著者
福井 健策
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.661-668, 2014-01-01 (Released:2014-01-01)
参考文献数
1
被引用文献数
1

日本が今,貴重な予算をかけても早急に整備すべきインフラは「知のインフラ」である。欧米がその整備にしのぎを削る文化資料の巨大デジタルアーカイブについては,わが国でも価値ある活動は少なくないが,その多くは「ヒト・カネ・著作権」というべき課題にあえいでいる。特に大量の文化資料をデジタル公開しようとすれば権利処理の手間は膨大となり,わけても,探しても権利者が見つからない「孤児作品」の問題は深刻で,欧米でも対策が進む。わが国でも権利処理を推進するために,(1)権利情報データベースの整備,(2)パブリックライセンスの普及,(3)孤児作品対策を含むアーカイブ法制の立案,などの対策を早急に進めるべきである。
著者
福井 健策
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.75-88, 2016-05-01 (Released:2016-05-01)

2015年の旧五輪エンブレム論争を振り返り,ポイントとなった「著作権侵害成立の条件」「著作物とは何か」「自由に使える情報とは何か」などを,実際の判例をまじえながらわかりやすく解説する。さらに旧五輪エンブレム論争でWeb世論が短期間で炎上した理由をさぐり,日本の知的財産権の現状と今後の課題を,TPPを含め浮き彫りにする。本稿は2015年12月10日に科学技術振興機構東京本部で開催された第12回情報プロフェッショナルシンポジウムの特別講演を,編集事務局で編集したものである。
著者
福井 健策
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.252-253, 2021-10-01 (Released:2021-11-15)
参考文献数
1
著者
福井 健策
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.131-144, 2021-11-30 (Released:2021-12-10)

故人を人工知能(AI)やヒト型ロボット(アンドロイド)技術で蘇らせようという試みが止まらない。古くはバッハ風の曲を自動作曲した1980年代のプログラム「エミー」から、レンブラント、手塚治虫、ビートルズのAI、更にアンドロイドや3D映像で蘇った夏目漱石、美空ひばりまで。こうした故人の再生は、あるいは仏壇や遺影の姿を変え、あるいはスター達やカリスマ的な経営者・指導者の「バーチャル延命」など、単なるビジネスチャンスを超えて、我々の生活や死生観をも変えて行く潜在力を有している。法的には、こうした「故人の再生」はそのタイプによって肖像権、パブリシティ権、著作権などの処理を必要とする。現在の法ルールや通説に従えば、ある程度までの再生は権利処理不要でおこなえると解釈できそうだが、現実には少なくとも遺族の同意のもとに進められるケースが大半だろう。しかし、例えばAI美空ひばりが「冒涜だ」といった批判を招くなど、(遺族の了承の有無に関わらず)人々は故人の再生に、倫理的・感情的な違和感を抱くことも少なくない。それは通常のアンドロイドでも見られる「不気味の谷」の問題を超えて(あるいは根本において同じ原因を抱えつつ)、恐らく「死者をよみがえらせる」という行為そのものの突きつける重大な問いかけであろう。では、故人の再生はどのような準則に従って行われるべきか。世界的なAI・ロボット開発をめぐる議論の中で取り上げられることは少ないが、もうその議論を始めるべき時が来ているように思われる。
著者
福井 健策
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.661-668, 2014
被引用文献数
1

日本が今,貴重な予算をかけても早急に整備すべきインフラは「知のインフラ」である。欧米がその整備にしのぎを削る文化資料の巨大デジタルアーカイブについては,わが国でも価値ある活動は少なくないが,その多くは「ヒト・カネ・著作権」というべき課題にあえいでいる。特に大量の文化資料をデジタル公開しようとすれば権利処理の手間は膨大となり,わけても,探しても権利者が見つからない「孤児作品」の問題は深刻で,欧米でも対策が進む。わが国でも権利処理を推進するために,(1)権利情報データベースの整備,(2)パブリックライセンスの普及,(3)孤児作品対策を含むアーカイブ法制の立案,などの対策を早急に進めるべきである。
著者
福井 健策 田島 佑規
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.28-31, 2023-02-01 (Released:2023-03-28)
参考文献数
5

劇作家、演出家、舞台美術・衣装・照明・音響スタッフ、音楽家、振付家、俳優(実演家)など実に多くの者が制作に関与する舞台芸術公演の収録・アーカイブ・利活用においては、その権利関係を整理することは欠かせない。ここではEPAD事業や実務の経験を踏まえ、観客が劇場で体験した「なま」の公演そのものを保存することはできないという特徴を有する舞台芸術のアーカイヴィングにとって、最も重要な資料の一つと考えられる公演映像の保存・利活用のための権利処理を念頭におき、「権利の固まり」ともいえる公演映像に特有の権利の壁と、それを乗り越える上で有益と思われる視点を示したい。
著者
中山 信弘 田中 辰雄 藤本 由香里 白田 秀彰 大野 幸夫 今村 哲也 金子 敏哉 蘆立 順美 潮海 久雄 横山 久芳 前田 健 上野 達弘 島並 良 寺本 振透 小島 立 福井 健策 野口 裕子 三村 量一 桶田 大介
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

創作・流通・利用をめぐる環境の変化に対して現行著作権法の規定は、著作物に関わる多種多様な利害を適切に調整するためには硬直的に過ぎるとの視点にたち、著作権・著作者人格権の内容と制限に係る解釈論・立法論上の提言と、制度設計の基礎となるべき実証的・理論的な分析手法を提示した(これらの成果を論文集『しなやかな著作権制度に向けて」として刊行する予定である)。また出版者の権利のあり方に関する政策提言、著作権と刑事罰の運用に関する共同声明、シンポジウムの開催等、社会に対する情報発信・提言を積極的に行った。
著者
福井 健策 唐津 真美
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.39-48, 1999

筆者らは、97年、芸術団体98団体を対象に、各団体の会員に対するリーガルエイド (法律扶助) の実態調査を実施した。本稿の前半では、上記実態調査の結果を題材に、果たして日本において芸術家の法的ニーズは充分に充たされているか, 芸団協による最近の調査結果や法社会学分野における議論の状況を参考に検討を加える。本稿の後半では、仮に日本において芸術家の法的ニーズが充足されていないとした場合、芸術家に対するリーガルエイドの充実に向けて具体的な改善案を提示することを試みる。