著者
野村 泰伸 鈴木 康之 清野 健 付 春江 吉川 直也 佐古田 三郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.185-195, 2015 (Released:2016-04-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本解説では,静止立位姿勢および定常二足歩行の間欠制御仮説と,それに関連する最近の研究を紹介する.特に,これらの運動を生成する神経制御が実現すべき運動の特徴として,(1)直立姿勢あるいは周期的歩行(歩行サイクル)の平衡状態からの偏差の時間的変動(運動揺らぎ)として表出する関節の柔軟性,および,(2)運動揺らぎの時間パターンが示すフラクタル性あるいはべき乗則に従う長期相関に注目する.さらに,直立姿勢の安定性に関して,(3)体性感覚情報の神経伝達時間に起因する時間遅れ誘因性不安定化(delay-induced instability)を回避する姿勢制御メカニズム,および,(4)対応する制御器のパラメータ変化に対する姿勢安定化メカニズムのロバスト性に関して議論する.運動計測データに表出する(1)およ(2)の特徴は,(3)と(4)に関わる姿勢の安定化メカニズムが機能した結果として生成されると考えられる.そこで,本稿では,安定性と柔軟性という一見相反する運動特性を実現する制御戦略の有力候補の一つである間欠制御仮説に関して議論する.
著者
清野 健 勝山 智男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.247-256, 2000-04-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
33

蛇口からポタポタと落下する水滴.時計仕掛けと感じられる水滴落下のリズムにも,実際には多様なゆらぎが含まれ,そこには低次元カオスが確かに存在する.これまでに実験によってカオス力学系としての多くの興味深い現象が確認されてきたが,それを生み出す水滴形成の物理とのつながりには多くの謎が残されていた.だが,最近行われた実験と流体力学的数値シミュレーションによって,系の力学的構造がしだいに明らかになってきた.さらに,これらの知見に基づいたバネのモデルは,系の多様な振舞に一次元離散力学系としての統一した説明を与えることを可能にした.最近の研究に基づき,水滴落下系の長時間挙動とその力学的構造について概説する.
著者
清野 健 勝山 智男
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.247-256, 2000-04-05
参考文献数
34
被引用文献数
1

蛇口からポタポタと落下する水滴.時計仕掛けと感じられる水滴落下のリズムにも,実際には多様なゆらぎが含まれ,そこには低次元カオスが確かに存在する.これまでに実験によってカオス力学系としての多くの興味深い現象が確認されてきたが,それを生み出す水滴形成の物理とのつながりには多くの謎が残されていた.だが,最近行われた実験と流体力学的数値シミュレーションによって,系の力学的構造がしだいに明らかになってきた.さらに,これらの知見に基づいたバネのモデルは,系の多様な振舞に一次元離散力学系としての統一した説明を与えることを可能にした.最近の研究に基づき,水滴落下系の長時間挙動とその力学的構造について概説する.
著者
植田 隼平 野村 泰伸 清野 健 藤田 壌 西田 直樹 藤尾 宜範 林 洋行 田口 晶彦 川瀬 善一郎 真田 知世 金井 博幸
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.S126, 2018

<p>近年,国内の企業において従業員の健康を経営資源ととらえ,社員の健康維持や改善のための取組や投資を積極的に行う「健康経営」の重要性が認識されるようになった.少子高齢化の日本では,人手不足,後継者不足,年金制度維持のための定年引上げなどの影響により,労働人口の高齢化が急速に進むことが予想されるため,企業の維持・成長のための経営戦略として健康経営を実践する必要がある.我々は,労働者,特に生産現場労働者の健康管理への応用を目指し,ウェアラブル生体センサを用いた体調評価指標を開発した.我々のアプローチでは,ウェアラブル生体センサとして衣料型デバイスを用い,労働中の加速度と心拍数を同時に計測する.これまで,心拍変動を用いた自律神経機能の評価や,心拍数あるいは加速度センサを用いた運動強度の評価については多くの研究成果があるが,日常発生する体調不良を客観的に評価する方法については十分に確立していない.我々は,建設・運送会社約12社に協力いただき,2017年5月から9月の期間にて延べ約7000人の労働者の就業中の心拍数と加速度をモニタリングするとともに,就業前後の主観的体調に関するアンケートを実施した.これらのデータ分析に基づき,加速度と心拍数情報を組み合わせた新たな指標を構成し,この指標が労働者の主観的体調と相関することが見いだされた.講演では,生産現場における生体指標の有用性について議論する.</p>
著者
島谷 哲史 渡邉 英一 鈴木 康之 野村 泰伸 清野 健
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.S175_01, 2015

A pacemaker (PM) and an implantable cardioverter defibrillator (ICD) are devices that are inserted into the body to maintain regular heart rhythm in patients with serious heart rhythm problems. Among Japan's aging population, the number of patients requiring PM and ICD implantation has gradually and steadily increased. Therefore, a quantitative assessment of the future number of those patients is not only clinically, but also medical-economically and politically important. In this study, to develop a forecasting model for the number of patients requiring PM or ICD implantation, we analyzed past records of the number of PM and ICD implantation from 2006 to 2013 in Japan. Using a multiple regression analysis, we show the age and gender dependence of the number of PM and ICD implantation in each year, and propose a forecasting model based on age and gender composition rates of population. Moreover, as an application of our model, we estimate the future demand of PM and ICD devices in Japan.
著者
勝山 智男 清野 健 渕上 信子
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第51回理論応用力学講演会 講演論文集
巻号頁・発行日
pp.225, 2001 (Released:2002-05-10)

水道の蛇口から滴る水滴の落下現象は、身近なカオスの例として良く知られている。この滴の落下運動を、高速ビデオカメラによる画像解析と流体力学的数値実験の両面から解析した。それにより、従来の落下間隔時系列解析からのみでは得られなかった、低次元ストレンジアトラクタの構造が明らかになった。得られた結果は、これまで多くの実験で観測されてきたこの系の複雑な振舞に低次元写像力学系としての系統的な説明を与える。
著者
清野 健
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.非ガウス型の確率過程の数理生体信号や経済指標などのゆらぎは裾の厚い非ガウス型の確率分布を示し、粗視化スケールの拡大に伴って非常にゆっくりとガウス分布に近づくものがある。本研究では、そのような確率過程を特徴づけるため、発達乱流のモデルであるCastaingの分布関数に用いた解析法を提案した。さらに、非ガウス分布に従うランダムウォークを仮定することでゆらぎに含まれる高次相関を特徴付ける解析法も提案した。これらの方法を心拍変動の解析に応用することにより、健常人心拍変動にみられる確率分布の非ガウス性やスケール不変性といった新たな特徴を見出した。そのようなスケール不変性と強い相関をもったゆらぎは、連続相転移が起きる臨界点においてしばしば観測されていることから、非平衡系における臨界現象と健常人心拍変動の類似性に注目した研究を進めた。2.心拍変動の動的相転移健常人の心拍変動を示す長時間相関やマルチフラクタル性に基づいて、心拍変動と臨界現象の関連性が議論されてきた。また、平常の身体活動の範囲(睡眠時を含む)では、そのような性質はほとんど変化しないことが報告されている。しかし、健常人の心臓循環系の状態が臨界点近傍にあるということに機能的意味があり、適切な生体制御と臨界現象が関連しているならば、身体活動の状態によっては健常人であってもゆらぎのせ異質が変わることが期待される。この点を検証するため、健常人の心拍変動の性質と活動状態の関係について調べた。日常活動中、睡眠中、持久的運動中の3つの状態において測定された心拍変動時系列の解析を行い、長時間相関が睡眠中と持久的運動中には消失することを見出した。また、これまで調べてこなかった非ガウス性や局所分散の相関についても新たな解析法を導入し、その特徴を各条件で比較した。解析の結果、心拍ゆらぎ性質は活動状態依存して変化しており、強く相関したゆらぎは覚醒時の日常活動中にしか現れないことを見出した。