著者
空閑 洋平 中村 遼
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.31-38, 2022-12-01

本論文では,東京大学で行われた Zoom 会議の計測データを用いて広域ネットワークの回線品質調査を行った結果について述べる.遠隔会議のサービス品質は,インターネットにおける回線の混雑具合や端末環境の影響を受ける.そのため遠隔会議ソフトウェアは,会議中常に遠隔会議サーバまでの回線品質を計測し,参加会議の動画や音声品質を調整している.東京大学で多く利用されている Zoom では,計測された回線品質をサーバに蓄積しており Zoom API で取得可能である.そこで本論文では,東京大学の構成員により行われる大量の Zoom 会議時の QoS データを用いて,広範囲にわたる時刻毎のインターネット回線品質の変動や ISP ごとの回線品質を調査した.その結果,利用者端末のネットワーク接続が有線の場合時間帯に関わらずジッターは一定であること,一方で 19 時頃から深夜に向かってパケットロス率が増加すること,またパケットロス率には利用者の AS によって違いがあることなどが明らかになった.
著者
塙 敏博 中村 遼 空閑 洋平 杉木 章義 田浦 健次朗
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2022-HPC-183, no.7, pp.1-9, 2022-03-10

mdx は,Society5.0 で目指しているデータの利活用に向けた高性能,柔軟かつセキュアなプラットフォームであり,全国 9 国立大学 2 国立研究所の共同運営による稼働を始めている.本稿では,マルチテナントに対応した仮想化プラットフォームである mdx の概要について紹介し,主に各種ストレージの基本性能について述べる.さらに,mdx におけるソフトウェア基盤整備として,仮想マシンテンプレートと構成管理ツール,Kubernetes によるコンテナ環境について述べる.
著者
徳差 雄太 松谷 健史 空閑 洋平 中村 修
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.1593-1603, 2015-08-15

遠隔地間におけるより複雑なインタラクションのために,低遅延な映像通信システムがますます求められている.一般的な民生用カメラではクロックを同期するためのクロック入力が利用できないため,送受信間で発生するクロックの誤差を吸収するバッファが必須となり,そのバッファリングによって通信遅延が増加していた.そこで,本論文では,民生用カメラおよびディスプレイを用いて,HD画質の非圧縮伝送を行うための低遅延映像通信システムを市販のFPGAボードを用いて設計実装した.送受信間の映像同期信号のジッタを最小限に抑えるための同期システムをFPGA上に実現し,受信側のバッファを最小限に抑えている.本映像通信システムの通信遅延とそのジッタを高輝度LEDと照度センサを用いて計測したところ,カメラとディスプレイを除くシステム間における遅延を1ms以内に抑えることができた.これは同期機構を用いない市販の映像通信システムにおける遅延のたかだか5%であり,この差は体感的にも有意である.
著者
松谷 健史 空閑 洋平 ロドニー バン ミーター 鈴木 茂哉 吉藤 英明 村井 純
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J96-B, no.10, pp.1095-1103, 2013-10-01

大規模データセンターにホストされているクラウドサービスの普及により,ネットワークに対する低遅延通信への要求が高まっている.しかし多くのIPパケット転送の実装は,複雑な経路選択が必要なグローバルインターネットの経路やAccess Control List (ACL)をサポートするために,転送遅延が大きい.本研究では全工程をパイプライン化し,パケットバッファを用いないIPパケット転送を提案する.本手法を市販のFPGAボードに実装したところ,41万経路のIPv4パケットの転送遅延が976nsで一定であることが確認された.これは市販のギガビットL3スイッチにて64バイトフレームを計測したときの20~25%に相当する.IPネットワークの転送遅延を削減することにより,クラウドやHPCなどのインターコネクトとしてIPプロトコルの適用範囲が広がることが期待できる.