著者
滝沢 隆 川口 寛史 名倉 俊成
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.834-837, 2016-11-25 (Released:2016-11-25)
参考文献数
4

形態安定加工ドレスシャツに関して,洗濯・乾燥後そのまま着用できるノーアイロンレベルを目指して,綿100%織物でW&W 性4 級確保の開発を行った.セルロース系の天然繊維である綿は,元々「縮む」「シワになる」という欠点があり,これを抑制するため,液体アンモニア加工及び樹脂加工を施して綿繊維を改質した.樹脂加工は,セルロースの非結晶領域のヒドロキシル基(OH 基)を,反応性の樹脂剤で架橋結合させるもので,この架橋結合によって形態安定性を得ることができるが,この架橋結合が一部分に偏在化してしまうと,生地強度が大きく低下する.この偏在化を最小限に抑えて繊維内での架橋を均一化させるため,樹脂加工工程の各種条件と使用薬剤等の工夫を行った.更に,シャツ縫製・プレス後に熱処理を行い樹脂反応させる,ポストキュア方式を組み合わせた.これにより綿100%素材でW&W 性4 級レベルを完成させ,洗濯してもシワが残らないドレスシャツを完成させた.
著者
滝沢 隆俊 大島 慶一郎 牛尾 収輝 河村 俊行 榎本 浩之
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.335-346, 1997-03

コスモノート海(60-68°S, 35-65°Eの水域)において, コスモノート・ポリニヤの特徴を明らかにするため, 1987年から1992年の間, JAREの夏観測で得られた水温データの解析を行った。沿岸域には水温-1.5℃以下の冷い水塊が広範囲に存在した。その沖合い北東から北西にかけて, 水温1℃以上の暖かい周極深層水が150m以深に認められた。1987年から1991年のSSM/I画像の解析によると, 持続性のある典型的コスモノート・ポリニヤが1988年に現れた。その他の年は小規模なポリニヤが散発的に出現するのみでポリニヤ活動は弱い年であった。一方, 約66°S, 50-60°Eの沿岸域には例年頻繁に沿岸ポリニヤが現れた。また, コスモノート・ポリニヤから東に向けて, 点在するポリニヤ列がしばしば認められた。このポリニヤ列は, 大気の南極収れん線と海洋の南極発散域に沿って形成されると考えられる。
著者
河村 俊行 滝沢 隆俊 大島 慶一郎 牛尾 収輝 Toshiyuki Kawamura Takatoshi Takizawa Kay. I. Ohshima Shuki Ushio
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.367-383, 1997-03

海氷の特性と成長過程を解明するための観測がリュツォ・ホルム湾の定着氷で1990年から1991年の2年間にわたって行われた。湾内の積雪深は沖合いの観測点で, 冬季に1.0から1.5mと非常に厚くなった。積雪深と氷厚の観測から, 多雪域の海氷は冬にはほとんど成長しないにもかかわらず, 夏には非常に厚くなることが確認された。海氷の構造・塩分・酸素同位体比の結果から, この海氷は通常の成長とは異なり, 海氷の表面で上方に成長していることが分かった。その上方成長は雪ごおりと上積氷の形成により起こっていると結論された。南極の海氷での上積氷の形成は以前に報告されていない。上積氷の生成条件である積雪の融解の証拠も得られた。この様な夏の上方成長は少雪域の海氷では見られなかった。従って, 積雪は海氷の成長過程と構造に多大な影響を及ぼす。この報告の前半で, 海氷の一般的な構造や南極域での海氷の特性が述べられている。Observations of multiyear land fast sea ice were made in Lutzow-Holm Bay, Antarctica over a period of two years from 1990 to 1991 to determine the snow and ice characteristics and ice growth prowth processes. The snow depth in the bay reached remarkably high values of 1.0 to 1.5m during the winter season at offshore stations. From analysis of ice thickness measurements, it is confirmed that fast ice with deep snow cover shows little growth during winter but substantially thickens during the summer months. On the basis of ice core structure, salinity and stable isotopic composition, it is concluded that the sea ice grows not downward as in ordinary growth but upward at the top of the sea ice. It is also concluded that the upward growth is caused by snow ice and superimposed ice formation. Superimposed ice formation on sea ice in Antarctica has not been reported previously. Evidence for snow cover melting, which is a prerequisite for superimposed ice formation, was also found. The summer upward growth was not found in sea ice with low snow accumulation. Snow cover, therefore, significantly affects the growth processes and structure of sea ice. General sea ice structure and characteristics of Antarctic sea ice are reviewed at the beginning of this report.