著者
種田 明
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.117-124, 2009

本研究は2008年欧州文化首都リバプールを分析の対象にしている。中世の小さな漁村は、18世紀第一四半期から19世紀初頭まで「(いわゆる奴隷)三角貿易」の中心の港として繁栄した。奴隷貿易廃止(1807年)以後は、南北アメリカ・オーストラリアおよびその近隣やその他への海外移民の送出港として、ある研究者によると900万人(かそれ以上)のヨーロッパの人びとを見送ってきた。 こうした「負の遺産」にもかかわらず、2004年にはユネスコ世界遺産リストに登録され、2008年には欧州文化首都に選定されている。 (文化政策研究科長研究費08調査研究報告/種田担当分)
著者
種田 明
出版者
桃山学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

技術の制度化とは、本研究においては、技術の高等研究教育機関の発展・展開と、技術の「時代と社会」への浸透いいかえれば技術の社会的受容との、2つの側面をさしている。現代技術文明の核心は、生産する技術と廃棄物を処理する技術がバランスをとらなくてはならない(加藤尚武『技術と人間の倫理』)ところにある。機能や効率ばかりを重視していては、人間のための技術は生まれないし社会的にも受容されないであろう。19世紀末ドイツで、「制度化」してゆく大学「問題」は政治・経済・社会に大きな影響を与えた。大略にはイ)科学技術研究の装置・設備が巨大化し、それにともない研究組織も拡大し財政支出も巨額化していったことロ)科学技術の社会的受容、すなわち技術者の社会的地位の向上と市民の科学技術への期待の増大、が進捗したハ)技術の数量的確大、すなわち学生数・大学/企業研究所数の増加;政治・経済・社会との接点の増加(兵器、自動車、家電製品など);貿易・海外取引の多角化/国際化が加速したこと、を挙げることができよう。20世紀後半から世紀末の日本では、これら19世紀ドイツ・ヨーロッパそしてアメリカに基盤をもつ現状技術文明の負の側面と危機管理の脆さを露呈する事故が陸続している(高速増殖炉もんじゅ事故、阪神淡路大震災など)。一方で、19世紀末に技術者を含む全職業世界に「資格社会」の枠組みを成立させたドイツは、20世紀後半にはEU(欧州連合)の中のドイツを目指している。他方、日本は生産工場の海外移転を促進するのみで、未だアジアの中に技術文明の地歩を築きえないでいる。しかし日本にも、1995年11月「科学技術基本法」が成立した。技術文明はいまや、企業やエリート職業人技術者のみが担うものではなく、全世界の人びと・環境に関わるものとなっているのである。