著者
田中 健夫
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.119-134, 2021-03-30

It is an important practical issue to understand and intervene in the minds of perpetrators in clinical psychological support for those who have committed harmful acts. It is important to distinguish between the perpetrator’s own past experiences of victimization, such as being abused, and their sense of victimhood. One of the origins of victimhood is identification with the aggressor’s guilt that was internalized through the experience of being abused. This paper discusses the importance of the client’s development of guilt, intervening to understand the client’s train of thought, and sharing the psychological circumstances that compel the client to become dissociative.臨床心理学的な支援において、加害行為に至った者の心の中にある被害体験と被害者意識をいかに理解し取り扱っていくのかは重要な実践的課題である。加害者が実際に経験をした過去の被虐待などの被害体験と、被害者意識とを識別することがまずは重要である。被害者意識は、被虐待経験を通して内面化された攻撃者の罪悪感への同一化にひとつの起源がある。罪悪感を発達させること、クライエントの思考の筋道を把握するための介入、解離的にならざるをえない心的状況を共有していくことの大切さについて考察した。
著者
田中 健夫
出版者
山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.8-17, 2012

本稿の目的は,いじめの加害をめぐる一連の体験が,加害生徒の自己概念にどのような影響を及ぼすかについて,中学校養護教諭に対する半構造化面接を通して検討することである。養護教諭が関与した計7事例をKJ法により整理した。その結果,指導を受けとめた反応の一方で,加害生徒が納得できずに自分の感情を表現しないまま,被害者との心身の状態悪化の共振が起こったり,自己について無価値感を抱く過程が考察された。そこでは,加害にまつわる気持ちを他者との関係性のなかで表し,閉じた関係から離れて立ち直るような場がみいだされてやっと変化が可能となっていた。そして,外から押しつけられたと感じられている罪悪感を,自ら引き受けるものへと転換させる支援について検討をおこなった。
著者
田中 健夫 今村 亨
出版者
山梨英和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,いじめ体験が生徒の自己形成にどのような影響を及ぼすか,とりわけ被害体験を併せもつ加害生徒に焦点を当てて臨床心理学の視点から検討した。養護教諭と児童自立支援施設専門員に対して半構造化面接を実施し,学校と矯正教育における指導・支援の実情と課題を整理した。思春期に特有の加害-被害者の結びつきに関する理解をふまえること,閉じた関係とは異なる文脈の人間関係のなかで自ら罪悪感を表現すること,加害性を含めた生徒自身の問題について生活や作業場面でのつまずきや不満を糸口にして支援を進めることの意義について考察した。
著者
田中 健夫
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
no.19, pp.33-50, 2008-02-25

This research examined aspects of deadlock that students experienced during studying. I illuminated the characteristics of the problems for each academic year based on the consultations for new clients conducted by a student counseling organization (511 cases). Then, using psychological interviews (eight cases) with clients, I examined the essences of their studying problems. As a result, the degrees of unfitness of the clients due to decreased study motivation and poor grades were significant. In the first-year, there was a group of students whose degree of unfitness was so high, that the problem of forming their own autonomy was closely connected to their studying habits. As for the second and third years, problems that had previously been shelved, such as restructuring of the object or subject being studied, etc., had become obvious. As for the fourth year, when they were deciding the shape of their preparations for graduate research and thesis, some students felt anxious about how to represent their studies. It was suggested that enduring these anxieties would have a significant effect, causing them to question their own identity again.
著者
横田 ちゑ 長田 謙一 三宅 晶子 忽那 敬三 田中 健夫 山内 正平 内村 博信
出版者
千葉大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本研究においては特に次のテ-マが取り扱われたーー1.浦安における住宅の変化と近代化 2.ベルリンの斉藤佳三・1923 3.北海道と関西の和洋折衷建築 4.日本のダダイスト達 5.イデオロギ-としての技術 6.ベルリンの日本未来派 7.柳瀬正夢ーー未来派からプロレタリア美術へ 8.ブル-ノ・タウトにおけるユ-トピア幻想と革命 9.大船田園都市株式会社の新鎌倉住宅地 10.ト-マス・マンの政治論 1918ーー1923 11.映画『新しき士』におけるファシズム思想 12.1920年代日本におけるジャズ・イメ-ジ 13.近代社会における自己認識と映画ーージガ・ヴェルトフをめぐって 14.近代文化の問題としての二分化これら具体的テ-マの研究とともに、近代化の概念そのものについての議論がなされたーー日本においては、19世紀半ばの西欧受容以前に、既に様々な領域で独自の発展がなされていた(都市文化の成立・合理化・産業化)。これらの、そしてまたその後の状況を考えるなら、まさにそこで進行しつつあったプロセスが、極めて合目的的・功利的に西欧の技術とモノを受容したと言える。本来西欧における近代化は、歴史的にVerburgerlichungーーそれは市民・個人に基礎を置くーーの過程をも内包していた。しかし文化構造の転換とともに、近代化のプロセスはその重心を個人から大衆へと移してきた。ここにおいて、市民や個人の思想なしに都市化・合理化・産業化を加速度的に進展させていくプロセスを、より正確に規定する必要が出て来る。特に、このプロセスは日本においても西欧においても、あるいはむしろ日本においてよりドラスティックに進行しつつあるだけになおさらである。そしてこのプロセスを、モノから機能や情報が抽出されていく過程として促えるなら、それは、すべてが商品になっていき、情報と資本のネットワ-クに組み入れられていくポストモダンへと通じていると言えよう。