著者
金子 仁 Cecchini Nicole M. 清水 敬樹 光銭 大裕 堀越 佑一 松吉 健夫 鈴木 大聡 佐藤 裕一 三宅 康史
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.844-851, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
20

アメリカ合衆国パラメディックは,病院前救護で多彩な医療行為を実践する。このパラメディックを養成する1施設の調査を行った。全米標準カリキュラムに基づいた教育プログラムと学生64名の臨床経験を調査した。課程期間44週間で学生は516時間の講義とシミュレーション手法を含む実習,病院実習234時間(以下,中央値),救急車同乗実習329時間,救急車でのインターンシップ80時間を経験した。この間,学生は成人患者136人,高齢者82人,小児43人の傷病者・患者,それに伴う病態を多数経験した。指導および監督下で,学生は実際の傷病者・患者に対して経口気管挿管5回,静脈路確保86回,薬剤投与106回を含む侵襲的処置を実施した。救急車同乗実習では学生が主体でチーム指揮,傷病者対応を行う実践的実習が実施されていた。米国の標準的パラメディック養成教育は長時間の病院と救急車での臨床的経験を提供し,侵襲的処置を自ら判断,実施するon-the-job教育が行われている。
著者
清水 敬樹 杉田 学 横手 龍 関井 肇 三宅 康史 坂本 哲也 清田 和也
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.14-17, 2004-02-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
15

2年間の縊頚44例を対象とし年齢, 性別, 精神科受診歴, 縊頚形態, ICU入室率, 転帰などを検討した。縊頚44例中, 来院時心肺停止 (CPAOA) は36例で4例 (11%) が心拍再開したが2週間以内に全例死亡した。精神科通院歴があるのは17例 (47%) で, 13例がうつ病であった。非CPAOA8例は全例が入院, 7例が社会復帰した。心拍再開した4例は全例死亡しておりそのうち3例は脳死に陥っており, 縊頚CPAOAは予後不良と考えられた。通常の蘇生後脳症との差は, 発見までの時間の長い点, もう一つは椎骨脳底動脈領域も完全閉塞し, 低酸素に強い脳幹もdamageが大きいことが関係している可能性がある。非CPAOAは8例中7例が, 社会復帰しており, 早期発見, 及び地域精神衛生活動が予後を向上させると思われる。
著者
横手 龍 清水 敬樹 田口 茂正 勅使河原 勝伸 速水 宏樹 清田 和也
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.983-990, 2008-10-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
28

本邦では稀な電撃性紫斑を合併した劇症型髄膜炎菌性敗血症の成人例を経験したので報告する。症例は50歳の女性。突然の発熱,咽頭痛,両膝関節痛といった前駆症状に引き続いて播種性血管内凝固(DIC)及び広範電撃性紫斑を発症し,ショック,呼吸不全,腎不全に至った。血液培養からは髄膜炎菌が検出された。DIC,ショックに対する各種支持療法に反応して急性期を乗り切り,救命しえたものの,経過中に生じた広範囲の軟部組織壊死に対して,両下腿切断及び全手指切断術を余儀なくされた。集中治療の進歩によって,本症の救命率は劇的に向上した。また近年,本症の転帰のさらなる改善を期待した様々な治療法が提案されているが,その有効性を証明したものはない。現時点では,敗血症とDICに対する適切な支持療法を行うことが,本症に対する至適治療であると思われる。