著者
菅谷 佑樹 狩野 方伸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.840-844, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
18

内因性カンナビノイドはシナプス後部の神経細胞で作られ、シナプス前終末に“逆向きに“働く。シナプス前終末ではCB1受容体を介して、グルタミン酸やGABA等の神経伝達物質の放出を抑える。2001年にこの“逆行性伝達物質”としての働きが発見されてから、その産生や分解の経路やシナプス伝達調節のメカニズムに関する数多くの研究が行われてきた。本稿ではこれまでに明らかになっている内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑圧のメカニズムを解説する。
著者
狩野 方伸
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

小脳の障害が自閉スペクトラム症や統合失調症の発症に関わるという多くの報告があるが、発達期小脳のシナプス刈り込みの異常とこれらの精神神経疾患との関連は不明である。本研究では、これらの精神疾患の関連遺伝子をプルキンエ細胞特異的に欠損させたマウスを対象に、発達期小脳の登上線維シナプス刈り込み、前頭前野のシナプス伝達、精神疾患関連行動を精査し、さらに、プルキンエ細胞の活動を変調してシナプス刈り込みを正常化した場合の効果を解析する。これらにより、発達期小脳の登上線維シナプス刈り込みの異常な亢進や障害が、如何にして前頭前野のシナプス機能に永続的な影響を及ぼし、精神疾患類似の行動異常を起こすのかを追及する。
著者
狩野 方伸 少作 隆子 田端 俊英
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2001

マリファナの活性成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノールは、中枢神経系に広く分布するCB1カンナビノイド受容体を介して作用を発現する。CB1受容体に対する内因性のリガンド(内因性カンナビノイド、以下eCBと略す)の候補として、アナンダミドと2-アラキドノイルグリセロールがある。CB1は中枢ニューロンのシナプス前線維に局在し、その活性化によって伝達物質放出の減少が起こる。しかし、本研究開始時点で、eCBがどのような刺激によって生成され、どのような生理機能を果たすかという最も重要な点についてはほとんど明らかにされていなかった。本研究では、eCBのシナプス伝達における役割を主として電気生理学的手法を用いて調べ、以下の結果を得た。海馬神経細胞および小脳プルキンエ細胞において、シナプス後細胞の脱分極と細胞内Ca^<2+>濃度上昇によりeCBが放出され、逆行性に抑制性および興奮性シナプス終末のCB1受容体に作用して伝達物質放出の一過性減少がおこることを明らかにした。また、グループI代謝型グルタミン酸受容体や、M_1及びM_3ムスカリニックアセチルコリン受容体などのGq結合型受容体の活性化によってeCB放出が起こり、逆行性にCB1受容体に作用して伝達物質放出の一過性減少がおこることを発見した。さらに、海馬培養細胞において、単独ではeCB放出を起こさない程度の弱いM_1/M_3受容体の活性化と弱い脱分極を同時に与えると、eCBが効率よく産生された。これは、海馬神経細胞に存在するフォスフォリパーゼCβ1(PLCβ1)の酵素活性が、M_1/M_3受容体の活性化と細胞内Ca^<2+>の両方に依存することが原因である。したがって、PLCβ1はコリナージック入力(シナプス前活動)と細胞内Ca^<2+>濃度上昇(シナプス後神経活動)の同期性検出分子として機能することが明らかになった。
著者
狩野 方伸 崎村 建司 少作 隆子 岸本 泰司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

これまでの研究を継続・発展させ、平成25年度に以下の研究を行った。脳スライス及びin vivoの個体脳の解析は狩野が、培養海馬ニューロンの解析は少作が、行動学的解析は岸本と狩野が担当した。また、遺伝子改変マウスの維持は崎村が担当した。1. 内因性カンナビノイド(eCB)系によるNMDA受容体機能調節のメカニズム: 逆行性シナプス伝達を担うeCBである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の合成酵素DGLαの欠損マウスと、2-AGの受容体であるCB1の欠損マウスの側坐核中型有棘ニューロンの興奮性シナプスにおいて、NMDA受容体機能の低下が認められた。その原因として、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の寄与が低下していることを示す電気生理学的所見を得た。2.大脳基底核の運動学習におけるeCB系の役割: 3レバーオペラント課題のマウスへの適用について、平成24年度に引き続き検討した。3.分界条床核の抑制性シナプス伝達の2-AGによる逆行性伝達抑圧のメカニズム:分界条床核の抑制性シナプスの逆行性伝達抑圧が、eCB系遺伝子改変マウスにおいてどのように変化しているかについて、継続して電気生理学的解析を行った。4.eCB系の海馬機能における役割: eCB系遺伝子改変マウスにおいて、瞬目反射条件付けのLI (latent inhibition)課題に関する解析を継続した。5.eCB系の抗炎症作用:U87-MGヒト悪性グリオーマ細胞における、NF-kBシグナルを介する炎症作用に注目し、グリアのeCB系による抗炎症作用のメカニズムを調べるための条件検討を行った。
著者
崎村 建司 夏目 里恵 阿部 学 山崎 真弥 渡辺 雅彦 狩野 方伸
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、グルタミン酸受容体の発現と安定性、さらにシナプスへの移行と除去が細胞の種類や脳部位により異なった様式で調節され、このことが単純な入力を多様な出力に変換し、複雑な神経機能発現の基礎課程となるという作業仮説を証明することである。この解析ために、4種類のAMPA型グルタミン酸受容体、4種類のNMDA型受容体はじめとして複数のfloxed型標的マウスを樹立した。また、GAD67-Creマウスなど幾つかのCreドライバーマウスを樹立した。これらのマウスを交配させ解析した結果、海馬CA3では、GluN2BがシナプスでのNMDA型受容体の機能発現に必須であることを明らかにした。また、小脳TARPγ-2とγ-7がAMPA型受容体の発現に必須であることを見出した。さらに発達期のシナプスにおいて、GluN2AとGluN2Bが異なった様式でAMPA型受容体を抑制することを単一神経細胞でのノックアウトを用いて示した。