著者
広瀬 一聖 川崎 一朗 岡田 義光 鷺谷 威 田村 良明
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.11-23, 2000-07-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
23
被引用文献数
4 6

科学技術庁防災科学技術研究所の関東・東海地域の地殻変動連続観測記録を, BAYTAP-G [ISHIGURO and TAMURA (1985)] を用いて解析し, 1989年12月9日, 南関東一帯で, 時定数約1日の傾斜ステップが生じたことを見いだした.データの観測数が少ないので, インバージョンにおける自由度を減らすため, 傾斜ステップの震源はフィリピン海プレートの上面の非地震性スベリと仮定し, ISHIDA (1992)によるフィリピン海プレートの上面にそって0.1度ごとに, 断層の走向, 断層の傾斜, スリップの方向, 食い違いの大きさの4つのパラメーターをフリーに, 断層面モデルを求あるインバージョンを行った.その結果, 次のことがわかった. 断層面の主要部分がFig. 7のように東京湾に分布し, ほぼ北に向かって約13度で低角に傾く, 下盤のスリップ・ベクトルの方向北60度西の, フィリピン海プレートの沈み込みと大局的に調和的な断層面モデルが得られた. 解放されたモーメントは約0.7×1018Nm (Mw5.9相当) であった. ただし, 統計的検定からは, 東京湾中央部ではなく東京湾周辺である可能性も存在する.震源核 (サイレント・アースクェイク) の発生予測を行うには, その発生法則が重要である. しかし, 日本列島周辺のスロー・アースクェイクやサイレント・アースクェイクの発見事例は数個しかないので, 発生法則などを議論するには時期尚早である. スロー・アースクェイクやサイレント・アースクェイクなど間欠的非地震性すべりの経験を蓄積することが, 地震短期予知研究の戦略として重要であろう.1989年12月の事例ではS/Nの良い記録が少なく, フィリピン海プレート上端という条件を付けざるをえなかったとか, インバージョンによって得られた断層の位置の分解能など, 残された問題もあるが, 本研究で得られた知見は, 発展し始めたばかりの「非地震性すべりを組み込んだプレート境界ダイナミクス研究」や, 地震予知研究などの関連諸分野の研究にとって, 意義ある一ステップとなるであろう.
著者
海野 徳仁 河野 俊夫 岡田 知己 中島 淳一 松澤 暢 内田 直希 長谷川 昭 田村 良明 青木 元
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.325-337, 2007-03-25 (Released:2013-08-05)
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

Hypocenters of the main shocks and aftershocks of the 1933 Mjma 7.1, 1936 Mjma 7.4, 1937 Mjma 7.1, 1939 Mjma 6.9, 1978 Mjma 7.4, and 1981 Mjma 7.0 Miyagi-oki, NE Japan, earthquakes are relocated by using S-P times reported in the Seismological Bulletin of the Japan Meteorological Agency (JMA) and those re-read from original smoked-paper seismograms observed at Mizusawa station of National Astronomical Observatory of Japan (NAOJ) and at Mukaiyama station of Tohoku University. In order to avoid large errors caused by inaccuracies in the arrival times of P- and S-waves and the limited number of observation stations, we determined hypocenters by using a grid search method based on the assumption that these events occurred at the boundary between the subducting Pacific plate and the overriding plate. The main shock epicenters of the 1933, 1936, 1937, and 1978 earthquakes are determined close to each other, and distributions of their aftershocks show that aftershock areas of 1933, 1936, and 1937 events partly overlap with that of the 1978 event and occupy its easternmost, central, and westernmost portions, respectively. It is likely that the 1933, 1936, and 1937 events possibly ruptured a part of the source area of the 1978 event, that is the eastern, central, and western portions, respectively. Locations of the main shock and aftershock area of the 1939 event are adjacent to the eastern edge of the source area of 1978 event. After the 1978 event, the 1981 earthquake had occurred there following the slip on the asperities in the presumed Miyagi-oki earthquake source area.
著者
花田 英夫 岩田 隆浩 菊池 冬彦 劉 慶会 松本 晃治 浅利 一善 石川 利昭 石原 吉明 野田 寛大 鶴田 誠逸 Petrova Natalia Goossens Sander 原田 雄司 佐々木 晶 並木 則行 河野 裕介 岩館 健三郎 亀谷 收 寺家 孝明 柴田 克典 田村 良明 矢作 行弘 増井 亘 田中 孝治 前島 弘則 洪 暁瑜 平 勁松 艾力 玉〓甫 Ellingsen Simon Schlüter Wolfgang
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.203-221, 2009-07-25
被引用文献数
5

The Japanese lunar explorer SELENE (KAGUYA), which has been launched on Sep. 14th, 2007, utilizes VLBI observations in lunar gravimetry investigations. This can particularly improve the accuracy of the low degree gravitational harmonics. Combination of ground based VLBI observations and Doppler measurements of the spacecrafts enable three dimensional orbit determinations and it can improve the knowledge of the gravity field near the limb. Differential VLBI Radio sources called VRAD experiment involves two on-board sub-satellites, Rstar (Okina) and Vstar (Ouna). These will be observed using differential VLBI to measure the trajectories of the satellites with the Japanese network named VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry) and an international VLBI network.<BR>Two new techniques, a multi-frequency VLBI method and the same-beam VLBI method, are used to precisely measure the angular distance between the two sub-satellite radio sources Okina and Ouna. The observations are at three frequencies in S-band, 2212, 2218 and 2287 MHz, and one in X-band, 8456 MHz. We have succeeded in making VLBI observations of Okina/Ouna with VERA and the international network, and have also succeeded in correlating of signals from Okina/Ouna, and obtained phase delays with an accuracy of several pico-seconds in S-band.
著者
佐藤 忠弘 新谷 昌人 今西 祐一 大橋 正健 福田 洋一 田村 良明
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は科研費の最後の年度であり、神岡超電導重力計(SG)の性能の向上、特に冷凍機関係の性能向上を図るため、筑波大学研究基盤総合センター低温部門の池田博講師に、また、従来も共同研究をしてきたJSPSの外国人特別研究員(水沢勤務)Severine Rosat博士の2名に研究協力者として参加してもらった。スマトラ・アンダマン地震(Mw=9.0-9.3)の信号は世界の多くのSGで明瞭に捉えられた。神岡、松代を含む世界13ケ所のSG記録を使い、地球自由振動_0S_0モード(地球の半径が変化するモード)の解析結果を出版した。従来の研究で、このモードの地球の扁平度、回転の影響(緯度依存性)は知られていたが、緯度のみのならず、経度方向にも変化すること、また、その変化が3D-地震波トモグラフィーを使ったモデル計算から予測される分布と矛盾がないものであることが分かった。これは、世界初である。神岡と松代の解析結果は観測誤差の範囲で一致しており、解析の信頼度を測る目安になった。本科研費で実施した一連の観測・研究の大きな成果と言える。観測された_0S_0の振幅変化幅は全地球で2%程度の小さなものである。しかし、本研究の結果も示すように、振幅変化は地球の横方向の構造変化に敏感で、地球内部構造の研究にとって重要と言える。SGは絶対重力計を使い0.1%以上の精度で検定されている。これが、このような微小な現象が議論できる基礎になっている。しかし、SG観測点の数は、国際観測網で使われている地震計の数に比べ圧倒的に少ない。一方、地震計の振幅精度は数%程度で、これを0.1%台に向上できれば、地球内部構造の研究に大いに寄与すると言える。地震計検定の精度向上を目指し、本研究のレーザ歪計グループが開発したレーザ地震計とSGとの比較観測を、本年度、神岡で開始した。重力観測への大気圧変動、海洋変動の影響についての研究でも、大きな進展がみられた。なお、絶対重力計FG5によるSGの検定を3回(江刺1回、神岡2回)実施した。
著者
日置 幸介 田村 良明
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

科研費申請時には年周地殻変動は現象のみが知られておりその原因は謎であったが、本研究により原因がほぼ究明されただけでなく、地震活動の季節変動との因果関係もある程度明らかにすることができた。昨年度は国土地理院のウェブページより取得したGPS全国観測網の2年間のデータと、アメダス積雪深度データを対比することにより、東北地方で顕著に見られる年周成分の主な原因が積雪荷重による弾性変形であることを解明した。この成果は初年度に米サイエンス誌の論文となり、わが国でも主要なメディアに取り上げられる等大きな反響を呼んだ。また田村は、年周視差によって銀河系の測距を行うVERA計画に年周地殻変動が及ぼす影響について詳細な、検討を行った。日本列島の地震活動には季節性が見られるが、海溝型地震は秋冬に多く内陸地震は春夏に多い傾向が昔から知られている。今年度は内陸地震特に積雪地域に発生する地震の季節性を調べ、積雪荷重との因果関係を研究した。地震に先立つ歪の蓄積速度と積雪荷重による断層面でのクーロン破壊応力の増加を定量的に比較し、前者の一年分のほぼ10%におよぶ応力擾乱が積雪荷重によって発生することがわかった。両者の相対的な大きさから、雪どけ時期にピークをもつ地震発生頻度は最小時の三倍程度になることが予測される。もっとも新しい日本の被害地震のカタログから、内陸地震の発生時期を積雪地域で発生したものとそれ以外について統計処理した。その結果モデルから予測されるのと調和的な季節変動が積雪地域で見られ、一方積雪のない地域ではそのような傾向が見られないことを明らかにした。これはEarth Planet. Sci. Lett.誌に2003年2月に掲載され、Nature(http://www.nature.com/nsu/030210/030210-13.html)及びNew Scientist(http://www.newscientist.com/news.jsp?id=ns99993409)の外国の科学雑誌にニュースとして取り上げられただけでなく、国内で、も大きな話題となった(http://slashdot.jp/articles/03/02/19/122254.shtml)。補助金額を考えると極めて投資効率の良い研究補助であったと言うことができよう。