著者
土田 夏佳 宮崎 徹 田中 泰章 吉川 俊治 稲垣 裕 蜂谷 仁 平尾 見三 宮城 直人 荒井 裕国 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.477-481, 2011 (Released:2012-10-03)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は37歳, 女性. 38℃台の発熱, 頸部痛, 両肩痛, 背部痛が出現し, 精査にて炎症反応高値(CRP 8.5mg/dL), 胸腹部CTにて径38mmの上行大動脈瘤を認めた. PET-CTにて動脈瘤への集積を認め, 高安動脈炎と診断された. プレドニゾロン(prednisolone; PSL) 30mg/日より治療開始し, 免疫抑制薬を併用するも約1年間で上行大動脈瘤は径48mmに拡大した. 早期手術のため, インフリキシマブ(infliximab; IFX)を導入したところ, 速やかな炎症反応の陰性化が得られた. IFX投与後14日目に大動脈瘤切除術を施行, 術後経過良好であった. 引き続き外来にてIFX投与継続し, 病勢の再燃を認めずコントロール良好であった. 生物学的製剤投与下に外科的治療が奏功した高安動脈炎の1例を経験したので報告する.
著者
新井 郷子 宮崎 徹
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.148-154, 2019-04-15

Apoptosis inhibitor of macrophage(AIM,遺伝子名CD5L)は,体内を循環する血中タンパク質であり,これまでに,肥満や脂肪肝の抑制機能や,近年では,急性腎障害や真菌性腹膜炎などの組織障害を伴う疾患の治癒を促進することが見いだされている。血中でAIMはそのほとんどが免疫グロブリンM(immunoglobulin M;IgM)に結合して安定化しており,AIMの体内量や活性の調節はIgMによるところが大きい。健常時はIgMに結合しているAIMは,特定の疾患時にIgMから解離することで可動性が増すと共に,活性状態が最大化される。すなわち,IgMは抗体としての役割だけでなく,AIMのキャリアとしての重要な任務を果たしているといえる。しかしながら,AIMがどのような結合様式でIgMと複合体を形成し,そして如何なるメカニズムで解離が誘導されるのか,その調節機構については未知であった。今回筆者らは,AIMとIgMの結合について,両者の複合体を電子顕微鏡で解析し,構造を視覚的に明らかにすることに成功した。この発見は,AIMとIgMの複合体形成の機序だけでなく,IgMの構造そのものに関しても免疫学の教科書を書き換えるほどの発見をもたらした。本稿では,AIMのIgMとの結合・解離に関する新しい知見をベースに,これまでに蓄積された,疾患におけるAIMの機能や,治療・診断応用における可能性を紹介する。
著者
宮崎 徹 新井 郷子 新井 郷子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

AIM に結合するタンパク質の候補が複数得られた。ヒト血中AIM 濃度測定系(ELISA 法)を確立した。これにより、動脈硬化あるいは大動脈瘤や脳心臓血管障害など動脈硬化を基盤とする疾患や、他のメタボリックシンドロームと血中AIM 濃度の関連性、もしくは疾患の進行度と血中AIM 濃度の関連性を解析することが可能となった。適時不活性化が可能なAIM コンディショナルノックアウトマウスのターゲティングベクターの構築を行った。
著者
新井 郷子 宮崎 徹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージが産生する分泌タンパク質AIM (apoptosis inhibitor of macrophage) は肥満やそれに伴うインスリン抵抗性惹起等の生活習慣病に深く関る分子であり、体内AIMの機能や量の制御は、AIMが関る疾患の予防や病態進行の制御に有効である可能性がある。本研究では、AIMの機能および量的制御方法の探索を行い、また肥満由来の自己抗体産生および脂肪肝由来肝がんについてAIMと疾患の関連性を明らかにした。さらにヒトにおいて健常者および肝疾患患者における血中AIM値測定を大規模に行うことで、AIMによる疾患の制御の可能性および疾患マーカーとしての有用性を見出した。
著者
長谷川 健司 福尾 秀一 宮崎 徹郎
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.971-974, 2001-07-20

大気中に突発的に発生するスポラディックE層によって起こるテレビ放送受信障害について解説する.スポラディックE層の発生のメカニズム, 障害の現状, 近年の発生状況, 現在行っている対策施策, および今後の課題などを説明する.
著者
生岩 量久 中 尚 宮崎 徹郎
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.523-527, 1993-04-20
被引用文献数
14 1

ディジタル音声信号から, 直接振幅変調波を得ることのできる出力1kWの新方式(ハイブリッド変調方式)中波ラジオ送信機を開発した.ハイブリッド変調方式とは, 大まかな振幅情報をあらわすスイッチング型電力増幅ユニットと細かい情報をあらわすアナログ型電力増幅ユニットを電力加算して振幅変調波を得るもので.変調増幅器が不要であるため, 信頼性が高く, 高効率(85%以上)で, 高品質であるなど, 多くの利点をもっている.本送信機は, エンコーダ部, 16台のスイッチング型電力増幅ユニットと1台のアナログ型電力増幅ユニットからなる電力増幅部, 電力加算部, およびBPF(帯域ろ波器)部から構成されている.音声信号はA/D変換器により12ビットのディジタル信号に変換されたあと, 大まかな振幅をあらわすMSB側と細かい情報をあらわすLSB側グループに分けられる.MSB側ビット(4ビット)の情報に応じて選択されたスイッチング型電力増幅ユニットと, LSB側ビット(8ビット)の情報に応じて振幅変調されたアナログ電力増幅型ユニット出力を合成することにより, 振幅変調波を得る.このように12ビットのうち下位8ビットをアナログ処理することにより, 数少ないユニット数で構成できる.本変調方式の採用により, 送信機の総合効率は85%以上となり, 従来に比べて25ポイント向上させることができたほか, S/N比は72dB以上, 歪み率は0.4%以下(80%変調時)と良好な特性を得ることができた.
著者
宮崎 徹
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

小児の先天性代謝疾患で頻度が高いプロピオン酸血症(PA)は、Propionyl-CoA calboxylase (PCC)が欠損もしくは機能が低下する劣性遺伝病である。特定のアミノ酸・脂肪酸の代謝不全により中間代謝産物が蓄積するため、出生後ミルク摂取によりケトアシドーシスを呈し最悪の場合死に至る。PAの治療法は栄養制限療法が主であるが、低栄養による様々な副作用の併発などにより予後は必ずしも良くない。肝移植が一定の効果をあげているとはいえ、長期的予後の判定は今後の課題であり、患者にとっての侵襲は小さくない。私たちは、以前、新たな根治的治療法の開発としてPCCa鎖(PCCA)遺伝子をノックアウトすることにより、PAモデルマウスを確立した。さらに、このマウスの肝臓に正常の15%の酵素活性を戻すだけで症状が著しく改善することを証明した。この成果をもとに本申請研究では、非ウイルス性のナノ・ミセルを用い、患者胎児の肝臓にPCC遺伝子をデリバリーする胎児治療法を提案し、その効果と安全性についてモデルマウスを用いて実証を試みた。1.ナノ・ミセル型遺伝子ベクターの作製・最適化東京大学工学系研究科・片岡一則教授の協力のもと、まずは予備実験としてGFP遺伝子発現プラスミドDNAをポリエチレングリコールの外殻で被ったナノ・ミセルベクターの最適化を行った。2.GFP発現ベクターを用いた胎仔肝臓での発現に関する予備実験次に、妊娠メスマウスを麻酔下で腹側より子宮を露出し子宮壁を一部切開し、羊膜上血管からGFP発現ベクターDNAを封入したナノ・ミセルベクター溶液を注入した。注入後、経時的に肝臓を摘出し、組織標本を作製・観察したところ、導入したGFP遺伝子は注入後1日で発現が確認され、2週間以上持続した。本研究により、ナノ・ミセルベクターによる胎仔肝臓への遺伝子デリバリーとその遺伝子発現がマウスにおいて可能になった。今後は実際にPCC遺伝子をノックアウトマウスへ導入し、PA治療への効果を検証したい。