著者
平 葉子 藤崎 和彦 今中 孝信
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.443-447, 2002-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

天理よろづ相談所病院において初期研修病棟である総合病棟では, 日常の患者ケアの過程で初期研修医と看護師との間に衝突が起こりやすいという問題があった.この原因を明らかにするために, 卒後2年目の研修医12名にインタビューを行うとともに, 参加観察を並行して行った.これらのデータを含めて分析した結果, 衝突が生じやすい要因として以下の3つが分かった. 1) 研修医, 看護師ともに経験が浅いと, 自分の仕事に手一杯で余裕がなく, 相手の状況の大変さを理解できない. 2) 看護師は, 研修医が能力不足のために判断できず迷うような状況においても, 早く決断することを迫る傾向がある. 3) 医師は正確な診断をつけることを優先するのに対し, 看護師は患者の安楽を優先しようとする.
著者
川上 ちひろ 西城 卓也 丹羽 雅之 鈴木 康之 藤崎 和彦
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.301-306, 2016-10-25 (Released:2017-08-10)
参考文献数
9

医療系専門職養成機関において教務事務職員が学生対応で難しいと感じる事例について調査した. 公私立大学医学部・歯学部教務事務職員研修に2013年度から2015年度に参加した教務事務職員143名から得た185事例を分析した.事例は, 学生に問題があるものが多くを占め136事例 (73.5%) であった一方で, システムや教員に問題があるものも含まれた. 医療系専門職養成機関において適切に難しい場面に対応するために, 教員, 事務職員の協働は欠かせないものである.
著者
伊野 陽子 上野 杏莉 舘 知也 大坪 愛実 勝野 隼人 杉田 郁人 兼松 勇汰 吉田 阿希 野口 義紘 堺 千紘 井口 和弘 川上 ちひろ 藤崎 和彦 寺町 ひとみ
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.533-551, 2017-10-10 (Released:2018-10-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

In recent years, multi-occupational collaboration aiming at patient-centered care is required to provide high-quality medical care. However, there are few studies on collaboration between hospitals or clinics and community pharmacies. In this study, we conducted a questionnaire survey to clarify the present conditions and awareness of hospitals or clinics in Gifu City regarding collaboration with community pharmacies. The following activities with community pharmacies were examined in the survey: “I. Participation in regional care meetings,” “II. Case discussion conferences,” “III. Workshops/study conferences,” “IV. Community service,” “V. Sharing information through medical cooperation network,” “VI. Accompanying community pharmacists at home medical care” and future plans for these items. The percentage of non-implementation was 80% or more in Items I, IV and IV in the hospital and 80% or more in items other than III in the clinics. The percentage of respondents who were not planning to implement Item VI was over 70% in the hospital, and the percentage of respondents who were not planning to implement Items I, IV, VI was over 70% in the clinic. In the comparison between the hospital and the clinic, the proportion of current collaboration is significantly higher for II and III in the hospital. For collaboration in the future, the proportion of respondents who were planning to implement these items other than VI was significantly higher in the hospital. Many hospitals and clinics currently do not collaborate with community pharmacies. And more hospitals are considering collaboration with community pharmacies than clinics.
著者
高野 裕佑 半谷 眞七子 立松 三千子 中村 千賀子 阿部 恵子 藤崎 和彦 亀井 浩行
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.12, pp.1387-1395, 2015 (Released:2015-12-01)
参考文献数
32
被引用文献数
4

We performed a survey of cancer patients' needs for drug treatment and support from pharmacists during treatment and evaluated the support that cancer patients can expect from community pharmacists in the future. The patients consisted of 16 members of the Cancer Patient Association in Aichi prefecture who underwent chemotherapy. The results of a semistructured group interview were qualitatively analyzed using the grounded theory method. Patients undergoing chemotherapy had high hopes for its effectiveness but were worried about side effects and medical costs. To overcome these problems, they hoped for a decrease in the economic burden, compassionate-use system, and development of novel drugs. The patients had anxiety because the side effects of chemotherapy often caused physical and psychological damage. Despite patients' confusion, pharmacists sometimes did not give adequate explanations to them. The patients expected more from pharmacists regarding medication support and hoped for a system allowing continuous side effect monitoring and consultation without hesitation. For patients undergoing cancer chemotherapy who are confused regarding side effects, pharmacists should understand the patient explanatory model and become more involved with patients as partners in treatment.
著者
川上 ちひろ 西城 卓也 藤崎 和彦 鈴木 康之
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.365-371, 2015-09-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
38
被引用文献数
1

背景 : 問題をもつ学習者の問題は体系的に示されてない. 教育者が, その問題を適切に理解するため, 問題をもつ学習者を表現する英語用語と定義を集約し, その問題を因子ごとに分類する.方法 : 系統的文献検索結果 : 用語にはdisability, learning disorders, at-risk, difficult, problem, struggle, underperform, unprofessional unsafe, gifted, outstandingが同定された. 問題因子は, 学習者の特性, 認知, 態度, 技術に大別された.考察 : この分類は教育者が問題を的確に理解する一助となる.
著者
樫田 美雄 岡田 光弘 五十嵐 素子 宮崎 彩子 出口 寛文 真鍋 陸太郎 藤崎 和彦 北村 隆憲 高山 智子 太田 能 玉置 俊晃 寺嶋 吉保 阿部 智恵子 島田 昭仁 小泉 秀樹
出版者
徳島大学
雑誌
大学教育研究ジャーナル (ISSN:18811256)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.93-104, 2008-03

ビデオエスノグラフィーは、当事者的知識を十分に摂取しながら行うビデオ分析であり、我々はこの方法で、高等教育改革の現場を研究した。生涯学習社会の到来を受けて、日本の高等教育は現在第2 次世界大戦直後以来の改革期にある。すなわち、「知識」より「生涯学習能力」の獲得を志向した、自発性を尊重するような様々な取り組みがなされ始めている。この高等教育の現場に対し、ワークプレース研究を行った。B大学工学部都市工学演習α班を分析対象とした調査の結果、①演習の課題解釈には「従来の指標の相対化の要求の程度」を巡って2つの解釈があり得たこと、②班内にはその2種類の解釈に対応した葛藤・対立的相互行為が存在したこと、③にもかかわらず、班内葛藤を生きる当事者がともに専門性(「都市工学」)を志向していたこと、④したがって、課題理解のいかんにかかわらず、班活動の全体が「都市工学演習」と呼び得るものになっていたこと、⑤その一方で、最終審査会場(ジュリー)ではこの2重性が十分レリバントなものとして浮かび上がって来ていなかったこと、これらのことがわかった。諸結果を総合すると、学生の自主的活動を尊重するタイプの、新しい学習方法の吟味・評価のためには、学生によるその方法の実践状況の分析が有意義であるだろうこと、また、それは、場合によっては教員の評価のパラダイムを変える力を持つだろうことなどが予測された。なお、本報告は、文科省科学研究費補助金「高等教育改革のコミュニケーション分析-現場における文化変容の質的検討-」(基盤研究(B)、 課題番号 18330105、研究代表者:樫田美雄)ほかによる研究成果の一部である。
著者
石川 和信 首藤 太一 小松 弘幸 諸井 陽子 阿部 恵子 吉田 素文 藤崎 和彦 羽野 卓三 廣橋 一裕
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.259-271, 2015-06-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
5

シミュレーション教育への理解と普及をはかり, 医学生の臨床能力の客観的評価システムを全国の医学部教員が連携して確立することを目的として, 第46回日本医学教育学会大会の開催翌日に, 医学生イベントとして, シムリンピック2014を開催した. 全国公募した12チーム36名の医学部5, 6年生が参加し, シミュレータや模擬患者を活用した6つのステーション課題に挑戦した. 各課題の構成, 難易度, 妥当性を臨床研修医の協力で検証し, 実行委員会でブラッシュアップした. 企画の構想, 実行委員会組織, 開催準備, 当日の概要, 参加者アンケート結果に考察を加えて報告する.
著者
樫田 美雄 寺嶋 吉保 玉置 俊晃 藤崎 和彦 出口 寛文 宮崎 彩子 高山 智子 太田 能 真鍋 陸太郎 五十嵐 素子 北村 隆憲 阿部 智恵子 岡田 光弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ビデオエスノグラフィーという新しい研究手法を開発しつつ、実際的な分析にも成果をあげた。即ち、大学生が専門技能を学ぶ実践の状況を相互行為の観点から明らかにした。例えば、医学部PBLチュートリアルにおいて、レントゲン写真をみる'専門的'方法としての「離して見る」という技法が、教師から学ばれ、学生集団のなかで模倣的に獲得されていく状況が確認できた。教育を結果から評価するのではなく、プロセスとして分析していくことへの展望が得られた。ISCAR第2回サンジエゴ大会等で報告を行った。
著者
藤崎 和彦
出版者
岐阜大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

異文化を背景に持つ外国人患者がわが国の医療現場でも増加してくる中で、日本人医師・医学生による診療現場での異文化コミュニケーションの医療人類学的視点からの現状把握や分析は殆んど行われていなかった。研究代表者は自らが10年来開発研究してきた模擬患者によるアプローチを使い、異文化を背景に持つ外国人患者と日本人医師・医学生の異文化コミュニケーションのありようと問題点を明らかにするために、医療人類学的視点から分析検討を行った。異文化を背景に持つ外国人(アジア系、ヨーロッパ系、中南米系の3グループ)を対象としたフォーカスグループインタビューを行い、患者-医師間の異文化コミュニケーションにおいて起こりやすいコミュニケーションギャップを抽出した。そこで抽出されたのは、1、システムの相違と医師の誠意の示し方の問題(「ここは小児を診ませんので他をあたってください」南米系女性ほか)、2、出産への認識の違い(「病気でもないのに出産後7日も何をしていればいいの?」南米系女性ほか)、3、民族的伝統治療法と生物医学治療のギャップの問題(「coca(コカインの原料)をください」南米系女性)、4、生物医学治療の土俗化と治療要求スタイルの相違の問題(「ステロイドの注射を打ってください」アジア系男性)、5、リスク・コミュニケーションのあり方の問題(「分かりきったことを言わないでください、分からないことを教えてください」複数より)6、保険システムの違い、経済負担、予防観の違い(「虫歯になっていないのに、何故治療をするの?」アジア系女性)、7、薬物療法のあり方の問題(「お弁当箱みたいに薬はいらない」南米系女性ほか)、8、医師-患者間の説明責任の問題(「先生は『はい、薬ね』と言ったきり、喉の組織を採取するわけでもありません」ヨーロッパ系アメリカ人女性ほか)、9、IT医療の問題(「ロボットに診てもらっているみたい」南米系女性ほか)これらに基づいて模擬患者用のシナリオを試験的に開発し、開発されたシナリオに基づき、模擬患者のトレーニングと養成を行い、模擬患者との医療面接セッションをビデオテープに記録し分析を行った。