著者
三寺 史夫 大島 慶一郎 中村 知裕 小野 数也 小埜 恒夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

オホーツク海から北太平洋にかけての中層温暖化の実態を明らかにするとともに、熱塩(中層)循環の力学過程とその変動メカニズムの解明、および、その基礎となる高密度陸棚水(DSW)生成過程の解明を目的とした。北西陸棚域で生成されるDSWはここ50年間で約0.1PSU減少し軽くなっており、これが26.8-27.0σ_θでは温暖化シグナルとして現れている。数値実験の結果、DSWの塩分は、気温の上昇(海氷生成量の減少)、降水量の増加、風応力の変動の影響を受けて変動することが示された。一方、低緯度の亜熱帯循環中層では逆に低温化が顕著である。これは、70年代半ば以降、亜寒帯循環が強化され、親潮を通した亜寒帯から亜熱帯への低温水流入量が増加したためである。
著者
豊田 威信 浮田 甚郎 大島 慶一郎 若土 正暁 村本 健一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.117-133, 1999-02-25
被引用文献数
5

1996年と1997年の2月上旬、オホーツク海南西部の海氷域内部において、パトロール砕氷船「そうや」に乗船してアルベドの観測を行った。アルベドは船首部に上向き、下向きの短波放射計を取付けて測定した。同時に、海氷密接度および氷厚を、ビデオ観測データの解析により定量的に評価した。水平スケール数kmを対象とした解析の結果、アルベドと海氷密接度は良い相関が見られることが分かった。回帰式をもとに、海氷のアルベド(密接度100%)は95%の信頼区間で0.64±0.03と見積もられた。従来、極域定着氷上で測定された値よりもやや小さい値が得られたのは、低緯度海氷域内では海水や日射などの影響により、海氷上の雪粒子が成長しやすいためと推定される。観測値の回帰直線からのずれは、危険率1%で太陽天頂角と、危険率5%で氷厚と統計的に有意な相関が見られ、海氷密接度と太陽天頂角を変数とする重回帰式も導出された。重回帰式において、偏回帰係数はどちらも統計的に有意であるが、アルベドは太陽天頂角に比べて海氷密接度とより強い相関関係にあることが分かった。重回帰式と観測値との差異は氷厚あるいは雲量よりも主として海氷の表面状態の違いによって生じたものと推定される。これらの結果から、海氷上の積雪が海氷域のアルベドに及ぼす影響が大きいことが示唆された。一方、dark nilas(暗い薄氷)で覆われた海面上で停船した期間中に得られた短波放射データから、氷厚1〜1.5cmのdark nilasのアルベドは0.10、氷厚2〜3cmでは0.12と見積もられた。
著者
大島 慶一郎 若土 正曉 江淵 直人 三寺 史夫 深町 康
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

海水・海氷・油の流動予測の基盤となる3次元海洋モデルを開発・高精度化した。最終的には、分解能1/12度で、日本海と太平洋の海水交換も含み、日々の風応力と月平均の海面熱フラックスによって駆動されるモデルを開発した。係留系及び海洋レーダーより取得した測流データとモデルとの比較・検討により、東樺太海流・宗谷暖流に関しては非常に再現性のよいモデルを開発することができた。このモデルに粒子追跡法を取り入れて、サハリン油田起源の海水の漂流拡散を調べた。水平拡散の効果は、Markov-chain modelを仮定したランダムウォークを用いて取り入れた。表面下15mでは粒子の漂流はほとんど海流(東樺太海流)で決まり、粒子は東樺太海流に乗って樺太東を南下しあまり拡散せずに北海道沖に達する。表層(0m)では、風による漂流効果も受けるので、サハリン沖の粒子の漂流は卓越風の風向に大きく依存する。沖向き成分の風が強い年は、表面の粒子は東樺太海流の主流からはずれ、北海道沖まで到達する粒子の割合は大きく減じる。アムール川起源の汚染物質の流動予測も同様に行い、東樺太海流による輸送効果の重要性が示された。2006年2・3月に起こった知床沿岸への油まみれ海鳥の漂着問題に、後方粒子追跡実験を適用し、死骸は11-12月のサハリン沿岸から流れてきた可能性が高いことを示した。潮流による拡散効果を正しく評価するために、主要4分潮のオホーツク海の3次元海洋潮流モデルを、観測との比較・検討に基づいて作成した。この潮汐モデルと上記の風成駆動モデルを組み合わせて粒子追跡実験を行うことで、より正確な流動予測モデルとなる。オホーツク海の海氷予測に関しては、その最大面積を予測するモデルを提出した。秋の北西部の気温とカムチャッカ沖の海面水温を用いることで、3ヶ月前の時点で、高い確度で最大海氷面積を予測できることを示した。
著者
大島 慶一郎 小野 純 清水 大輔
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.115-124, 2008-02-29

オホーツク海の陸棚上の流速場をよく再現している3次元海洋循環モデルを用いて,粒子追跡実験を行った.モデルは日々の風応力と月平均の海面熱フラックスで駆動されている.アムール川からの汚染物質等の漂流・拡散を想定して,アムール河口に起源を持つ海水の0m層と15m層における粒子追跡実験を行った.15m層では,粒子を投下する月・年に拘らず,10月一気に東樺太海流が強まるのに伴って粒子はサハリン東海岸沖を南下し始め,12〜1月に北海道沖に到達する.表層0mでは,海流だけでなく風によるドリフトの効果が加わり,粒子の挙動は年によって異なる.沖向きの風が強い年ほど,粒子は東樺太海流の主流からはずれてしまい,北海道沖までは到達しない傾向が強くなる.2006年2〜3月に知床に漂着した油まみれの海鳥の死骸の起源を探るため,後方粒子追跡実験を行った.その結果,海鳥は北方から,おそらくはサハリン東岸のどこかから東樺太海流に乗って知床に漂着したであろうことが示唆された.
著者
大島 慶一郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.75-96, 2018

<p>海洋の大規模な中深層循環・物質循環は,極域・海氷域での海氷生成による高密度水生成が起点になっている。全海洋の深層に広がる底層水が作られる南極海のような極海では,観測の困難さによって,海氷生成及び中深層水の形成・循環は十分わかってはいなかった。衛星マイクロ波放射計データによる薄氷厚アルゴリズムが開発され,熱収支計算を組み合わせることで海氷生産量を見積もる手法が考案された。南大洋の海氷生産量マッピングからは,ロス海に次ぐ第2 の海氷生産量域が東南極のケープダンレー沖にあることが示され,ここが未知(第4)の南極底層水生成域であることが,直接観測から明らかになった。北半球最大の海氷生産量域は,オホーツク海北西ポリニヤであることが示され,ここを起点として北太平洋の中層まで及ぶオーバーターンが形成されることに対応する。西岸境界流である東樺太海流はこのポリニヤで形成される高密度陸棚水を南方へ運ぶ役割を持つ。この50 年のオホーツク海風上域での温暖化が,海氷生産の減少とそれに伴う高密度水減少をもたらし,北太平洋のオーバーターンを弱化させていることも示唆された。これらの研究により,海氷生産量と中深層水の形成・変動に強い関係があることが定量性をもって明らかになってきた。</p>
著者
大島 慶一郎
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.503-508, 2003-07-31
参考文献数
12
著者
大島 慶一郎
出版者
低温科学第76巻編集委員会
巻号頁・発行日
vol.76, pp.13-23, 2018-03-31

世界の海洋の深層まで及ぶ最も大きな循環は,重い水が沈み込みそれが徐々に湧き上がってくる,という密度差による循環である.沿岸ポリニヤでの大量の海氷生成が重い水のソースになっている.衛星マイクロ波放射計データ等による海氷生産量マッピングからは,南極沿岸ポリニヤでは,非常に高い海氷生産があることが示され,世界の深層に広がる南極底層水がここを起源として形成されることと整合する.南大洋ではロス棚氷ポリニヤが最大の海氷生産を持つ.第2 位の海氷生産量を持つのがケープダンレーポリニヤであることがわかり,日本の観測からここが第4(未知)の南極底層水生成域であることが発見された.第3 の南極底層水生成域であるメルツ氷河沖では,2000 年初頭の氷河崩壊後に海氷生産量が40%も減少し,その結果として,ここでの底層水生成も激減した.
著者
滝沢 隆俊 大島 慶一郎 牛尾 収輝 河村 俊行 榎本 浩之
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.335-346, 1997-03

コスモノート海(60-68°S, 35-65°Eの水域)において, コスモノート・ポリニヤの特徴を明らかにするため, 1987年から1992年の間, JAREの夏観測で得られた水温データの解析を行った。沿岸域には水温-1.5℃以下の冷い水塊が広範囲に存在した。その沖合い北東から北西にかけて, 水温1℃以上の暖かい周極深層水が150m以深に認められた。1987年から1991年のSSM/I画像の解析によると, 持続性のある典型的コスモノート・ポリニヤが1988年に現れた。その他の年は小規模なポリニヤが散発的に出現するのみでポリニヤ活動は弱い年であった。一方, 約66°S, 50-60°Eの沿岸域には例年頻繁に沿岸ポリニヤが現れた。また, コスモノート・ポリニヤから東に向けて, 点在するポリニヤ列がしばしば認められた。このポリニヤ列は, 大気の南極収れん線と海洋の南極発散域に沿って形成されると考えられる。
著者
河村 俊行 滝沢 隆俊 大島 慶一郎 牛尾 収輝 Toshiyuki Kawamura Takatoshi Takizawa Kay. I. Ohshima Shuki Ushio
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.367-383, 1997-03

海氷の特性と成長過程を解明するための観測がリュツォ・ホルム湾の定着氷で1990年から1991年の2年間にわたって行われた。湾内の積雪深は沖合いの観測点で, 冬季に1.0から1.5mと非常に厚くなった。積雪深と氷厚の観測から, 多雪域の海氷は冬にはほとんど成長しないにもかかわらず, 夏には非常に厚くなることが確認された。海氷の構造・塩分・酸素同位体比の結果から, この海氷は通常の成長とは異なり, 海氷の表面で上方に成長していることが分かった。その上方成長は雪ごおりと上積氷の形成により起こっていると結論された。南極の海氷での上積氷の形成は以前に報告されていない。上積氷の生成条件である積雪の融解の証拠も得られた。この様な夏の上方成長は少雪域の海氷では見られなかった。従って, 積雪は海氷の成長過程と構造に多大な影響を及ぼす。この報告の前半で, 海氷の一般的な構造や南極域での海氷の特性が述べられている。Observations of multiyear land fast sea ice were made in Lutzow-Holm Bay, Antarctica over a period of two years from 1990 to 1991 to determine the snow and ice characteristics and ice growth prowth processes. The snow depth in the bay reached remarkably high values of 1.0 to 1.5m during the winter season at offshore stations. From analysis of ice thickness measurements, it is confirmed that fast ice with deep snow cover shows little growth during winter but substantially thickens during the summer months. On the basis of ice core structure, salinity and stable isotopic composition, it is concluded that the sea ice grows not downward as in ordinary growth but upward at the top of the sea ice. It is also concluded that the upward growth is caused by snow ice and superimposed ice formation. Superimposed ice formation on sea ice in Antarctica has not been reported previously. Evidence for snow cover melting, which is a prerequisite for superimposed ice formation, was also found. The summer upward growth was not found in sea ice with low snow accumulation. Snow cover, therefore, significantly affects the growth processes and structure of sea ice. General sea ice structure and characteristics of Antarctic sea ice are reviewed at the beginning of this report.
著者
江淵 直人 中塚 武 西岡 純 三寺 史夫 大島 慶一郎 中村 知裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

オホーツク海および北西北太平洋親潮域の高い海洋生物生産性を支えている物質循環のメカニズムを,海洋中層(400~800m)の循環と鉄の輸送過程に注目して,現場観測と数値モデルによる研究を行った.その結果,オホーツク海北西大陸棚起源の鉄分が,海氷の生成とともに作られるオホーツク海中層水によって移送され,千島海峡で広い深度層に分配された後,西部北太平洋に送り出されている様子が定量的に明らかとなった.
著者
石田 邦光 大島 慶一郎
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.249-262, 2007

衛星リモートセンシングデータの中で,多くのデータ蓄積があるにもかかわらず,利用されずにいるデータの一つがMOSデータである.3つの異なったセンサによる同時観測という優れた特性を有しながら,取得されたデータが広く研究に利用されることはなかった.しかしながら,雪氷研究においては,観測対象域が極域に多くあることから,少ないながらも利用されてきたといえる.特に,南極域においては,昭和基地において精力的に受信されたことから,貴重なデータを数多く得ることができた.MOSの一つのセンサであるMESSRによって観測された範囲は昭和基地沖周辺に限られるが,これらの画像からは,南極季節海氷域のさまざまな特徴を知ることができる.a)定着氷から氷縁に向かって氷野内の海氷分布構造がいくつかの特徴的な領域に分類できること.b)沿岸ポリニヤの定常的な出現やポリニヤ内における海氷移動の特徴を知ること.c)氷縁だけでなく氷縁内部まで形成されるアイス・バンド構造を理解できることなどである.ここでは,これらの研究成果を紹介することで,MOS MESSRデータの海氷観測における有効性を示した.
著者
大島 慶一郎 江淵 直人 青木 茂 深町 康 豊田 威信 松村 義正 北出 裕二郎 舘山 一孝 二橋 創平 小野 数也 榎本 浩之 木村 詞明 田村 岳史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

海洋中深層循環及びその変動を決めうる海氷生産量を、衛星データ等から見積もるアルゴリズムを開発し、そのグローバルマッピングを初めて行った。沿岸ポリニヤでの高海氷生産過程を長期係留観測から明らかにし、アルゴリズムの検証も行った。南極第2の高海氷生産域であることが示されたケープダンレー沖が未知の南極底層水生成域であることもつきとめた。南極海とオホーツク海では、海氷生産量の変動が底層水や中層水の変質とリンクしていることを明らかにし、中深層循環弱化の可能性を指摘した。
著者
安田 一郎 日比谷 紀之 大島 慶一郎 川崎 康寛 渡辺 豊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

H19年度においては、昨年度に引き続きロシア船を傭船し、約1週間(2007年8月下旬から9月上旬)にわたり千島列島海域の乱流計を用いた乱流直接観測を行うことができた。本年度観測では、昨年度機器の故障により十分な深さまで観測ができなかったブッソル海況西水道において1日連続観測を行うことができた。また、深い混合が予想されたブッソル海況東水道の1点、昨年度オホーツク海側で実施したウルップ海況太平洋側の3点、及び、ムシル海況4点で1日連続観測を行ったほか、重要な観測点で乱流・CTD観測を行うことができた。これらの観測により、千島列島海域には、一般的な中深層での乱流強度の約1万倍にも及ぶ1000cm2/secを越える鉛直拡散が起きていることが実証された。一方、1日の中でも潮汐流に応じて乱流強度は大きく変化すること、また、場所ごとに大きく変化することが明らかとなった。今後、さらに観測を行うとともに、長期観測データやモデルなどを用いてこの海域全体の寄与を明らかにしてゆく必要があることもわかった。また、これら乱流の直接観測データとCTDで取得された密度の鉛直方向の逆転から得られた間接的に乱流強度を比較した結果、乱流強度1桁の誤差範囲で間接的に乱流強度を見積もることができる手法を開発することができた。さらに、木の年輪から得られた長期気候指標北太平洋10年振動指数PDOに有意な18.6年潮汐振動周期を見出し、潮汐振動と気候との位相関係を明らかにした。これにより、日周潮汐の強い時期に、赤道域ではラニーニャ傾向、日本東方海域では高温、アリューシャン低気圧は弱い傾向になることがあきらかとなった。また、千島列島付近の日周潮汐が強い時期に表層の層厚が薄くなり、それが日本南岸まで伝搬することに関連して、本州南岸沿岸海域の栄養塩が上昇する傾向があることが明らかとなった。このように、千島列島付近および亜寒帯海域の潮汐混合は、広く北太平洋に大きな影響を与えていることが示唆された。