著者
福岡 和也 塩崎 道明 古西 満 濱田 薫 長 澄人 成田 亘啓
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.271-277, 1992-04-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6

症例は72歳, 女性.Hugh-Jones III度の労作時呼吸困難を主訴として入院.胸部X線写真にて右胸水貯留を認め, 胸膜生検から癌性胸膜炎 (腺癌) と診断.MMC, OK-432による胸膜癒着術を施行したが, 被包化胸水の遺残と肺の癌性リンパ管症を併発した.その後, 胸腔内カテーテル挿入部に皮下浸潤による腫瘤を触知するとともに右体幹を中心としたびまん性の皮下腫脹と右腋窩リンパ節腫脹が出現, 胸, 腹部CTでは右体幹の皮下組織に広範囲に及ぶ網目状の高吸収域を認めた.これらの所見からびまん性皮下浸潤を疑い, CBDCA, VP-16による全身化学療法を施行するも奏効せず, 呼吸不全に陥り死亡.剖検の病理組織所見から, 本症例にみられたびまん性皮下腫脹の原因は右肺下葉原発の低分化型腺癌の胸膜, 胸壁から皮下組織への直接浸潤と皮膚の癌性リンパ管症によるものと考えられた.
著者
谷口 夏子 福岡 篤彦 天野 逸人 岡村 英生 竹中 英昭 森井 武志 岡本 行功 吉川 雅則 古西 満 塚口 勝彦 濱田 薫 米田 尚弘 成田 亘啓
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.367-371, 2002-04-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
7

われわれは膿胸関連リンパ腫の症例を経験したので報告する。患者は67歳男性で左側胸部腫脹と疼痛で受診した。既往としては6歳時に肺結核, 24歳時に結核性胸膜炎に罹患していた。生検標本の組織学的検査の結果, 悪性リンパ腫びまん性大細胞B細胞型と診断した。THP-COP (THP, CY, VCR, PSL) による化学療法を施行し徐々に胸痛と腫脹は改善し, 現在維持療法継続中である。また, 分子生物学的見地から膿胸壁のEBウイルス感染を証明した。悪性リンパ腫を併発した結核性慢性膿胸症例の全例にEBウイルスの感染が証明されたとの報告があり, EBウイルス陽性の結核性膿胸の患者ではより注意深く検査を進める必要がある。
著者
前田 光一 喜多 英二 澤木 政好 三笠 桂一 古西 満 森 啓 坂本 正洋 辻本 正之 竹内 章治 濱田 薫 国松 幹和 奥 大介 樫葉 周三 成田 亘啓
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1223-1228, 1994

ムチン様glycoproteinを産生するIshikawa細胞の培養系を用いて緑膿菌の温度感受性 (Ts) 変異株によるバイオフィルムモデルを作成し, エリスロマイシン (EM) のバイオフィルム形成抑制効果を検討した.本細胞培養系において緑膿菌Ts変異株は培養開始10日目で通常約40個/well前後のmicrocolony (バイオフィルム) を形成したが, EMは0.2μg/mlの濃度から細胞への菌付着およびバイオフィルム形成を抑制し得た.この系の培養上清中のglycoprotein量は1μg/ml以上のEM濃度で, またelastase, exoenzymeA量は2μg/ml以上のEM濃度で抑制された.以上から細胞培養系での緑膿菌によるバイオフィルム形成抑制効果がEMに存在することが示唆された.また菌体外酵素産生を抑制するEM濃度以下でバイオフィルム形成抑制およびIshikawa細胞からのglycoprotein産生抑制がみられたことから, EMのバイオフィルム抑制効果は細胞側因子への作用の関与がより大きいものと考えられた.
著者
濱田 薫 長 澄人 藤村 昌史 福岡 和也 堅田 均 澤木 政好 成田 亘啓 渡辺 裕之 今井 照彦 大石 元 東口 隆一 西浦 公章
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.249-258, 1991-05-25

気管支鏡を用いた内視鏡的治療法の一つとして, 気管, 気管支の腫瘍性狭窄, 閉塞に対して99.5%エタノール(純エタノール)局注療法を試みた。対象は肺癌7例, 転移性肺癌, 気管癌, 多発性気管乳頭腫各1例の計10例であった。有効症例は10例中6例(60%)であり, 肺癌症例のうち1例は有効, 3例は一時有効で, 他3例は無効であった。転移性肺癌症例は無効であったが, 気管癌, 気管乳頭腫症例では有効であった。有効例での腫瘍の発育は主にポリープ状であり, 無効例では浸潤性狭窄を呈していた。副作用は軽度の咳嗽以外認められなかった。以上から, 気管支鏡下純エタノール局注療法は, 適応をある程度限定すれば, 他療法の制限をともなう悪性腫瘍症例においても姑息的, 対症的治療法としてQOLの改善に有用であると考えた。
著者
福岡 和也 堅田 均 長 澄人 濱田 薫 藤村 昌史 鴻池 義純 澤木 政好 成田 亘啓 今井 照彦 渡辺 裕之 大石 元 飯岡 壮吾 北村 惣一郎
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.31-37, 1992-01-25

症例は57歳, 男性。主訴は喘鳴と労作時呼吸困難。右上葉の肺結核合併肺扁平上皮癌cT_1N_1M_0 stage IIの診断で昭和63年10月3日右上葉およびS^6a部分切除術を施行した。平成元年2月下旬より喘鳴と労作時呼吸困難が出現したため5月1日再入院。胸部X線写真では右中葉の含気は低下し, 気管支鏡検査では右中間気管支幹と中葉支は著明に狭窄し底幹入口部には表面平滑な隆起を認めた。気管支造影, 肺動脈造影および換気・血流シンチグラフィ, エロソール吸入シンチグラフィの結果から残存気管支の変形, 狭窄により右肺に広汎で強い換気, 血流障害の生じていることが示されたため, 7月17日右中下葉切除術を施行した。本例では右上葉およびS^6a部分切除により中葉が上後方へと牽引され中葉支が屈曲し著明な狭窄をきたしたとともに, 下葉枝の上方伸展および下方屈曲により底幹入口部付近で気管支軟骨が折り畳まれ隆起を生じたものと考えられた。
著者
今井 照彦 堅田 均 西浦 公章 錦織 ルミ子 浜田 信夫 濱田 薫 渡辺 裕之 成田 亘啓 三上 理一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.268-274, 1987
被引用文献数
4

症例は, 47歳男性。既往歴は42歳時肺結核, 糖尿病。61年1月10日ころより微熱, 咳, 労作時呼吸困難出現。2月5日洗面器約半分の喀血を2回繰り返し, 当院第二内科へ入院した。検査の結果, 右上葉の肺結核の遺存空洞に発生した肺アスペルギルス症と判明した。気管支鏡では右主気管支および上葉枝入口部は全体に発赤腫脹し, B^3入口部は拡大がみられ, 末梢は空洞様であった。壁は凹凸不整で全体に膜がはったようになり, 黒い部分や, 発赤, 新生血管と思われる赤い部分, 苔状物と思われる黄白色の部分が混在してみられた。アンホテリシンB空洞内注入療法により発赤部分, 黄白色の部分が次第に減少して, 治療終了後には凹凸不整がとれ平坦となり, 色調も赤みが消失して全体に一様に黒くなり, 一部線維化のごとく白くなっていた。この所見と平行して臨床症状も改善し, 胸部X線でも空洞壁が著明に薄くなり, これらの空洞壁の内視鏡所見は, アスペルギルス症の治癒過程を示していると思われる。