著者
五郎丸 剛 佐々木 智也 藤井 利加 一木 孝治 高橋 浩二郎 福長 将仁 江藤 精二
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.59-63, 2008 (Released:2009-09-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

Antibiotic-resistant lactic acid bacteria (RLAB) and clostridium butyricum (CB) preparations are often used to improve symptoms resulting from antibiotic-induced changes in intestinal flora.However,though the resistance of these preparations to fluoroquinolones (FQs) has not been sufficiently studied,they are sometimes prescribed in combination with FQs under off-label use.The reason for this is thought to be that all RLAB and CB preparations are considered to be resistant to all antibiotic agents.In this study,we determined the minimal inhibitory concentrations of FQs with respect to strains isolated from five RLAB and one CB preparation using the microdilution method.Furthermore,the susceptibility to FQs of the strains isolated from the RLAB preparations was compared with that of strains isolated from conventional lactic acid preparations.The strains from most of the RLAB preparations and that from the CB preparation were found to be susceptible to FQs.There was also no difference in bacterial resistance between the RLAB and conventional lactic acid preparations.The concurrent use of RLAB and FQs under off-label use should therefore be avoided.
著者
福長 将仁 田淵 紀彦
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.343-353, 2010 (Released:2010-08-27)
参考文献数
84

ライム病(Lyme disease)は,野ネズミやシカ,野鳥などを保菌動物とし,マダニによって媒介されるスピロヘータの一種,ボレリアBorrelia感染によって引き起こされる人獣共通感染症のひとつである。一方,回帰熱(relapsing fever)は,齧歯類や鳥類等を保菌動物とし,ヒメダニ科のダニやシラミによって媒介されるボレリア感染症で,アメリカ大陸,アフリカ,中東や欧州で患者の発生が報告されている。近年のボレリア研究の進展はめざましく,特にライム病ボレリアでは遺伝子組換え用ベクターが開発されたことから遺伝子欠損株が作成されて,ボレリアライフサイクル中における特異的発現タンパク質の機能解析が可能となってきた。現在ではボレリアの宿主への感染成立のためのボレリアタンパク質―宿主側結合因子や媒介ベクターへのボレリア定着因子など,ボレリアと宿主,ボレリアと媒介ダニのインターフェイスにおける発現タンパク質の同定に注目が集まっている。
著者
福長 将仁 高橋 幸江
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

地理的隔離により生物が適応進化することが知られている。本研究ではライム病ボレリアと媒介マダニが隔離状態において共進化していることを明らかにした。すなわち、北海道と長野の2地点で捕獲したマダニについてリボソームRNA遺伝子間配列(ITS2)領域とミトコンドリアリボソームRNA遺伝子塩基配列を比較、寄生ボレリアでは鞭毛蛋白遺伝子ならびに菌体表層蛋白遺伝子の塩基配列をそれぞれ比較して、2地点間における両生物種の遺伝的変化について定量的に検討した。その結果、ボレリアの鞭毛蛋白遺伝子ならびに菌体表層蛋白遺伝子の塩基配列についてそれぞれ両地域に特徴的な遺伝グループが認められ、あわせて媒介マダニのミトコンドリア遺伝子についても地域特異的な遺伝グループが存在し、両生物がそれぞれの地域に適応進化していることが裏付けられた。さらに遺伝子の変異率は、マダニのそれに比較してボレリア細菌で高く、高い変異率を持つボレリア細菌がマダニの変異進化に適応しながら変化していることが推察された。ボレリア細菌はマダニの吸血行動にともなって小型脊椎動物とマダニ体内を行き来しながら生活する生物である。このうち小型脊椎動物は種類を問わず保菌動物となることが出来るので、ボレリアの感染はマダニの性質に深く関わっていると考えられ、ボレリアの生存はマダニへの適応が必須条件となる。本研究で明らかにした事実はボレリアが変異多様化することは、地理的隔離により地域に適応進化していくマダニに適応するためであることを証明している。
著者
後藤 智恵 染谷 孝 茅原 四郎 水口 康雄 福長 将仁
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.257-263, 1984-09-01
被引用文献数
1

アクリジン化合物の変異原性と化学構造の関係について細菌と酵母を用いて検討した. 用いた15種の誘導体のうち, ほとんどの化合物がサルモネラ菌にフレームシフトタイプの変異を起こした. 特に9位にアミン基を持つ化合物は活性が高く, 10位のメチル基は活性を強める作用を示した. 一方酵母ミトコンドリアに対する変異活性の誘起には, 3位, 6位のアミノ基, 10位のメチル基が必要であり, 細菌の場合と異なった結果が示された. また簡便法として行われるスポット法では変異活性を検出できない場合もあることが明らかになった.(1984年5月7日 受付)
著者
田淵 紀彦 村上 礼隆 福長 将仁
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.133, no.12, pp.1417-1423, 2013 (Released:2013-12-01)
参考文献数
20

Borrelia duttonii, a causative agent of relapsing fever, is transmitted between the distinct microenvironments of the vector tick, Ornithodoros moubata, and a mammalian host. We identified the total and membrane fraction proteins of B. duttonii strain Ly isolated from a patient in Tanzania by using two-dimensional gel electrophoresis with matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry (MALDI-TOF MS). The analyses of the total and membrane fractions from bacterial cultures incubated at 37°C identified 68 and 15 proteins, respectively. Since spirochaete clearance in mice is associated with an immunoglobulin M (IgM) and immunoglobulin G3 (IgG3)-mediated response, immunoblot analyses were used to identify the proteins reactive with IgM and IgG3 of gerbil serum against B. duttonii strain Ly. The outcome showed that six proteins (antigen p83/100, membrane-associated protein P66 (P66), flagellar filament outer layer protein, hypothetical protein BDU_412, vlp protein gamma subfamily (γ-Vlp) and flagellin (FlaB)) were identified against IgM, and four (antigen p83/100, P66, γ-Vlp and FlaB) of the six proteins also reacted with IgG3. It is believed that these proteins are immunodominant antigens for the host immune response. Some of these immunogenic proteins might be used as molecular diagnostic tools in the study of relapsing fever in Tanzania.
著者
福長 将仁 田淵 紀彦
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

動物ミトコンドリアゲノムは37 の遺伝子とひとつの制御領域から成っているものが多い。またこれらの遺伝子構成は比較的保存されていて大きな変化はない。しかしAcariformes に属するダニ類では遺伝子構成が再編されていることが我々の検索から明らかになったのでこの上目に属するダニ類を網羅的に検索、系統的関係を調べた。その結果この上目に分類されるダニ類においてミトコンドリアゲノムは独自の進化を遂げたことが推察された。
著者
福長 将仁 田淵 紀彦
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.343-353, 2010-12-24

ライム病(Lyme disease)は,野ネズミやシカ,野鳥などを保菌動物とし,マダニによって媒介されるスピロヘータの一種,ボレリア<i>Borrelia</i>感染によって引き起こされる人獣共通感染症のひとつである。一方,回帰熱(relapsing fever)は,齧歯類や鳥類等を保菌動物とし,ヒメダニ科のダニやシラミによって媒介されるボレリア感染症で,アメリカ大陸,アフリカ,中東や欧州で患者の発生が報告されている。近年のボレリア研究の進展はめざましく,特にライム病ボレリアでは遺伝子組換え用ベクターが開発されたことから遺伝子欠損株が作成されて,ボレリアライフサイクル中における特異的発現タンパク質の機能解析が可能となってきた。現在ではボレリアの宿主への感染成立のためのボレリアタンパク質―宿主側結合因子や媒介ベクターへのボレリア定着因子など,ボレリアと宿主,ボレリアと媒介ダニのインターフェイスにおける発現タンパク質の同定に注目が集まっている。<br>