134Cs,137Cs及び40K)を実施した。134Csは全て不検出であった。137Csは9検体から検出され(2.3~190Bq/kg),キノコやブルーベリーなど137Cs濃度が高いと考えられる原材料を使用したサプリメントは,137Cs濃度が高い傾向があることがわかった。また40Kは56検体から検出された(17.6~11600Bq/kg)。137Csが検出されたサプリメントを1年間摂取した時の成人における137Csの預託実効線量は約2.9μSvであった。