10 0 0 0 OA 2.鉄と発癌

著者
大竹 孝明 生田 克哉 高後 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1277-1281, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
16

鉄は生体反応に必須の金属元素であるが,過剰状態では自由鉄分画が増加し活性酸素種産生を介して細胞毒性,DNA損傷ひいては発癌を誘導する.鉄は遺伝性ヘモクロマトーシスだけでなく,C型慢性肝炎の肝癌発生機序にも関与している.これに対し瀉血療法が発癌抑制効果をあげている.さらに鉄はアスベストによる胸膜中皮腫,子宮内膜症による卵巣癌の発症にも関与していることが示唆されてきている.
著者
生田 克哉 佐々木 勝則 伊藤 巧
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、鉄過剰による造血障害や鉄キレートによる造血回復の機序を、鉄過剰状態で血液中に出現する非トランスフェリン結合鉄(NTBI)の関与を含めて明らかにする目的で行った。骨髄鉄沈着、血清鉄とフェリチン上昇、さらにNTBI増加、および造血障害を呈する鉄過剰モデルマウスを作成し、このモデルに鉄キレートを行った群も作成した。骨髄細胞の網羅的遺伝子解析の比較から、糖代謝のTCA回路に関与するACO1やIDH遺伝子発現が鉄過剰に応じて亢進していることが判明した。さらに2-HG増加やDNAメチル化亢進も確認できた。鉄過剰によるこれらの変化が造血障害や白血化をきたす機序の一端を説明できる結果を得たと考えた。
著者
小林 悠 飯田 樹里 坂田 秀勝 松林 圭二 佐藤 進一郎 生田 克哉 紀野 修一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.740-747, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
24

E型肝炎ウイルス(HEV)はE型肝炎の原因ウイルスであり,本邦では遺伝子型3型と4型が検出されている。北海道では高病原性である4型が他地域よりも高率に検出されるため,われわれは3型と4型を迅速に鑑別可能なマルチプレックスreal-time RT-PCR法(鑑別PCR)を開発した。今回,遺伝子型およびHEV RNA濃度既知の献血者由来検体を対象に,リアルタイムPCR試薬であるQuantiTect Probe RT-PCR Kit(従来試薬)およびReliance One-step Multiplex RT-qPCR Supermix(BIO-RAD,A試薬)を用いて,鑑別PCRにおいて感度などに変化があるかを検討した。各遺伝子型のリニアダイナミックレンジは,3型に対しては同等で,4型に対してはA試薬が従来試薬よりも線形区間が10倍広範囲であった。PCR効率は,3型で109.9% vs. 108.3%,4型で89.7% vs. 97.1%であり,血漿1,000 μL使用時の検出感度は,3型で20 IU/mL vs. 19 IU/mL,4型で66 IU/mL vs. 16 IU/mLであった(いずれも従来試薬vs. A試薬)。A試薬により4型に対するPCR効率および検出感度は向上し,高病原性である4型の感染者において遺伝子型情報をより早期に提供可能であり,その後の治療に有用と考えられた。
著者
生田 克哉
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1903-1913, 2015 (Released:2015-10-10)
参考文献数
49

通常,生体内での鉄の動きは厳密に制御されているが,鉄の全体量が減ってしまうと鉄欠乏性貧血が生じるし,鉄代謝調節因子ヘプシジンが炎症などで過剰産生されると鉄の造血への利用が障害され慢性疾患に伴う貧血が生じる。逆に,背景に貧血が存在することで鉄過剰症という問題が生じる場合があり,例として遺伝性難治性貧血であるサラセミアが挙げられ,重度の貧血に対して行う赤血球輸血が長期間にわたることでさらに大量の鉄が体に負荷され鉄過剰となり,臓器障害を起こし予後にも関与してくる。一方,鉄過剰という状態そのものが造血を抑制して貧血をもたらしている可能性がある。例として,輸血依存性であった骨髄異形成症候群や再生不良性貧血が輸血後鉄過剰症となった場合に鉄キレートを行うことで,背景に存在していた輸血依存性が回復する現象が注目されている。このように,各種貧血において鉄代謝は非常に密接に結びついている。