著者
神林 博史
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.452-467, 2005-09-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

調査票調査では, 広い意味での政治的態度に関する質問において「わからない」 (don't know=DK) という回答が発生しやすいことが知られている.DK回答は通常の場合, 欠損値として処理され, 分析の対象とはならない.一方で, 政冶意識におけるDK回答は回答者の政治に対する消極性を示す重要な情報であるとの可能性が指摘されてきた.この見解が正しければ, DK回答と実際の政治的行動との間に関連が予想される.全国規模のパネル調査データを用いた分析の結果, DK回答の多い回答者は政冶行動に参加しない傾向があることが明らかになった.
著者
神林 博史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.11-36, 2018-03-28 (Released:2021-12-01)
参考文献数
33

本研究の目的は、現代日本における地位不安、すなわち社会経済的地位についての不安の特徴を計量的に明らかにすることである。地位不安は、不平等が人びとの健康や問題行動に影響する際の媒介変数として社会疫学で近年注目されており、社会学的な応用の価値が高いと考えられる。しかし、地位不安がどのような性質を有しているかについて、日本での実証研究の蓄積は乏しい。本稿では一九九五年と二〇一五年に実施された全国規模の社会調査データを用いて地位不安(地位競争不安、地位喪失不安、現状維持指向)と社会経済的地位の関係を分析した。分析の結果、(一)地位不安の分布は二十年間で大きく変化していない、(二)地位不安と社会経済的地位の関連は総じて弱い、(三)地位不安と社会経済的地位の関連も二十年間で大きく変化していない、の三点が明らかになった。これらの結果は、二〇〇〇年代後半以降の格差・不平等問題への社会的関心の高まりを考えると予想外であり、社会経済的地位と地位不安を結びつけるメカニズムをより詳しく検討することが必要である。
著者
神林 博史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.68, pp.147-168, 2000
被引用文献数
5
著者
原 純輔 秋永 雄一 片瀬 一男 木村 邦博 神林 博史
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

これまでの研究の過程で、社会調査データアーカイブに関する整備体制と利用実態の国際比較を通して、わが国の現状を検討するという課題が、浮上してきた。そこで、世界最初の国勢調査実施国であり、データの整備と公開が進んでいるアイスランド国立大学およびアイスランド国立博物館における聴取調査を実施した(秋永雄一・原純輔)。また、昨年度に引き続き、社会調査データアーカイブについてのケルン大学社会調査データ・アーカイヴ、マンハイム社会科学方法論研究所での再調査(木村邦博・秋永雄一)を実施するとともに、ケルン大学におけるセミナーに参加した。この結果についても研究会で検討を行った。その結果、「公共財」としての社会調査データという理念が、両国に共通に存在しており、わが国との大きな違いとなっていることが明らかになった。また、過去2年間の実績をふまえて、SSM調査(報告者・片瀬一男。以下同様)、国民性調査(海野道郎)、生活時間調査(三矢恵子)、青少年の性行動全国調査(原純輔)、宮城県高校生調査(神林博史)に対象を絞り、調査の概要・成果に加えて、とくにデータの保存およびデータの公開・利用可能性に焦点をあてながら研究会における再検討を行った。その結果、企画者側の調査データの公開に関する姿勢は多様であるが、とりわけ社会的評価の高い調査では、データのとりかたに独特の工夫がされていることが多く、他の研究者がそれを利用することには相当の困難が伴うことを、具体的に明らかにした。以上の成果は、現在報告論文集としてとりまとめ中である。