著者
諸井 陽子 小林 元 菅原 亜紀子 石川 和信
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.401-404, 2020-08-25 (Released:2021-03-15)
参考文献数
9

背景 : ソーシャルメディアの汎用化に伴い, 倫理・プロフェショナリズムに関わる問題が出現している. 目的 : 医療系学生や医療専門職に対するソーシャルメディア利用の教育や研修に用いるチェクリストを開発する. 方法 : わが国の事例を分析・区分化し, 事例に基づいたチェックリストを作成する. 結果 : モラルハザード事例は3区分に分けられ, 10項目からなるソーシャルメディア利用のチェックリストを作成した. 考察 : ソーシャルメディアが日常生活に深く関わってきている現在, そこで展開・交換される内容について, 医療系学生・医療専門職の誰もがモラルハザードに陥る可能性がある. 事例を踏まえた教育ツールを開発した.
著者
石川 和信
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.84-87, 2013 (Released:2013-08-06)
参考文献数
4
被引用文献数
2 7

東日本大震災に引き続いた東電福島第一原発事故から1年を経た.現在も15万人を超える福島県民が県内外への広域避難を余儀なくされている.多くが仮設住宅・借り上げアパートに家族が分かれて転居せざるを得なかった結果,高齢者を支える健常な家族関係やコミュニティーの機能が大きく低下している.長期の度重なる避難の影響もあり,東日本大震災による震災関連死は既に1,300人超となり(2012.3現在),既に阪神大震災のそれを超えた.体力の低下した高齢者の誤嚥性肺炎,突然死を含む心血管疾患,自殺がその上位を占めている. 一方,低線量被曝による安全性への懸念から福島県内の幼児の外遊び時間は平均13分と極端に減少し,3世代同居の多い東北地方の高齢者が戸外で孫達と遊ぶ楽しみも奪われている.見えざる放射能を恐れる心理は高齢者にも認められ,健康のために継続してきた散歩や運動を敬遠する状況が生まれている.また,コメ・畑作りの多くを担い,農業を生業としてきた高齢者も農作物の安全基準への対応の困難さ・風評被害・豊穣感の喪失から耕作をついに放棄する方が増えている.酪農による堆肥の汚染,里山からの山菜・きのこの収穫禁止など,多くの地の恵みが汚染物とされ,中山間地のリサイクルも破壊されている.里山の利を活かしてきた高齢者ほど,地域の喪失感に耐えて居られるように映る. 原発避難の町村が復興のために実施しているアンケート調査では高齢者ほど望郷の思いが強く早期帰還の希望が強い.一方,商工業,医療機関,介護施設を担う若年層の帰還への懸念・不安は強く,複雑な要因が絡まっている.各世代のライフステージの差異が原発事故への対応に異なる態度を生じている.
著者
三枝 令子 丸山 岳彦 松下 達彦 品川 なぎさ 稲田 朋晃 山元 一晃 石川 和信 小林 元 遠藤 織枝 庵 功雄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.33-47, 2020-08-25 (Released:2022-08-26)
参考文献数
16

執筆者らは,日本で医学教育を受け,最終的に日本の医師国家試験合格を目指す外国人学習者に効果的な支援を行うことを目的として,医学用語の調査研究並びに教材作成を進めている。一口に医学用語といっても,その範囲は多岐にわたるため,医学用語の効率的な学習を目指すならば,まず医学用語の網羅的な収集と体系的な分類が必要になる。そこで本研究では,医学用語の体系的な語彙リストを作成する準備段階として,医学書のテキストから医学書コーパスを構築し,27種類の診療分野に分けて,そこに含まれる語を収集・分類した。その上で,高頻度の助詞,接辞,動詞や,領域特徴度の高い名詞について,医学テキスト固有の特徴という観点から分析を行った。その結果,接辞や動詞において医学分野特有の語がみられた。また,名詞に関しては診療分野ごとに頻出語が異なることから,診療分野別に語彙リストを構築することが重要であることがわかった。
著者
石川 和信 首藤 太一 小松 弘幸 諸井 陽子 阿部 恵子 吉田 素文 藤崎 和彦 羽野 卓三 廣橋 一裕
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.259-271, 2015-06-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
5

シミュレーション教育への理解と普及をはかり, 医学生の臨床能力の客観的評価システムを全国の医学部教員が連携して確立することを目的として, 第46回日本医学教育学会大会の開催翌日に, 医学生イベントとして, シムリンピック2014を開催した. 全国公募した12チーム36名の医学部5, 6年生が参加し, シミュレータや模擬患者を活用した6つのステーション課題に挑戦した. 各課題の構成, 難易度, 妥当性を臨床研修医の協力で検証し, 実行委員会でブラッシュアップした. 企画の構想, 実行委員会組織, 開催準備, 当日の概要, 参加者アンケート結果に考察を加えて報告する.
著者
石川 和信
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.489-493, 2011 (Released:2012-02-09)
被引用文献数
3 3

福島の大震災の特異性は,壊滅的な地震や津波による浜通りの市町村へのダメージに加えて,危険度とその範囲が判然としないままに避難や生活の糧を破棄するよう指示が追加されていった広域な放射線汚染,被曝への恐怖から惹起されたであろう国内外からの被災地・福島を回避する心理が膨らませた経済的損失や精神的重圧にあるように思う. 小雪の舞う早春に突然起こった未曾有の体験に対して,地方行政,地域の医療機関は懸命な対応を続けた.急性期には水道,電気,ガス,通信,移動手段(ガソリン)が整っていることが職務の前提であったことを痛感した.DMAT,被曝医療チームが地域の医療チームに加わり活動した.深刻化していく原発復旧作業の中,県内避難所2万5千人への巡回,20~30 kmの屋内退避地域の在宅患者への支援などを行った. 専門職には想定外などあり得ないこと,日々の有機的な組織・人と人との連携が変化への対応力となること,分かりやすい説明能力が安心感を生むことを皆が学んだように思う.医療と原子力事業の根幹に横たわる安全管理には共通する要素が多い.プロフェッショナルとしての使命の省察が個人・組織のレベルで予断なくなされてきたか,厳しく点検されることは,長年に及ぶ放射線汚染という重荷を背負いながら生きていかなければならない被災地域への大きな責務であるように思う.