著者
野澤 直美 高木 翔太 渡邉 哲司 風間 竜之介 小沼(中村) 実香 村橋 毅 高野 文英
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.94-103, 2019 (Released:2020-07-11)

Nitre was a substance essential for making gunpowder, of which the process for making was to be one of the top secrets from the middle to early modern period in Japan. Nitrate, from nitre, was directly prepared from nitre-enriched deposits in most countries; however, nitre deposits were rare in Japan. Hence, nitrate was produced from aged-soil using a method called Kodo-hou in Japan. There are a few pieces of literature that refer to making nitrate from aged-soil. We report here some experimental evidence for purification of potassium nitrate(KNO3)from aged-soil using the Kodo-hou method. Further, the levels of both ions such as cations(Na+ and K+)and anions(Cl-, NO3-, SO42-)in ash and aged-soil are also measured and compared to normal soil.
著者
野澤 直美 高木 翔太 福島 康仁 高橋 孝 村橋 毅 高野 文英
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.179-193, 2020 (Released:2021-01-28)

目的:硝石(硝酸カリウム KNO3)は,戦国時代から江戸末期のわが国において黒色火薬の原料として欠くことのできない物質であった.わが国における硝石製造には「古土法」,「培養法」および「硝石丘法」と呼ばれる 3 種の方法があった. 方法:本研究では,これらの 3 種の硝石製造方法について史学的調査,土壌中のイオン分析,および硝石精製の再現実験行い比較検討を行った. 結果:「古土法」は,経年した床下土から硝石を製造する全国で行われた方法なのに対して,「培養法」は,加賀藩領の五箇山や天領の白川郷の限られた地域においてのみ実施された手法であった.「培養法」は「硝石丘法」と類似するが,「硝石丘法」では人畜屎尿を屋外で積み上げ 1~3 年を経過させた土を使うのに対して,「培養法」では蚕の糞や山野草を養蚕家屋の床下に穴を掘り,約 4~5 年をかけて醸成した土から硝石を製した.実際に,これら 3 種の手法を再現して硝石製造を行った.いずれの手法においても硝石の結晶を析出させることができたが,「培養法」と「牛糞堆肥(硝石丘法の代用)」で析出する結晶は不定形であり,特に「牛糞堆肥」では繰り返しの再結晶が必要であった.「培養法」で得られる硝石の結晶量は,「古土法」の 3 倍だった.3 種の硝石製造法における土中の硝酸イオン(NO3 -)濃度をイオンクロマトグラフィー法で測定した結果,「培養法」の土に含まれる NO3-は,「古土法」よりも高く,また堆積期間が 1 年以内の「牛糞堆肥」であっても 20 年以上経過した「古土法」による土と同程度の NO3-が検出できた.「培養法」および「硝石丘法」では,アンモニア体窒素を豊富に含む蚕や人畜の排泄物を利用することにより,土中の NO3-濃度を高める生物学的手法であることがわかった. 結論:総じて 3 種の硝石製造法のなかでも「培養法」が,硝石製造の質や量の面で優れていることが判明した.本稿では,わが国の硝石製造法について,欧州の硝石製造法とも併せて論考する.
著者
野澤 直美 福島 康仁 高橋 孝 村橋 毅 高野 文英
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.84-96, 2021 (Released:2022-02-24)

目的:硝石は,火薬の主要な原料であり,戦国時代から江戸の終わりまでのわが国において「古土法」,「培養法」,および「硝石丘法」と呼ばれる 3 種の製造法で硝石を生産していた.先の報告において「培養法」は,土中の豊富なアンモニア態窒素を利用して効率的に質の高い硝石を製造できる方法であることを科学的に明らかにした.本研究では,これら 3 種類の土をメタゲノムから比較した. 方法:硝酸イオン NO3– の生成に関連する硝化細菌に着目し,3 種の硝石製造法で用いる土中のバクテリア分 布を 16S rRNA 遺伝子を対象としたメタゲノム解析法で分析した.併せて土中の NO3– の濃度も測定し,これ らの結果を一般的な耕作地の畑土と比較した. 結果・考察:畑土では NO3– が検出されないが,それぞれの硝石製造に用いる 3 種類の土からは高濃度の NO3 –が検出された.これらの土について 16S rRNA メタゲノム解析を行った結果,「培養法」で用いる土(江戸期 の遺構土)は,「硝石丘法(牛糞堆肥で代用)」や畑土で見出される細菌叢と同じパターンが示された.対照的に,「古土法」で用いる土の菌叢は,他の 3 種類の土とは異なり Actinobacteria 門の細菌が菌叢全体の 97%を占めていた.Proteobacteria 門の細菌は,畑土で 30%,牛糞堆肥で 46%,合掌造り床下遺構土で 13%を占めるが,寺の床下土では 2%に過ぎなかった.硝化に関わる菌について菌叢同定を行ったところ,Nitrospira,Nitrobacter,JG37-AG-70 および Nitrosovibrio 属が畑土,合掌造り床下遺構土および牛糞堆肥で見出された.しかし,寺の床下土ではこれらの菌は全く検出できなかった.脱窒に関わる菌としては Rhodobacter 属,Pseudomonas属,Paracoccus属およびBacillus属の菌が見つかった.Nitrospiraに帰属されるOTUs(operational taxonomic units)のリード数は,合掌造り床下遺構土において最も高かった.以上の結果から,硝石製造法は,土中の細菌を巧みに利用して NO3– 濃度を高め硝石を作り出すための高度なバイオテクノロジーであることがわかった.
著者
元雄 良治 済木 育夫 高野 文英 牧野 利明 石垣 靖人 島崎 猛夫
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

臨床的には22例の大腸癌患者のオキサリプラチン(L-OHP)を含む化学療法レジメン(FOLFOXorXELOX)に人参養栄湯(NYT)を併用したところ、全経過を通してgrade2までの末梢神経障害に留まった。動物実験では、マウスにL-OHPを腹腔内投与して誘導した冷痛覚過敏と機械的アロディニアに対してNYTの経口投与により有意な改善作用が認められた。細胞実験では、PC12細胞のL-OHP処理により短縮した神経突起をNYTが回復させた。
著者
阿部 哲朗 吉田 早希 川畑 哲郎 高野 文英 太田 富久
出版者
The Japanese Society for Complementary and Alternative Medicine
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-7, 2018-03-31 (Released:2018-04-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

On the study of polyphenols from Fragaria ananassa fruit, we reported that some polyphenols showed inhibition of metabolic enzyme, cytochrome P450. Continuous study of health effects of F. ananassa fruit, we isolated a new quercetin glycoside, flagarin, quercetin-3-O- β-glucuronyl- (2→1)- β-D-xyloside along with ten known compounds. Those compounds showed inhibitory activity of fat accumulation in rat white adipocyte. Among the isolated compounds, strictinin and the new compound, flagarin showed high inhibitory activity of fat accumulation in rat white adipocyte.
著者
高野 文英 桜田 誓
出版者
日本薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

防己はツヅラフジ科を基原とし、リウマチなどの痛みに有効性を示すが、その作用機序は未解明である。防己黄耆湯およびこれに含まれるシノメニンは、熱刺激や化学刺激による痛みに鎮痛作用を示すとともに坐骨神経を結紮した臨床に近い痛みに対しても効果があった。シノメニンは麻薬性鎮痛薬のモルヒネに構造が類似するが、痛みを抑える機序はモルヒネとは異なることも分かった。さらに詳細な検討を加えた結果、炎症性を抑えるメカニズムが関与している一部に関与している可能性が考えられた。防己黄耆湯および主成分のシノメニンは、麻薬性鎮痛薬とは異なるタイプの痛み止めになり、慢性的な痛みに対して有効である可能性が考えられた。
著者
高野 文英 太田 富久 石垣 靖人 矢萩 信夫
出版者
日本薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究代表者は研究機期間内に、冬虫夏草属菌が産生する消化管免疫調節物質の構成成分を明らかにする研究を行った。その結果、ハナサナギタケ培養物に強い免疫調節活性があり、精製の結果、糖タンパクであることが判明し、詳細な解析の結果、ペプチドは8種類のアミノ酸、糖はβ(1→3)グルカンから構成されることが分かった。さらに詳細な構造解析の結果、免疫賦活化高分子は多糖とペプチドの混合物であった。また、冬虫夏草属菌を用いた機能性食品等に配合されるプロアントシアニジンやニンニクについても経口免疫アジュバント活性を調べたところ、強い活性を示すことを明らかにすることができた。