5 0 0 0 新規疾患

著者
正木 康史 川端 浩 高井 和江 塚本 憲史 藤本 信乃 石垣 靖人 黒瀬 望 小島 勝 中村 栄男 木下 朝博 青木 定夫 TAFRO症候群研究班
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.2029-2037, 2016 (Released:2016-10-28)
参考文献数
32

2010年に提唱されたTAFRO症候群は,thrombocytopenia;血小板減少,anasarca;全身浮腫・胸腹水,fever;発熱,reticulin fibrosis;骨髄のレチクリン線維症と巨核球の増勢,organomegaly;肝脾腫やリンパ節腫大などの臓器腫大からなる造語である。本症のリンパ組織病理像はCastleman病と類似するが,典型的な多中心性Castleman病とは臨床像が異なる。TAFRO症候群ではガンマグロブリン増加は軽度で,リンパ節は小さく,亜急性に発症し進行性の経過をたどる。TAFRO症候群は致死的な経過をとる例もあるが,早期からの治療による有効例も報告され,診断基準と治療指針の確立が急務である。厚労省研究班にて議論を重ね,平成27年度に本疾患の診断基準,重症度分類,治療指針を策定したので概説する。
著者
元雄 良治 済木 育夫 高野 文英 牧野 利明 石垣 靖人 島崎 猛夫
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

臨床的には22例の大腸癌患者のオキサリプラチン(L-OHP)を含む化学療法レジメン(FOLFOXorXELOX)に人参養栄湯(NYT)を併用したところ、全経過を通してgrade2までの末梢神経障害に留まった。動物実験では、マウスにL-OHPを腹腔内投与して誘導した冷痛覚過敏と機械的アロディニアに対してNYTの経口投与により有意な改善作用が認められた。細胞実験では、PC12細胞のL-OHP処理により短縮した神経突起をNYTが回復させた。
著者
高野 文英 太田 富久 石垣 靖人 矢萩 信夫
出版者
日本薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究代表者は研究機期間内に、冬虫夏草属菌が産生する消化管免疫調節物質の構成成分を明らかにする研究を行った。その結果、ハナサナギタケ培養物に強い免疫調節活性があり、精製の結果、糖タンパクであることが判明し、詳細な解析の結果、ペプチドは8種類のアミノ酸、糖はβ(1→3)グルカンから構成されることが分かった。さらに詳細な構造解析の結果、免疫賦活化高分子は多糖とペプチドの混合物であった。また、冬虫夏草属菌を用いた機能性食品等に配合されるプロアントシアニジンやニンニクについても経口免疫アジュバント活性を調べたところ、強い活性を示すことを明らかにすることができた。
著者
石垣 靖人
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.320-325, 2005-12

例えば色素性乾皮症,Werner症候群,血管拡張性失調症などの劣性遺伝疾患ではmRNAの読み枠の途中で終止コドンを生むナンセンス変異が原因遺伝子に見いだされ,その発現は,mRNAレベルでほぼ消失していることが知られている。これはナンセンス変異をもつ遺伝子のmRNAが細胞内で選択的に分解されていることが原因であるが,この分解経路のことをRNAサーベイランス,またはナンセンス変異依存mRNA分解機構(Nonsense-mediated mRNA decay),略してNMDと呼ぶ。現在考えられているNMDのモデルでは,はじめにスプライシングに伴ってエキソンとエキソンのつなぎ目にタンパク質の複合体(Exon junction complex)が結合する。この複合体を介してNMD関連因子がmRNA上へ集結する。このあとの翻訳で,リボソームがナンセンス変異で停止すると,変異の3'側に結合するNMD関連因子と相互作用して変異mRNAだけを選択的に分解に導く。この時,リン酸化および脱リン酸化反応が分解へのスイッチとして機能すると考えられている。ナンセンス変異は遺伝疾患で見いだされるだけでなく,スプライシングの失敗やRNA編集の結果として,常に生体内のmRNA上に生まれているらしい。NMDはこのような遺伝情報のノイズを排除しており,遺伝情報の品質管理に必須な機構であると考えられている。