- 著者
-
小林 悠
飯田 樹里
坂田 秀勝
松林 圭二
佐藤 進一郎
生田 克哉
紀野 修一
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
- 雑誌
- 医学検査 (ISSN:09158669)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.4, pp.740-747, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
- 参考文献数
- 24
E型肝炎ウイルス(HEV)はE型肝炎の原因ウイルスであり,本邦では遺伝子型3型と4型が検出されている。北海道では高病原性である4型が他地域よりも高率に検出されるため,われわれは3型と4型を迅速に鑑別可能なマルチプレックスreal-time RT-PCR法(鑑別PCR)を開発した。今回,遺伝子型およびHEV RNA濃度既知の献血者由来検体を対象に,リアルタイムPCR試薬であるQuantiTect Probe RT-PCR Kit(従来試薬)およびReliance One-step Multiplex RT-qPCR Supermix(BIO-RAD,A試薬)を用いて,鑑別PCRにおいて感度などに変化があるかを検討した。各遺伝子型のリニアダイナミックレンジは,3型に対しては同等で,4型に対してはA試薬が従来試薬よりも線形区間が10倍広範囲であった。PCR効率は,3型で109.9% vs. 108.3%,4型で89.7% vs. 97.1%であり,血漿1,000 μL使用時の検出感度は,3型で20 IU/mL vs. 19 IU/mL,4型で66 IU/mL vs. 16 IU/mLであった(いずれも従来試薬vs. A試薬)。A試薬により4型に対するPCR効率および検出感度は向上し,高病原性である4型の感染者において遺伝子型情報をより早期に提供可能であり,その後の治療に有用と考えられた。