著者
阿部 涼介 鈴木 茂哉
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2020-DPS-185, no.11, pp.1-8, 2020-12-14

Ethereumは,P2P ネットワーク上で改ざん困難な台帳を信頼する第三者なく形成するシステムであるブロックチェーン上でプログラムを実行できるプラットフォームである.Ethereum 上に構築されたアプリケーションの操作に要する時間は,そのアプリケーションが実用に耐えうるか判断するための重要な要素である.先行研究では,限られたネットワーク参加者を想定したブロックチェーン自体の性能を検証が行われているが,Ethereum のような開かれたネットワーク上での伝播遅延を考慮した検証,およびアプリケーションの実行時間の定式化には至っていない.本研究では,Ethereum の動作を精査し,その上に構築されるアプリケーションの実行に要する時間の定式化を試みる.定式化された実行時間を検証するために,遅延をエミュレーションしたプライベートなネットワーク,試験環境であるテストネットワーク上で実験を行った.実験の結果,一定以上の伝播遅延が発生する時に遅延以上のオーバヘッドが存在することが示唆された.本研究の成果を基にさらなる高精度な定式化を行うことで,Ethereum 上に構築されるアプリケーションの実行時間を想定し,実用に耐えうるか事前に検証可能となることが期待される.
著者
鈴木 茂哉 石原 知洋 ビルマニング 村井 純
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.385-402, 2012-01-15

携帯電話のような携帯デバイスは,インターネットへ接続する機能を持つが,デバイス間で直接通信するネットワーク機能をあわせて持つものもある.本論文ではデバイス間の直接通信によりその場で構成されるネットワーク部分をアドホックネットワークと呼ぶ.アドホックネットワークは,ファイル交換等に有用と考えられるが,アクセス制御のための認証操作が煩雑なため活用されていない.認証操作が煩雑なのは,アドホックネットワーク環境で相手を認証する際,信頼できる第三者を仮定できず,パス・キーの手入力等主たる通信路以外の通信路(アウトオブバンド通信)に頼る必要があるからである.本論文では,アドホックネットワークにおけるノード間認証方式として,アウトオブバンド通信に頼らない方式を提案する.提案方式では,本方式参加ノードそれぞれが,ノード自身の識別のために必要な公開鍵(NK)と公開鍵に至る信頼の連鎖(NKCT)を事前に用意する.検証者は,立証者と自身の持つNKCT双方を組み合わせることで,必要な信頼の連鎖を構成できる.信頼の連鎖の確保により,認証が可能となる.また,信頼の連鎖の確保にDNSSECリソースレコードを用い,運用性を高めた.本研究の評価では,検証ライブラリとともに,簡単なスマートフォンアプリケーションと,サーバ用認証モジュールを実装し,実験により本方式の効率性と有効性を示した.
著者
堀場 勝広 中村 遼 鈴木 茂哉 関谷 勇司 村井 純
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.923-944, 2018-10-15

Network Function Virtualization(NFV)を利用したサービスチェイニング(NFV-SC)は,ソフトウェアによる動的なネットワークの構成変更を可能とし,通信事業者の機器や運用のコストを低減することが期待されている.しかし,Interop Tokyo 2014 ShowNetにおいてNFV-SCを実装・運用した結果,Virtual Network Function(VNF)の連結によってパケット転送性能の低下が確認され,スケールアウトに課題が残った.そこで本研究では,スケールアウトとその前提となる相互接続性が実現可能なVNF 構成を検討し,その知見に基づき筆者らが提案しているNFV-SCの方式であるFlowFallを設計・実装するとともに,Interop Tokyo 2015 ShowNetにおいて,実際のネットワーク装置を利用してFlowFallを構築・運用し,商用ネットワークサービスとして20の出展者に対して3日間のNFV-SCを提供した.本稿は,これらの実践から得られたNFV-SCにおける相互接続性とスケールアウトの実現に必要な知見を述べる.
著者
松谷 健史 空閑 洋平 ロドニー バン ミーター 鈴木 茂哉 吉藤 英明 村井 純
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J96-B, no.10, pp.1095-1103, 2013-10-01

大規模データセンターにホストされているクラウドサービスの普及により,ネットワークに対する低遅延通信への要求が高まっている.しかし多くのIPパケット転送の実装は,複雑な経路選択が必要なグローバルインターネットの経路やAccess Control List (ACL)をサポートするために,転送遅延が大きい.本研究では全工程をパイプライン化し,パケットバッファを用いないIPパケット転送を提案する.本手法を市販のFPGAボードに実装したところ,41万経路のIPv4パケットの転送遅延が976nsで一定であることが確認された.これは市販のギガビットL3スイッチにて64バイトフレームを計測したときの20~25%に相当する.IPネットワークの転送遅延を削減することにより,クラウドやHPCなどのインターコネクトとしてIPプロトコルの適用範囲が広がることが期待できる.
著者
大野 浩之 鈴木 茂哉 福島 登志夫 松田 浩 久保 浩一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.195-196, 1993-09-27

複数の計算機が,ネットワークを介して情報を交換しあいながらなんらかの処理を行なう場合には,各計算機が正確な時刻情報を保持し同期していることが前提となることが多い.インターネット上でこの前提条件を完全に満たすのは困難であるが,時刻をよりよい精度で保時するための試みは以前からつづけられており,近年ではNTP(Network Time ProtocoI,RFC1305で規定)を用いた時刻同期が主流となりつつある.そこで,このNTPプロトコルを利用し,UTC(協定世界時)に同期した時刻情報をインターネットに供給することを目的として,セシウム原子時計を時刻源とする時刻情報供給システムを設計し実装した.本報告では,このシステム(NTP stratum 1サーバと呼ぶ)について述べる.