著者
田村 貞雄
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本年度は主として史料所蔵者・所蔵機関を訪ね、史料の収集を行なった。まず「ええじゃないか」発生地域の県立図書館等を訪れ、市町村史・郷土研究誌の閲読と重要部分の複写を行ない、それらを手がかりとして原史料の収集を一部行なった。とくに1867(慶応3)年に焦点をしぼり、その前年以後の地域の情勢に関する史料、江戸・京都の政治動向についての情報の伝播に関する史料を収集した。収集箇所は東京・神奈川・愛知・三重・岐阜・京都・大阪・和歌山・兵庫・岡山・広島・香川・徳島の13都府県立図書館およびその他の史料所蔵機関(京都府丹後資料館、三原市立図書館、岐阜市歴史博物館など)、また重要資料所蔵者である兵庫県三田市の朝野家、三重県一志郡美杉村の向田家を訪ねた。また幕末期の政治・経済情勢を把握するために、上記機関のほか鹿児島・山口・佐賀・山形の県立図書館およびその他の史料所蔵機関(山口県文書館・酒田市立図書館)などで資料収集を行なった。以上の資料収集は、また十分なものとは云えず、膨大な推別史料のごく一部を散見したに過ぎない。しかし以上の史料の中間的分析では、「ええじゃないか」は1867年(慶応3)5月末の第2次長州征代中止決定の公示がきっかけとなった物価の下落と「にわか踊り」の自然発生のもとで、その情報伝播が広がり、7月中旬に三河地方で発生した。その狂乱が逆に京阪地方に達するのは、10月14日の大政奉還の直後でありこれを封膜派が十二分に利用した形跡がある。今後さらに広範囲に史料収集を行ない、従来の狭い政治史や民族学プロパ-の分析を脱し、政治史、経済史、社会史、民族学を総合した分析を志したい。
著者
伊東 幸宏 小西 達裕 三浦 崇 赤塚 大輔 田村 貞雄 阿部 圭一 赤石 美奈 中谷 広正
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.821-830, 1999-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
5

本研究では 歴史学研究の支援を行うシステムの構築を目的とする. 歴史学研究に利用される歴史史料の特徴を考察し それに基づいて歴史学研究において支援を必要とするポイントを検討し その具体的な実現方法 その方法に基づいて実装したシステムを紹介する. 対象をテキスト文書に限定し 膨大な史料の中から歴史学者の独自の視点から関心のある史料を選び出すこと 選び出した史料を歴史学者の主観に基づいて整理すること そして整理された史料を1つの空間に配置して全体を俯瞰しやすく提示すること の3点を取りあげ そのような支援を行うシステムの構成について述べる. そして その方法に基づき実装したシステムを紹介する. 最後に 実際に歴史学研究の仮説検証をし 評価を行う. 具体的題材として 1867年頃 伊勢神宮などのお札降りを発端として起こった「ええじゃないか」と呼ばれる事件を取りあげ 「ええじゃないか」に関する仮説を歴史学研究者がら提示してもらい 検証を行った.Our purpose is constructing a system of supporting researchers in history. In this paper, we describe a method of constructing the system, considering characteristics of historical materials and examining how to support historians. We describe three points of implementing the system. The first point is how to extract historical materials in which historians are interested. The second point is how to classify extracted materials. The third point is how to display classified materials. We discuss our methods of implementation and structures of data. Finally, we evaluate the effectiveness of our system by verifying the hypothesis which were set up by a historian. The hypothesis is concerned with the historical event "Eejanaika" that happened in 1867.
著者
田村 貞雄
雑誌
じんもんこん2000論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.17, pp.295-300, 2000-12-15

わたしたち歴史研究者は、貴重な歴史史料を求めて探索の旅をつづけている。とくに近世史・近代史では、一般庶民が作成した日記、書簡、家計簿、写真などが重視されており、また購読された新聞・雑誌・同人誌もきわめて重要である。これらの庶民史料はつねに廃棄・散逸のおそれがあり、所蔵者の認識を高める方法を講じた収集、保存、公開の方針を論じたい。
著者
中谷 広正 菊池 浩三 田村 貞雄 伊東 幸宏 小西 達裕
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

慶応3年(西暦1869)に起こった、伊勢神宮・秋葉三尺坊大権現などのお札降りを発端とした「ええじゃないか」を題材として取りあげ、歴史学研究支援機能をもつマルチメディアデータベースを構築した。ええじゃないかに関する各地の伝承や史料を収集した「ええじゃないかデータベース」をマルチメディア統合環境下で構築した。そして、ええじゃないかに関する全体像・具体像把握および仮説検定を支援する環境を構築した。具体的には、つぎの課題について研究をおこなった。1.「ええじゃないかデータベース」の構築・充実伊勢信仰や秋葉信仰を中心とする民間信仰に関する調査・史料収集を進め、データベースの充実を図った。歴史学方法論に基づくデータベース仕様を実現した。2.歴史学研究支援に適したユーザインタフェースの実装歴史学における様々な研究目的・スタイルに対して調整可能である汎用的ユーザインタフェースを実現した。また、そのための基盤技術である画像情報解析・文字情報解析・自然言語インタフェースに関しても各種技術を開発した。3.評価実験ええじゃないかに関する史料の抜粋をおこない、具体的な歴史学の仮説検証実験をおこなった。歴史学者から本システムを用いることによって、明確で客観的な仮説検証がおこなえるとの評価を得た。
著者
赤石 美奈 岡田 義広 中谷 広正 伊東 幸宏 田村 貞雄
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.831-839, 1999-03-15
被引用文献数
5

本論文では 歴史学研究の分野における膨大で多様な史料の管理・検索システムと 史料データの持つ時間と位置の属性に基づき 史料を3次元空間内に配置する可視化システムに関して述べる. 本研究では 1867年 (慶応3年) の伊勢神宮・秋葉三尺坊大権現などの御札降りを発端とした「ええじゃないか」に関する史料を題材として用いている. そこでは 多様な史料を扱い 各種のデータベースの情報を相互利用することが必要となる. そこで 多様な史料を メディア・オブジェクトとして統一的に扱い そのメディア・オブジェクトを管理・検索するシステムを開発した. また 歴史学研究を支援するためには 多大な史料から データの特徴を見出すための史料可視化システムが必要である. そのためには (i) データ間の比較が容易に行え それらの特性が表現されていること (ii) 時や場所の違いによるデータの変化が一目で把握できることが必要である. そこで 格納された史料の時間と位置の属性に基づき データを投影した2次元図表を3次元空間に配置し 視点の方向を変えることにより データの時間や位置の違いにおける変化 データ間の相関を俯敞できるシステムを開発した. これにより 各時代や土地でのデータの特徴や分布を概観でき 多角的な解析を行えるようにし 仮説生成や検定を支援する。This paper treats a historical datamanagement and visualization system for history research supports. There are many kinds of historical data, such as texts, sounds, images. Usually each of these kinds of data is managed in a different database system. The authours system provides functions to collect data from some different database systems, to manage them as uniform media objects and to represent historical databased on time and location attributes. In this system, values concerning a time attribute are represented in a single chart plane. Some chart planes are composed into something like a binder note in a 3D space. This composed component is located at its associated position on a map. It is possible to see the transitions of data corresponding to each location by changing time attribute value from the various eye positions.