- 著者
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清水 健太郎
- 出版者
- 日本生態学会
- 雑誌
- 日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.1, pp.28-43, 2006-04-25
- 被引用文献数
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8
DNAの遺伝情報を生態学研究に活用する分野として、分子生態学が発展してきた。しかしながら、これまで使われたDNA情報としては、親子判定や系統解析のためのマーカーとしての利用が主であり、遺伝子機能の解明は焦点になっていなかった。ゲノム学の発展により、これまで生態学や進化学の中心命題の1つであった適応進化を、遺伝子機能の視点で研究しようという分野が形成されつつある。これを進化生態機能ゲノム学Evolutionary and ecological functional genomics、または短縮して進化ゲノム学Evolutionary genomicsと呼ぶ。進化ゲノム学は、生態学的表現型を司る遺伝子を単離し、DNA配列の個体間の変異を解析することにより、その遺伝子に働いた自然選択を研究する。これにより、野外で研究を行う生態学・進化学と、実験室の分子遺伝学・生化学を統合して、総合的な視点で生物の適応が調べられるようになった。本稿では、モデル植物シロイヌナズナArabidopsis thalianaの自殖性の適応進化、開花時期の地理的クライン、病原抵抗性と適応度のトレードオフなどの例を中心に、進化ゲノム学の発展と展望について述べる。