著者
田中 祐輔
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.60-75, 2013 (Released:2017-03-21)
参考文献数
61

本調査報告は,学術誌『日語学習与研究』(1979~2012)を対象に,現代中国における日本語教育論議について,過去から現在にかけてどのような人々が何についてどのような指摘をしてきたかを整理するものである。結果(1)日本語教育論議は1990年代初頭から活発化し,(2)執筆者は北京や吉林,沿岸部諸都市の大学に所属する教師が半数を占め,(3)研究対象は大学の日本語教育が6割以上であり,(4)研究分野は「言語習得・教授法」と「言葉の運用」が約半数を占めること,(5)これまでに,文学重視・文化理解・コミュニケーション能力育成・国家建設・中国独自の日本語教育スタイル・学習者中心・研究型人材育成・社会ニーズへの対応・教養力・学習者主体・複合型人材・ビジネス日本語等に関する指摘がなされたこと,の5点が明らかとなった。
著者
田中 祐輔 川端 祐一郎
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.79-93, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
24

日本語教育研究史についてはこれまでに複数の重要なサーベイが存在しているが,多くは研究領域の分類や取り組みの方向性に関する考察を行ったもので,定量的知見は不足している。また,研究間や研究者間での相互関係や互いの影響については明らかにされていることが極めて少ない。本研究では,日本語教育学及びその研究コミュニティの輪郭を把握するための試みの一つとして,日本語教育学会の機関誌『日本語教育』第1 ~ 175 号(1962~2020 年)の掲載論文1,803 点と,これらの論文中で引用された文献16,205 点及びそれらの著者を対象として,引用参照関係の時系列変化やネットワーク構造の分析を行った。その結果,研究コミュニティ内における共通の知的基盤の形成,研究動向の変化,グローバルな言語・教育研究との関連等について,いくつか重要な事実が明らかになった。また,その背景や示唆について,先行研究の知見も踏まえながら考察を行った。
著者
高橋 一男 堀田 泰司 芦沢 真五 北村 友人 黒田 一雄 廣里 恭史 小幡 浩司 新田 功 太田 浩 関山 健 花田 真吾 小早川 裕子 田中 祐輔
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度の研究はNAFSA年次大会(アメリカ)、EAIE年次大会(スペイン)、第6回APEC高等教育協力会議(ロシア)、AIEC年次大会(オーストラリア)、CBIE(カナダ)、APAIE(シンガポール)などに出席し、UMAPを中心としたアジア太平洋地域における学生交流に関する発表を行うとともに、国際会議・大会に出席している政府関係者及び、大学関係者に対するヒアリングを行い、国の政策と大学の国際戦略の関係について分析を行った。その中でも、特に英語圏であるカナダとアメリカが、UMAPへの参加を表明するなど、学生交流に関する新たな関心と問題意識が生まれていることが確認できた。8月18、19日にはUMAP国際事務局を担当する東洋大学、留学生教育学会と連携し、カナダ、アメリカ、オーストラリアから学生交流に関する専門家を招聘し、国際フォーラムとワークショップを開催した。アジア太平洋諸国の大学がどのような大学間連携を模索しているか、というニーズ調査を推進するための意見交換をおこなった。また、オーストラリア、カナダ、米国など発足当初のUMAPには参加していた英語圏諸国から関係機関の代表に参加を得て、今後、これらの国からUMAPへの参加を得ていくための課題検証について意見交換をおこなった。本フォーラムとワークショップには国内外の大学教員、大学職員、政府関係者等の150人を超える参加を得られた。2月15日、19日、3月26日にUMAPタスクフォース会議を開催し、本科研メンバーと各国国内委員会の代表が意見交換を行った。その中で、UMAPに実際に係る専門家に対し行ったSWOT分析や、日本国内のUMAP参加大学、非参加大学に対するUMAPに関するアンケート調査の分析を行い、今後のUMAPプログラムの発展に寄与するいくつかのアクションプランが提言された。
著者
田中 祐輔 川端 祐一郎
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.78-91, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
65

日本語教科書作成の際に語彙がどのように選択されているかについて,明らかになっていることは少ない。教科書掲載語は,想定する学習者のレベルや,現実の日本語使用場面における実用性を考慮して,また既存の教科書を参考にするなどして総合的に選定されているものと考えられるが,実際にどのような選択傾向が存在しているのかについての,横断的かつ定量的な研究は行われていないのが現状である。本研究では,日本語教科書における語彙選択の傾向を把握するための基礎的分析として,戦後に発行された初級総合教科書のうち各年代を代表する教科書の掲載語を集計し,時代ごとの変化や教科書間の類似・相異度などについて定量的な評価を行う。また,そこで明らかになった語彙選択の傾向がもたらされた要因についても,データベースなどとの照合を通じて考察を加える。
著者
田中 祐輔
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.219-239, 2018-12-31 (Released:2019-05-12)

中国における日本語の学習は,戦後複数回にわたってさまざまな緊張状態に置かれた日本と中国との関係を日本理解という形でつなぐ役割の一端を担うものであった。そして現在及び将来においても,日中関係を担う人材育成の重要な場であることは疑い得ない。また,突出した学習者数と,高度な日本語人材育成という量・質の両面から,中国における日本語教育は世界の日本語教育全体を牽引する立場にあるといえる。本研究は,これまで詳しく知られてこなかった国交正常化以前の中国で日本語による情報発信や交流に多大な貢献を果たした放送局・新聞社・雑誌社のアナウンサーや記者のオーラルヒストリー調査を通じて,中国の日本語教育において日本語メディアがどのような役割を果たし,それはいかにして実現したかについて考察し,両国の相互理解と文化交流の歴史の新たな側面に光を当てるものである。
著者
田中 祐輔 矢田部 塁 中村 真悟 小野寺 武 都甲 潔
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.89, 2012

我々は,従来の問題点を解消した迅速かつ高感度な新しい爆発物検知方法として,抗原抗体反応を利用し高選択性を持たせた表面プラズモン共鳴(SPR)センサを提案している.本研究の目的は,プラスチック爆弾の主成分として使われるRDX(Research Department Explosive : 1,3,5-trinitroperhydro-1,3,5-triazine)の高感度検出の方法の確立である.センサ表面に自己組織化単分子膜(SAM)を形成させ,デキストランアミンを介して,RDXの類似物質を固定化し,間接競合法を用いて測定を行った.その結果,RDXに対して100pptの検出限界を実現した.