著者
吉田 企世子 森 敏 長谷川 和久 西沢 直子 熊沢 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.115-121, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1

有機質肥料 (OF) で栽培した露地トマト (品種サターン) と無機質肥料 (IF) で栽培したトマトの食味を比較するため官能検査を行なった結果, 各年ごとに傾向は必ずしも同じではなかった。1) 1980年度は, 3および5果房ともIF区よりOF区のほうが顕著に優れていると評価された。2) 81年度は, 3果房はOF区が優れていたが, 1および6果房ではあまり差がなかった。3) 82年度は, 3果房は明らかにOF区が優れていたが1,2,4~7および8果房には差がなかった。4) 各年とも3果房のOF区が優れていたが, これは養分吸収との関係で検討を要する。5) 色については, 官能検査で有意差が示された試料が, 必ずしも, 色調測定の結果示された傾向とは一致しなかった。
著者
吉田 企世子 森 敏 長谷川 和久 西沢 直子 熊沢 喜久雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-127, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

有機質肥料で肥培された露地トマト (品種サターン) の水分, 還元糖, 有機酸およびビタミンCなどの含有量について無機質肥料で肥培されたものとの比較において検討した。1) 1980年度は, OF区のほうが水分含量が少なく, 還元糖が多く, 糖酸比が10以上であった。また, ビタミンC含量が多かった。2) 1981年度は, OF区は水分が少なく, 有機酸およびビタミンC含量が多かったが, 還元糖はあまり差がみられかった。3) 1982年度は, 3果房は80年度と同じ傾向であったが, 他の果房では傾向が一貫していなかった。4) 果房が上位に進むにつれて, 全体的に水分は減少し, ビタミンCは増加し, 還元糖は増加する傾向がみられた。また有機酸の変動が激しかった。5) IF区は果房から果房への成分変動が大きく, 不安定な動きがみられたが, OF区は比較的安定な動きを示した。
著者
柳沢 啓 大山 卓爾 熊沢 喜久雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.371-376, 1986-08-05
被引用文献数
3

根粒による固定窒素と培養液中の硝酸を同時に利用する生育条件下でダイズを水耕栽培し,開花期(7月10日),莢生長期(7月24日)および子実生長期(8月7日)の初めに^<13>CO_2と^<15>N_2または^<13>CO_2 と^<15>NO_3の二重標識処理を行ないその後の^<13>Cおよび^<15>Nの分配を追跡した。1)どの時期に同化した^<13>CO_2も同化直後に速やかに各器官へ転流する。しかしその後の^<13>Cの分配の変化はゆるやかでありNの場合ほど顕著ではなかった。2)根から吸収したNO_3-^<15>Nはどの時期に吸収した場合も処理直後には約90%が根と葉に見出された。収穫時には葉身と根の分配率は減少し子実および莢に再分配された。3)根粒で固定した^<15>N_2の挙動は^<15>NO_3と著しく異なっていた。どの時期に固定した場合も処理直後にはおもに根粒と葉身に分配していた。開花期の初めに固定した^<15>N_2は収穫時に子実への再分配はほとんど認められなかった。しかしながら莢生長期および子実生長期の初めに固定したN_2-^<15>Nは収穫時までに子実へ高い割合で分配され,同じ時期に吸収したNO_3-^<15>Nよりも高い割合であった。
著者
関本 均 有馬 泰紘 熊沢 喜久雄
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.p427-432, 1985-10
被引用文献数
1

水稲葉から揮散する窒素化合物(NH_3,NO_x)の水稲葉中での起源を調べるため,培地窒素を^<15>Nで標識して揮散窒素化合物の^<15>N濃度を測定した.揮散窒素化合物の^<15>N濃度は培地に^<15>N濃度51.0atom %のNH^+_4-N,NO^-_3-Nを8時間与えた場合でも0.1〜0.5atom %excessにすぎなかった.揮散窒素化合物のうち,アルカリ補修画分-Nが酸補修画分-Nよりも標識されにくく,NO^-_3区水稲の揮散窒素化合物の^<15>N濃度はNH^+_4区水稲よりも低くなる傾向がみられた.また,培地の^<15>N濃度を96.7,98.5 atom %にあげて32時間吸収させた場合でも,揮散窒素化合物の^<15>N濃度はNH^+_4区水稲,NO^-_3区水稲いずれも0.1〜0.2 atom % excessにすぎなかった.一方,このときの水稲葉内のNH^+_4-N,アミド-N,NO^-_2-N,NO^-_3-Nは^<15>N供与後16時間で10〜25 atom % excessで標識された.このことから揮散する窒素化合物の主要部分は,このような吸収直後あるいは同化初期過程にある窒素に由来しているのではないと考えられた.40 atom %の^<15>N標識化合物を8日間吸収させ,その後無標識培地に移して12日間,20日めまで揮散窒素化合物の^<15>N濃度を測定したが,0.1〜0.5 atom % excess で標識されたにすぎなかった.また,無標識培地に交換しても揮散窒素化合物の^<15>N濃度は,測定期間中にすみやかに希釈されることはなかった.これらのことからも,揮散する窒素化合物の主要部分は,吸収直後あるいは同化初期過程にある窒素ではないと思われた.^<15>N標識培地から無標識培地に植物を移す際にシクロヘキシミドによるタンパク合成阻害処理をくわえると,水稲が黄化するにしたがって揮散窒素化合物の^<15>N濃度が高くなる傾向がみられた.このとき,タンパク-Nは16〜20 atom % excessで標識され,揮散窒素化合物の^<15>N濃度よりもはるかに高かったが,^<15>Nで低い程度でしか標識されない代謝回転のおそいタンパク-Nの異化,分解過程で生じたNH_3やNO_xが,水稲葉から揮散する窒素化合物の主要な起源ではないかと推定された.