著者
瓜生 淑子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.13-24, 2007-04-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
1

本研究では,70人の幼児に対して,人気のキャラクター(アンパンマン)を登場させた課題場面を構成し,アンパンマンを救うために対決場面で敵(ばいきんまん)に嘘の在処(アンパンマンを救うための大事なものが入っていない空の箱)を教えられるかを検討した。その結果,年中児は80%が,年長児は100%が正答した。誤信念課題(位置移動課題)の結果とも比較したところ,誤信念課題正答より1年以上先んじた成績であることから,年中児以上になると,「心の理論」獲得に先立って嘘をつくことが可能になってきていることがわかった。しかし,年少児では,嘘をつく課題の方が逆に正答率が30%程度と低く,嘘をつく反応への葛藤がうかがえた。回帰分析の結果,この課題では,「男児」優位が示されたことから,認知的課題である誤信念課題と違って,パーソナリティ要因の影響も示唆された。しかし,嘘をつく課題では,正答率の低い年少児も含めて良い回帰モデルが作られたことなどから,年少児の正答率の低さは,そもそも嘘をつく行為がこの時期,まだ萌芽的であることを示していると解釈され,「心の理論」獲得の時期は欧米の子どもに比べてやや遅く,年中児以降と考えられるのではないかと考えられた。
著者
瓜生 淑子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.13-24, 2007-04-20

本研究では,70人の幼児に対して,人気のキャラクター(アンパンマン)を登場させた課題場面を構成し,アンパンマンを救うために対決場面で敵(ばいきんまん)に嘘の在処(アンパンマンを救うための大事なものが入っていない空の箱)を教えられるかを検討した。その結果,年中児は80%が,年長児は100%が正答した。誤信念課題(位置移動課題)の結果とも比較したところ,誤信念課題正答より1年以上先んじた成績であることから,年中児以上になると,「心の理論」獲得に先立って嘘をつくことが可能になってきていることがわかった。しかし,年少児では,嘘をつく課題の方が逆に正答率が30%程度と低く,嘘をつく反応への葛藤がうかがえた。回帰分析の結果,この課題では,「男児」優位が示されたことから,認知的課題である誤信念課題と違って,パーソナリティ要因の影響も示唆された。しかし,嘘をつく課題では,正答率の低い年少児も含めて良い回帰モデルが作られたことなどから,年少児の正答率の低さは,そもそも嘘をつく行為がこの時期,まだ萌芽的であることを示していると解釈され,「心の理論」獲得の時期は欧米の子どもに比べてやや遅く,年中児以降と考えられるのではないかと考えられた。
著者
瓜生 淑子
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

幼児に対して、ヒーローを救うために悪者にウソをつけるかという欺き課題と「心の理論」の獲得を見る標準的な誤信念課題を実施し、あわせて行った母親のアンケート調査の結果を含めて、子どものウソの出現時期の確認とウソを可能にする認知的・人格的要因を検討し、子どもの心的世界の形成にとっての子どものウソの持つ意味を考察した。研究は、1)幼稚園児の個別実験と2)母親に子どものウソに気づいているかを問うアンケート調査からなった。その結果、個別実験からも親の調査からも、効果を意図したウソの年齢下限は、満4歳頃であることが確認された。しかし、非第一子的性格であると見られたパーソナリティの「のびやかさ」尺度得点が実験場面でのウソの出現を早めるという仮説は検証されず、むしろ「慎重さ」尺度と逆転させて名付け、この尺度得点が正の影響力を持つとして仮説とは逆に解した方が適合する結果が示された。この尺度が認知的能力の代替変数になった可能性がある。また、前研究に比べ、ウソが可能になる年齢や「心の理論」獲得の年齢がやや遅かったことについては、対象児の保育経験(幼稚園児か保育所児か)の違いが自他の分化に影響している可能性が示唆された。この点については、今後、年長児のデータも加えて分析し、検討したい。
著者
瓜生 淑子
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 (ISSN:05472393)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-67, 2012-11

The practice of bilingual deaf education in Northern Europe and America has pushed the introduction of Japanese Sign Language (JSL) for communication aids into Japanese public deaf schools since the 1990s. This study examined this new trend and discussed the possibility of the combined method of JSL and oral Japanese for young deaf children to promote their meta-linguistic abilities and to provide them clues to written Japanese language.