著者
小池 拓矢 杉本 興運 太田 慧 池田 真利子 飯塚 遼 磯野 巧
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.125-139, 2018 (Released:2018-04-13)

本研究は,東京大都市圏における若者のアニメに関連した観光・レジャーの実態と空間的な特徴を明らかにすることを目的とした。Web上で実施したアンケートからは,単にアニメに関連した観光・レジャーといっても,その活動の種類によって参加頻度が大きくことなることや,日常的に顔を合わせる友人だけでなく,オンライン上で知り合った友人とも一緒に観光・レジャーを行う層が一定数いることが明らかになった。さらに,アンケートの結果をもとに,来訪されやすいアニメショップや印象に残りやすいアニメの聖地の空間的特徴を概観した。秋葉原や池袋などのアニメショップが集積する場所として有名な場所だけでなく,新宿にもその集積がみられた。また,都心部にもアニメの聖地が数多くみられ,多くの若者が訪れていることが明らかとなった。
著者
卯田 卓矢 磯野 巧
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-294, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
50

本稿は沖縄県の石垣島を対象に観光資源としての星空の構築プロセスを検討した。石垣島では近年,自治体の観光基本計画に基づいた星空ツーリズムの推進や「星空保護区」の暫定認定,また星空観望専門の観光事業者を含む関連ツアーの増加とツアー内容の多様化などにみられるように,星空の観光資源化が急速に進行した。この要因には以下の3点が関係していると考えられた。第一に石垣島の観光地的性格を基盤とした星空観望ツアー導入の容易さ,第二に南の島の星まつりの開催による星空の価値化とその共有,第三に自治体における星空を対象とした観光振興の取り組みである。また,石垣市による「星空保護区」の申請のような資源の新たな価値づけの作業は,観光資源の競合状況の中で地域を発展させる取り組みとして有用であった。以上の石垣島の動態は「夜間」のような新規性を有する対象の観光資源化を目指す地域において重要な視点になり得ると考えられる。
著者
太田 慧 杉本 興運 上原 明 池田 真利子 飯塚 遼 磯野 巧 小池 拓矢
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.165-179, 2018 (Released:2018-04-13)
被引用文献数
3

近年,日本におけるクルーズ需要は高まっており,都市におけるナイトクルーズも都市観光におけるナイトライフの充実を図るうえで重要な観光アトラクションとなっている。本研究は,東京におけるナイトクルーズの一つとして東京湾納涼船をとりあげ,東京湾納涼船の歴史と運航システムを整理し,東京湾納涼船の集客戦略と若者の利用特性を明らかにした。1990年代以降の東京湾納涼船の乗船客数の減少に対して,2000年以降に若者をターゲットとした集客戦略の転換が図られ,ゆかたを着た乗船客への割引や若者向けの船内コンテンツが導入された。その結果,2014年以降の年間乗船客数は14万人を超えるまでに増加した。乗船客へのアンケート調査の結果,東京湾納涼船は大学生を中心とした若者にとって金銭的にも心理的にも乗船する際の障壁が低いことが明らかになった。つまり,安価で手軽に利用できる東京湾納涼船は学生を含む若者にナイトクルーズ利用の機会を増やしている。
著者
池田 真利子 卯田 卓矢 磯野 巧 杉本 興運 太田 慧 小池 拓矢 飯塚 遼
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.149-164, 2018 (Released:2018-04-13)
被引用文献数
4

東京五輪の開催(2020)に始まる都市観光活性化の動きのなかで,東京のナイトライフ研究への注目が高まりつつある。本研究は,東京の夜間経済や夜間観光の発展可能性を視野に,東京における若者向けのナイトライフ観光の特性を,夜間音楽観光資源であるクラブ・ライブハウスに注目することにより明らかにした。まず,クラブ・ライブハウスの法律・統計上の定義と実態とを整理し,次に後者に則した数値を基に地理的分布を明らかにした。その結果,これら施設は渋谷区・新宿区・港区に集中しており,とりわけ訪日観光という点では渋谷区・港区でナイトライフツアーや関連サービス業の発現がみられることがわかった。また,風営法改正(2016 年6 月)をうけ業界再編成が見込まれるなかで,渋谷区ではナイトライフ観光振興への動きも確認された。こうしたナイトライフ観光は,東京五輪に向けてより活発化していく可能性もある。
著者
飯塚 遼 太田 慧 池田 真利子 小池 拓矢 磯野 巧 杉本 興運
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.140-148, 2018 (Released:2018-04-13)

近年の世界的なクラフトビールブームのなか,ビールの消費量が減少している日本においてもクラフトビールの人気が高まりをみせている。とくにクラフトビールをテーマとしたイベントは全国各地で開催されるようになり,単なるプロモーションだけではなく,地域活性化の手段としても注目され始めている。また,それらのイベントは,ビール離れが進行しているとされる若者をも集客しており,若者のイベントとしての様相もみせている。本研究は,イベントの集積がみられる東京都を対象として,クラフトビールイベントの展開と若者のクラフトビール消費行動の関係性についてフード・ツーリズムの観点から一考察を試みるものである。そこでは,クラフトビールイベントを通じた若者の消費行動による新たなクラフトビール文化が形成され,その文化を背景とするオルタナティブな都市型フード・ツーリズムの形態が存立していることが示唆された。
著者
太田 慧 杉本 興運 上原 明 池田 真利子 飯塚 遼 磯野 巧 小池 拓矢
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.165-179, 2018

近年,日本におけるクルーズ需要は高まっており,都市におけるナイトクルーズも都市観光におけるナイトライフの充実を図るうえで重要な観光アトラクションとなっている。本研究は,東京におけるナイトクルーズの一つとして東京湾納涼船をとりあげ,東京湾納涼船の歴史と運航システムを整理し,東京湾納涼船の集客戦略と若者の利用特性を明らかにした。1990年代以降の東京湾納涼船の乗船客数の減少に対して,2000年以降に若者をターゲットとした集客戦略の転換が図られ,ゆかたを着た乗船客への割引や若者向けの船内コンテンツが導入された。その結果,2014年以降の年間乗船客数は14万人を超えるまでに増加した。乗船客へのアンケート調査の結果,東京湾納涼船は大学生を中心とした若者にとって金銭的にも心理的にも乗船する際の障壁が低いことが明らかになった。つまり,安価で手軽に利用できる東京湾納涼船は学生を含む若者にナイトクルーズ利用の機会を増やしている。
著者
池田 真利子 卯田 卓矢 磯野 巧 杉本 興運 太田 慧 小池 拓矢 飯塚 遼
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.149-164, 2018

東京五輪の開催(2020)に始まる都市観光活性化の動きのなかで,東京のナイトライフ研究への注目が高まりつつある。本研究は,東京の夜間経済や夜間観光の発展可能性を視野に,東京における若者向けのナイトライフ観光の特性を,夜間音楽観光資源であるクラブ・ライブハウスに注目することにより明らかにした。まず,クラブ・ライブハウスの法律・統計上の定義と実態とを整理し,次に後者に則した数値を基に地理的分布を明らかにした。その結果,これら施設は渋谷区・新宿区・港区に集中しており,とりわけ訪日観光という点では渋谷区・港区でナイトライフツアーや関連サービス業の発現がみられることがわかった。また,風営法改正(2016 年6 月)をうけ業界再編成が見込まれるなかで,渋谷区ではナイトライフ観光振興への動きも確認された。こうしたナイトライフ観光は,東京五輪に向けてより活発化していく可能性もある。
著者
磯野 巧
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

本研究の目的は,オーストラリア・カナウィンカ地域において広域的に展開してきたジオパーク運動に地方自治体(LG)がどのように対応してきたのかを,観光地域としての特性を踏まえながら解明することである。カナウィンカ地域はオーストラリア大陸南東域のサウスオーストラリア州およびビクトリア州境に位置し,サウスオーストラリア州の3つのLG(マウントガンビア,グラント,ウォトルレンジ),ビクトリア州の4つのLG(グレネルグ,サザングランピアンズ,モイン,コランガマイト)が該当する。<br><br>オーストラリアでは,国内の地学協会や連邦政府によってジオサイトが大地の遺産として保全・評価の対象となっており,ジオツーリズムやジオパーク運動を実施するための基盤が早期より構築されてきた。2000年代になると,オーストラリア国内でジオパーク・プロジェクトが始動し,大陸南東域に位置するカナウィンカ地域に注目が集まった。カナウィンカ地域では火山景観を活かしたローカルスケールの観光振興が取り組まれており,1990年代以降,その取り組みは地域間連携によって広域的に展開するようになった。広域的観光振興の計画立案から着手までの経緯がスムーズであった背景には,全LGが観光地域としての条件不利性を共通の課題として認識していたことが指摘できる。2000年代には,カナウィンカ地域におけるジオパークの推進が正式に決定し,2008年に世界ジオパークネットワーク(GGN)に加盟するも,2013年の再審査時に連邦政府の判断によってGGNからの脱退が決定し,国内版ジオパークとして再編された。<br><br>カナウィンカ地域にはライムストーンコースト,グランピアンズ,グレートオーシャンロードの3つの観光地域に含まれる7つのLGから構成されており,これらのLGは各々の観光地域の特性を意識した観光戦略を策定してきた。こうした状況下においても,全LGはボランティア組織による広域的観光振興計画に理解を示し,ジオパーク運動に対する財政支援を行ってきた。しかし,ジオパーク運動の推進から十数年が経過し,カナウィンカ地域がGGN加盟から国内版ジオパークとして再編される過程の中で,ジオパーク運動に対するLGの対応に変化がみられるようになった。<br><br>カナウィンカ地域最大のLGであるマウントガンビアは,広域的観光振興の時代から積極的に活動に参与してきた。マウントガンビアには域内最大の観光資源のひとつであるBlue Lakeが存在し,ジオパーク運動の推進はマウントガンビアの観光振興に直結するため,国内版ジオパーク再編期以降もジオパーク運動に対する理解は深い。サザングランピアンズはグランピアンズに包含されるLGのひとつであるが,グランピアンズ国立公園への訪問に際しては,観光関連施設や都市機能が充実する北部域がそのゲートウェイとしての優位性を有しており,サザングランピアンズはグランピアンズ国立公園とは別の独自性のある観光戦略を策定する必要があった。そこで注目されたのがジオパーク運動であり,サザングランピアンズでは次席的な位置付けとしてジオパーク運動を観光戦略に組み込んでいる。サザングランピアンズはカナウィンカ地域において最大規模のインタープリテーション機能をもつ火山博物館を有しており,それを活用した周遊型観光地域の創出にも積極的な姿勢を見せている。一方で,グレートオーシャンロードの一部であるコランガマイトは,GGN時代まではジオパーク運動に対して積極的な姿勢であったものの,国内版ジオパークへの再編以降,LGによる支援は行っていない。その理由として,LGの逼迫した財政状況を受け,より経済効果の見込めるグレートオーシャンロードへと観光戦略を一本化したことが挙げられる。<br><br> 以上より,ジオパークに対するLGの対応は一定の地域差が認められ,それにはカナウィンカ地域がもつ「ジオパークとしてのステータス」が大きな影響を与えていると看取できる。
著者
磯野 巧 宮岡 邦任
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.233-245, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本稿では,三重大学教育学部の開設科目である地理学野外実習を事例として,当該科目に関わる具体的な授業実践の成果を報告し,地方国立大学の社会科教員養成課程における地理学的フィールドワーク教育の課題と改善点を検討した.その結果,地理学野外実習に対する限定的な学生参加,実習科目の不足,自然地理学と人文地理学両分野の意思疎通強化,成果報告方法の体系化が課題として導出された.今後の改善点として,実習科目の強化,分野横断的な調査テーマの設定,講義科目の一部実習化を提案し,社会科教員養成課程に在籍するより多くの学生が地理学的フィールドワーク教育を享受できるようカリキュラムを見直した.