著者
星 あづさ 河野 荘子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.47-59, 2018-08-27 (Released:2018-09-19)
参考文献数
42
被引用文献数
1

性犯罪者について,母親との愛着形成の失敗が愛着スタイルに悪影響を与え,性犯罪に結びついていることから(Marshall, Hudson, & Hodkinson, 1993),性犯罪者と母親との関係について注目する必要がある。そこで,本研究では,わが国の性犯罪者の愛着スタイルについて,「現在の母親」との関連から検討することを目的とした。調査対象者は,刑務所で受刑中の男性1,226名(性犯群n=262,非性犯群n=964)であった。分析の結果,以下のことが示された。①性犯群と非性犯群において,現在の母親との関係性に差はなく,性犯罪者がほかの罪名犯と比して特別悪い母子関係にあるわけではない。②罪名によらず,現在の母親との信頼関係がネガティブであるほど,愛着スタイルが不全となる。③性犯群の方が非性犯群よりも,愛着スタイルが不安定(「見捨てられ不安」が高い)である。④罪名によらず,現在の母子関係がネガティブなほど,愛着スタイルは不安定になりやすい。
著者
山脇 望美 河野 荘子
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.99-109, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
43

In this study, we investigated the hypothesis that autistic traits associated with alexithymia, when related to aggressiveness, relate to aggressive behavior. For the purpose of this study, 208 students voluntarily participated in the experiment. Their autistic traits were measured using the Autism-Spectrum Quotient, their aggressiveness was examined using the Buss-Perry Aggression Questionnaire and the Implicit Association Test, and alexithymia traits were estimated using the 20-item Toronto Alexithymia Scale, while aggressive behavior was assessed using the Aggressive Behavior Scale and by measuring the intensity of unpleasant noise. The results revealed that all subscales of the autism traits have a positive relationship with the alexithymia traits. The results of covariance structure analysis revealed that participants’ difficulty performing attention switching and focusing on small details was related to aggressiveness and was thus positively related to aggressive behavior. In addition, poor communication was directly and positively related to aggressive behavior, while poor social skills were directly and negatively related to aggressive behavior. However, poor imagination did not relate to aggressiveness and aggressive behavior. The coefficient alpha of focusing on local details and poor imagination was low. The relation between autistic traits and aggressive behavior was then discussed.
著者
河野 荘子 岡本 英生
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-14, 2001 (Released:2018-09-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2

Gottfredson & Hirschiは,1990年に,「犯罪の基礎理論」において,自己統制という概念を提唱した.その後,多くの研究者が,犯罪行為と自己統制能力の低さとの関連性を実証してきたが,これらの研究に用いられている手法には,いくつかの問題点が指摘できる.そこで本研究では,それらの問題点をできるだけ解消するため,犯罪者を対象とし,犯罪進度や家庭環境といった,低自己統制が形成される客観的要因も含めた検討をおこなう.その結果,以下のことが指摘された.(1)20歳までの警察補導などの経験は,犯罪進度を示す重要な指標の1つとなりうる.(2)実父の欠損は,子どもが犯罪を行なうか否かに大きな影響を及ぼす.(3)一般的に不適切と思われる行動の多い親によって,不安定な家庭環境の中で育てられると,自己統制能力が低くなる可能性が強まる.
著者
河野 荘子 岡本 英生 近藤 淳哉
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-11, 2013-08-30 (Released:2017-05-22)
被引用文献数
4

本研究は,共感性を多次元的なものと定義し,犯罪者と一般青年との比較を通して,犯罪者の共感性の特徴について明らかにしようとするものである。その結果,犯罪者は,他者の不運な感情体験や苦しみに対して同情的で,何らかの配慮をすることに方向づけられやすい一方で,他者の立場にたって物事をとらえる視点が十分に高くない「アンバランスな共感性」を持つことが示された。また,この状態では,他者の苦しみによって,自分の苦しみが増大することを抑制する自己防御システムが働きにくくなることが推測された。
著者
白井 利明 岡本 英生 栃尾 順子 河野 荘子 近藤 淳哉 福田 研次 柏尾 眞津子 小玉 彰二
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. IV, 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.111-129, 2005-09-30

非行の原因に関する研究は多いが,立ち直りの研究は少ない。非行経験のある多数の少年は矯正機関とかかわることなしに立ち直っている。このことを考えると,社会内に立ち直りを促進する要因があると考えられる。本研究は,立ち直りには「援助者との出会い」が必要であり,出会いのためには少年の心理的な特性として「ひたむきに物事に取り組む力」と「抑うつに耐える力」の成熟が求められると考える。この仮説を実証するため,非行から立ち直った2名に対する面接調査を実施した。その結果,親との出会い直しが必要であるが,そのためには親以外の大人による援助が重要なきっかけとなっていることがわかった。また,「ひたむきに物事に取り組む力」と「抑うつに耐える力」は仮説を支持したが,どちらか一方でもよった。仮説は部分的に支持され,さらなる解明は今後の課題とされた。
著者
河合 直樹 窪田 由紀 河野 荘子
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-12, 2016-09-27 (Released:2017-03-22)
参考文献数
34

社会的養護にある児童の高校進学率が年々高まっているなか,高校中退率を見てみると,一般家庭よりも社会的養護出身者のほうが高く,とりわけ,児童自立支援施設退所者に至っては,全国的に調査されたデータはなく,その要因についてほとんど研究がなされていない。そこで本研究では,児童自立支援施設退所後,高校進学した者の社会適応過程について,複線径路・等至性モデルを用いて質的に分析した。調査協力者4名へのインタビューから作成したTEM図をもとに分析を行った結果,高校を卒業した者と中退した者とでは,(1)高校へ入学した初期の段階で,部活へ入るなどの新しい活動の場=自分の居場所を見いだせること,(2)授業でわからないことがあったときに友人や教師に助けを求められること,(3)担任教師に対する信頼感があることが,高校を継続していくために重要な要因であることがわかった。
著者
河野 荘子 岡本 英生 近藤 淳哉
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-11, 2013-08-30

本研究は,共感性を多次元的なものと定義し,犯罪者と一般青年との比較を通して,犯罪者の共感性の特徴について明らかにしようとするものである。その結果,犯罪者は,他者の不運な感情体験や苦しみに対して同情的で,何らかの配慮をすることに方向づけられやすい一方で,他者の立場にたって物事をとらえる視点が十分に高くない「アンバランスな共感性」を持つことが示された。また,この状態では,他者の苦しみによって,自分の苦しみが増大することを抑制する自己防御システムが働きにくくなることが推測された。
著者
河野 荘子
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成14年度は、非行少年の自己統制能力に関して、非行進度と家庭環境との関連性から検討し、学会で口頭発表をおこなった。本研究では、非行少年(少年鑑別所に入所中の男子少年、平均年齢16.4歳)の自己統制能力と、非行進度(過去の施設入所歴の有無・少年鑑別所への入所回数・非行の初発年齢の3つの下位分類からなる)、家庭環境(実父の有無・実母の有無の2つの下位分類からなる)の関連性を検討するため、共分散構造分析をおこなった。その結果、実父母と何らかの要因によって、生別もしくは死別し、家庭環境が不安定な状態になると、自己統制能力が低くなることが示された。家庭環境が不安定になると、しつけがおろそかになってしまいがちとなり、自己統制能力の低さに結びつくと解釈できた。しかし、自己統制能力の低さと非行進度との関係性は、意味のある結果を見出すことができなかった。こうなった要因の1つとして、少年鑑別所入所者は、受刑者よりも比較的犯罪傾向が進んでいないため、施設入所歴や少年鑑別所入所回数といった客観的指標のみでは非行進度が明確になりにくい可能性が考えられた。非行行動に関わる機会が多いなどの環境の問題も考慮に入れる必要があるかもしれない。上記の結果を、犯罪者の自己統制能力の構造と比較すると、どちらも、実父母の有無は、自己統制能力の形成に大きく影響を及ぼすことが指摘できた。ただ、犯罪者は実父の有無の影響をより大きく受けていることが示されていたが、非行少年に両親の間で影響の差は見られなかった。非行少年から犯罪者へと、反社会的傾向を強める者は、実父との関係に何らかのより大きな問題を抱えていることが推測された。