著者
辻本 直秀 阿部 浩明 大鹿糠 徹 神 将文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11443, (Released:2018-10-04)
参考文献数
14
被引用文献数
3

【目的】拡散テンソル画像所見で皮質脊髄路(以下,CST)が描出されず,一方で皮質網様体路(以下,CRT)の残存が確認された脳卒中重度片麻痺者の歩行再建に向けた理学療法経過について報告する。【対象】動静脈奇形破裂による脳出血発症から約1 ヵ月後に当院へ入院された10 歳代後半の男性であった。麻痺側立脚相における下肢支持性はきわめて乏しく歩行に全介助を要した。【方法】CST の損傷程度から運動機能の予後は不良であると予測されたが,CRT が残存しており,麻痺側下肢近位筋の回復を予測し,歩行再建できる可能性が高いと判断し,長下肢装具を使用した2 動作前型歩行練習を積極的に試みた。【結果】発症から約4 ヵ月後,遠位筋の回復は不良であったが近位筋優位の運動機能の回復が得られ歩行能力が改善した。【結論】重度片麻痺者の歩行練習に際し,CST の損傷の評価のみならずCRT の損傷も評価することでより効果的な治療が提供できる可能性がある。
著者
大鹿糠 徹 阿部 浩明 関 崇志 大橋 信義 辻本 直秀 神 将文
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.20-27, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
12
被引用文献数
13

【目的】脳卒中重度片麻痺者に対し,背屈遊動とした長下肢装具(KAFO)を用いた無杖での二動作前型歩行(以下,背屈遊動前型無杖歩行)を実施した際と,杖と背屈制限を設けたKAFOを用いた三動作揃え 型歩行(以下,背屈制限揃え型杖歩行)を実施した際の歩行中の麻痺側下肢筋活動の差異を明らかにする事を目的とした。 【対象および方法】対象は当院へ入院した脳卒中重度片麻痺者のうち,歩行練習実施に際してKAFOを必要とした患者15名である。測定条件は背屈遊動前型無杖歩行と背屈制限揃え型杖歩行の2条件とし,麻痺側 下肢筋活動の評価には表面筋電図を用いた。測定筋は麻痺側の大殿筋,大腿筋膜張筋,大腿直筋,半腱様筋,前脛骨筋,腓腹筋内側頭とし,麻痺側立脚期中の筋電図積分値を算出し,2条件で比較した。 【結果】背屈遊動前型無杖歩行時には背屈制限揃え型杖歩行時よりも麻痺側下肢筋活動が有意に増加した。 【考察】脳卒中重度片麻痺者の歩行練習において,背屈遊動前型無杖歩行は背屈制限揃え型杖歩行よりも麻痺側下肢筋活動を増加させることが期待できるものと思われる。
著者
阿部 浩明 辻本 直秀 大鹿 糠徹 関 崇志 駒木 絢可 大橋 信義 神 将文 高島 悠次 門脇 敬 大崎 恵美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-20, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
16
被引用文献数
9

これまでの脳卒中例に対する理学療法技術は十分な科学的効果検証を行われずに継承されてきたものが少なくなかったかもしれない。脳卒中例に対する理学療法は主観的な評価が中心であったり,経験のみに基づいて構築されたりしていくべきものではなく,有効と思われる治療は検証を経た上でその有効性を示していくべきであろう。 前号に引き続き,我々がこれまで取り組んできた急性期の脳卒中重度片麻痺例に対する歩行トレーニングの実際と装具に関わる臨床および学術活動について紹介する。
著者
阿部 浩明 大鹿 糠徹 辻本 直秀 関 崇志 駒木 絢可 大橋 信義 神 将文 高島 悠次 門脇 敬 大崎 恵美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.17-27, 2016 (Released:2016-04-21)
参考文献数
42
被引用文献数
11

これまでの脳卒中者に対する理学療法技術は十分な科学的効果検証を行われずに継承されてきたものが少なくなかったかもしれない。脳卒中者に対する理学療法の治療指針を示す脳卒中理学療法診療ガイドラインにはエビデンスに基づき推奨される治療が記載されている。しかし、実際の理学療法の臨床では多様な意見があり、必ずしもガイドラインが有効に用いられてはいない感がある。脳卒中の理学療法は主観的な評価が中心であったり、経験のみに基づいて構築されたりしていくべきものではなく、有効と思われる治療は検証を経た上でその有効性を示していくべきであろう。 ここでは我々がこれまで取り組んできた急性期の脳卒中重度片麻痺例に対する歩行トレーニングの実際について概説し、装具に関わる臨床および学術活動について次号に渡って紹介したい。
著者
大橋 信義 阿部 浩明 関 崇志 大鹿糠 徹 辻本 直秀 神 将文
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.27-34, 2018 (Released:2018-04-06)
参考文献数
16

本研究の目的は,脳卒中片麻痺者の麻痺側肩関節の亜脱臼を防止する上肢懸垂用肩関節装具の装着が,脳卒中片麻痺者の麻痺側遊脚期の歩容にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである。対象は,上肢のBrunnstrom Recovery StageがⅢ以下の脳卒中片麻痺者で遠位見守りにて歩行可能な7例を対象とした。方法は,快適歩行速度にて約9 mの直線歩行路を,上肢懸垂用肩関節装具非装着,装着時の順にそれぞれ4回歩行した。両側の肩峰,上前腸骨棘より3横指内側部,外果に付着させた反射マーカーの位置変化を三次元動作解析装置にて記録し,比較した。結果,上肢懸垂用肩関節装具装着時は,非装着時と比較して麻痺側下肢遊脚期中の麻痺側上前腸骨棘高の最大値が増大した。上肢懸垂用肩関節装具の装着は,重度片麻痺者の肩関節の二次的損傷の予防のみならず,麻痺側遊脚期に麻痺側骨盤を挙上させる効果が期待できる。
著者
小関 忠樹 関口 航 押野 真央 竹村 直 齋藤 佑規 吉田 海斗 工藤 大輔 髙野 圭太 神 将文 仁藤 充洋 田辺 茂雄 山口 智史
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.55-64, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
39

体表から脊髄を刺激する経皮的脊髄直流電気刺激(tsDCS)と神経筋電気刺激(NMES)の同時刺激は,中枢神経系を賦活することで,脳卒中後の歩行能力を改善する可能性があるが,その効果は不明である.本研究では,同時刺激が健常成人の皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響(実験1)と脳卒中患者の歩行能力に与える影響(実験2)を検討した.実験1では,健常者12名に対して,同時刺激条件,tsDCS条件,NMES条件を,3日以上間隔を空けて20分間実施した.介入前後で前脛骨筋の皮質脊髄路興奮性変化を評価した.実験2では,脳卒中患者2名にNMES単独条件と同時刺激条件の2条件を3日ずつ交互に繰り返し,計18日間実施した.結果,実験1では,同時刺激条件で介入後15分,60分の時点で有意に皮質脊髄路興奮性が増大した(p<0.05).実験2では,同時刺激は歩行速度と歩数を改善しなかった.tsDCSとNMESの同時刺激は,健常者の皮質脊髄路興奮性を増大するが,脳卒中患者の歩行能力に対する効果はさらに検討が必要である.