著者
酒井 麻紀子 窪田 由紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.236-251, 2019-12-30 (Released:2020-01-24)
参考文献数
40
被引用文献数
6

本研究の目的は,小学校教師の職場における援助要請を促進・抑制する要因を検討することである。本研究では,援助要請における個人の態度として「被援助志向性」,状況認知的要因として「自己による内的な帰属」と「他者による内的な帰属の予測」,環境要因として「協働的風土」に着目し,各変数が援助要請意図におよぼす効果について,問題(不登校・学業不振・学級経営)や援助者(同僚・管理職)の違いごとに検討した。小学校の通常学級担任176名を対象に場面想定法を用いた質問紙調査を行った。共分散構造分析の結果,全ての場面に共通するパスと,問題や援助者によって異なるパスの存在が明らかになった。そのうち,協働的風土が被援助志向性の「肯定的態度」を媒介して援助要請意図を促進するプロセスは,問題や援助者の違いにかかわらず,全ての場面で示された。この結果から,職場の協働的風土が,教師の援助要請を促進する重要な要因であることが示された。
著者
河合 直樹 窪田 由紀 河野 荘子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-12, 2016-09-27 (Released:2017-03-22)
参考文献数
34

社会的養護にある児童の高校進学率が年々高まっているなか,高校中退率を見てみると,一般家庭よりも社会的養護出身者のほうが高く,とりわけ,児童自立支援施設退所者に至っては,全国的に調査されたデータはなく,その要因についてほとんど研究がなされていない。そこで本研究では,児童自立支援施設退所後,高校進学した者の社会適応過程について,複線径路・等至性モデルを用いて質的に分析した。調査協力者4名へのインタビューから作成したTEM図をもとに分析を行った結果,高校を卒業した者と中退した者とでは,(1)高校へ入学した初期の段階で,部活へ入るなどの新しい活動の場=自分の居場所を見いだせること,(2)授業でわからないことがあったときに友人や教師に助けを求められること,(3)担任教師に対する信頼感があることが,高校を継続していくために重要な要因であることがわかった。
著者
三隅 二不二 杉万 俊夫 窪田 由紀 亀石 圭志
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-14, 1979
被引用文献数
1

本研究は, 企業組織体における中間管理者のリーダーシップ行動を実証的に検討し, その測定尺度を構成することを目的とするものである。<BR>フィールドは, 自動車部品の製造, 販売を主要な業務とする企業体であった。まず, 中間管理者 (部長, 工場長, 課長) に, 管理・監督行動に関する自由記述を求め, それを分類・整理しながら, リーダーシップ行動を測定するための質問項目を作成した。質問項目作成の過程で, 質問項目検討のための専門家会議を数回にわたってひらき, 中間管理者のリーダーシップ行動が質問項目として網羅的に含まれることを期した。最終的に, (1) 部 (次) 長・工場長用49項目, (2) 事務・技術系課長用92項目, (3) 工場課長用85項目の質問項目を作成した。リーダーシップ行動測定項目はすべて部下が上司のリーダーシップ行動を評価する, 部下評価の形式にした。これに, リーダーシップ測定項目の妥当性を吟味するための外的基準変数を測定する16項目を加えて質問票を印刷した、外的基準変数は, 仕事に対する意欲, 給与に対する満足度, 会社に対する満足度, チーム・ワーク, 集団会合, コミュニケーション, 精神衛生, 業績規範の8変数である。<BR>回答者数は, 部 (次) 長・工場長用533名, 事務・技術系課長用1, 040名, 工場課長用273名であった。リーダーシップ行動測定項目に関して因子分析を行なったが部 (次) 長・工場長, 事務・技術系課長, 工場課長, いずれの場合も, 「P行動の因子」と「M行動の因子」が見出された。<BR>次に, P行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 「P行動の因子」で. 60以上, かつ「M行動の因子」で. 40未満の因子負荷量を持つ項目のみを対象とする因子分析を行なった。その結果, (1) 部 (次) 長・工場長の場合は, 「計画性と計画遂行の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (2) 事務・技術系課長の場合は, 「計画性の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (3) 工場課長の場合は, 「計画性の因子」, 「内部調整の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」が見出された。<BR>M行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 同様の分析を行なつた。<BR>その結果, (1) 部 (次) 長の場合は, 「独善性の因子」 と「公平性の因子」, (2) 事務・技術系課長, 及び (3) 工場課長の場合は, 「独善性の因子」と「配慮の因子」が各々見出された。<BR>従来の研究との比較によって, 第一線監督者と中間管理者のリーダーシップ行動の差異が考察された。すなわち, 具体的な内容には若干の違いがあるものの, 「厳格性の因子」及び「計画性の因子」は第一線監督者と中間管理者に共通している。しかし, 部 (次) 長・工場長及び事務・技術系課長の場合に見出された「率先性の因子」と, 工場課長の場合に見出された「内部調整の因子」は, 第一線監督者を対象とした従来の研究では見出されてはおらず, 中間管理者に特有な因子であると考察された。<BR>P行動, M行動の因子得点を用いてリーダーをPM型P型, M型, pm型に類型化し, 8個の外的基準変数との関連においてリーダーシップPM類型の妥当性を検討したが, いずれの外的基準変数においても, PM型のリーダーの下で最も高い得点, pm型のリーダーの下で最も低い得点が見出され, PM類型の妥当性が実証された。このPM類型の効果性の順位は, 従来の研究における第一線監督者の場合と全く同様であった。<BR>また, P行動測定項目10項目, M行動測定項目10項目を選定した。10項目を単純加算して得られるP (M) 行動得点はP (M) 行動の因子得点と. 9以上の相関を示すこと, PM行動得点を用いてリーダーの類型化を行なった場合のPM類型と外的基準変数の関係が因子得点を用いて類型化を行なつた場合の関係と同じであったことからこれらPM行動測定項目の妥当性が明らかになった。