- 著者
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瀬戸 宏
- 出版者
- 摂南大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
中国演劇のリアリズムと話劇は密接に結びついている。リアリズムを主な内容とする演劇は、日本では近代劇とも呼ばれる。このため、本研究では、まずリアリズムの演劇、話劇、近代劇の相互関係を研究した。『話劇と近代劇』(西洋比較演劇研究会会報二十三号)にその研究成果が詳述されている。続いて、中国演劇のリアリズム概念を作品に即して具体的に考察するため、中国におけるリアリズムの演劇の代表作とされる曹禺『雷雨』を分析してその近代性を明らかにし、中華人民共和国建国後の上演とテキスト出版において『雷雨』の近代性が変質せざるを得なかったことを具体的に分析した。この面での研究成果は、『曹禺「雷雨」の近代性』(『野草』63号)、『曹禺作品上演史からみた中華人民共和国50年-曹禺「雷雨」を中心に』(『現代中国』74号)で詳述した。また、演劇のリアリズムを中国だけでなく世界演劇全体の中で考察するため、『演劇学論集-日本演劇学会紀要』三十八号「演劇のリアリズム」特集編集責任者となり、共同討議「演劇のリアリズムとは何か」を主宰し冒頭発言と討議の結語を担当・執筆した。研究の過程で「曹禺作品上演史からみた中華人民共和国50年」(日本現代中国学会第四九回学術大会)、「試論《雷雨》的家庭性質」(曹禺誕生九十周年記念学術研討会)の題目で口頭発表をおこなった。さらに、中国演劇におけるリアリズム概念の成立過程をより厳密に考察するため、中国現代演劇運動が主に展開された上海・北京の五四運動時期新聞記事・上演広告を調査した。調査結果は、平成十三年度中に論文・資料研究として公表する予定である。全体として、研究課題についてかなり大きな成果をあげることができたと考えているが、残された問題も多く、今後も研究を継続していく。