著者
竹中 彰治
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.361-370, 2016 (Released:2016-08-03)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では,セルフケアにおける洗口液の継続使用に影響する要因を探索するために,新潟大学医歯学総合病院・歯の診療室に歯周基本治療あるいはメインテナンスのために受診した68名の患者を対象として,機械的清掃器具の使用頻度,洗口液の使用経験および使用感に関する質問票調査を行った. 洗口液使用者には,使用理由,期待する性質および選定時に重要視する要素を調査した.使用感は,国内で市販されている四種類の洗口液[コンクールF®(CHG),リステリン®(LF),リステリン®ナチュラルケア(LN),薬用GUM®ナイトケアBF(CP)]の味,刺激,爽快感,効果の実感および全体的な印象について,二重盲検法(LF は単盲検法)により5段階評価を行う形式で調査し,それぞれの評価項目の相関分析を行った. 洗口液の使用経験者は37名(54.4%)であり,洗口液の常用者は18名(26.5%)であった.洗口液選定時に重要視する要素の順位付けには一致性があり,優れた殺菌力,爽快感および味が上位要素であった.使用感調査において,CPおよびCHGの全体的な印象は,LFおよびLNと比較して有意に評価が高かった.LFとLNはすべての評価項目において有意な差は認められなかった。相関分析において,味が最も全体的な印象と相関性が高かった. 洗口液に求められる性質として,殺菌効果だけでなく,継続使用のためには味や爽快感も重要な要素であることが示唆された.
著者
竹中 彰治 吉羽 邦彦 大島 勇人 興地 隆史
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

口腔バイオフィルムは他の生体バイオフィルムと違い、生体の切除を伴わず機械的に除去できるため、ブラッシングを主体とした機械的コントロールを原則としている。洗口液に代表される化学的コントロールは、清掃器具が届かない部位のバイオフィルムを殺菌するために有効な手段であるが、バイオフィルムは厚みの増加とともに、殺菌成分が浸透しにくくなっており短時間で有効な効果が得られにくい。本研究は、口腔健康維持のための簡便かつ効果的な新しいバイオフィルムコントロール法を開発するためにバイオフィルムの特性に注目した多方面アプローチを試みた。その結果、化学的コントロールが具備すべきいくつかの要件を見い出した。
著者
竹中 彰治 大島 勇人 寺尾 豊 小田 真隆
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、これまでの細菌を標的とした殺菌効果に頼ったバイオフィルム(BF)制御から、マトリックスを標的とした抗菌成分に頼らない新しい制御法への戦略の転換の必要性を提言するとともに、BFの剥離・分散効果に主眼を置いた新しいBF制御法を開発することであった。口腔内環境を再現した細菌培養システムと共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光イメージング法により、殺菌効果に頼ったBF制御の弊害を明らかにした。そして、新しいコンセプトに基づくバイオフィルム制御剤の開発を進めた結果、細菌増殖に影響を与えることなく、BFの分散・剥離効果ならびに付着抑制効果を有する機能性糖脂質を見出した。
著者
大墨 竜也 竹中 彰治 坂上 雄樹 若松 里佳 寺尾 豊 大島 勇人 興地 隆史
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.291-301, 2014

本研究では,リステリン<sup>®</sup>の刺激性や使用感の改善を意図して開発された新規アルコール非含有洗口液<sup>®</sup>ナチュラルケア;N 群)の <i>Streptococcus mutans</i> 人工バイオフィルムに対する浸透性と殺菌能を既存洗口液[Listerine<sup>® </sup>Zero(Z 群),リステリン<sup>®</sup>フレッシュミント(F 群)および 0.12%グルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液(CHG 群)]との比較により評価した。人工バイオフィルムはガラスベースディッシュ上で 24 時間嫌気培養することにより作製した。洗口液の浸透性は calcein-AM で染色したバイオフィルムの底面の蛍光消失を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に解析することにより評価した。殺菌能は 30 秒作用後の生菌数測定およびバイオフィルム底面の Live/Dead 染色像により評価した。その結果,各洗口液とも 50%蛍光消失時間はバイオフィルムの厚みと正の相関を示し,N 群の浸透速度はZおよびF群と同等かつ CHG 群より有意に高値であった。 生菌数はN,ZおよびF群は同等で共に CHG 群より有意に低値であった。また, Live/Dead 染色像はN,ZおよびF群とも 99%以上が propidium iodide (PI)陽性細菌であり陽性率は CHG 群より有意に高かった。以上の結果から,N 群の浸透性と殺菌能は,Z 群および F 群と同等かつ CHG 群より有意に優れていることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(3):291-301,2014
著者
大墨 竜也 竹中 彰治 坂上 雄樹 若松 里佳 寺尾 豊 大島 勇人 興地 隆史
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.291-301, 2014-09-19 (Released:2015-02-18)
参考文献数
49

本研究では,リステリン®の刺激性や使用感の改善を意図して開発された新規アルコール非含有洗口液®ナチュラルケア;N 群)の Streptococcus mutans 人工バイオフィルムに対する浸透性と殺菌能を既存洗口液[Listerine® Zero(Z 群),リステリン®フレッシュミント(F 群)および 0.12%グルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液(CHG 群)]との比較により評価した。人工バイオフィルムはガラスベースディッシュ上で 24 時間嫌気培養することにより作製した。洗口液の浸透性は calcein-AM で染色したバイオフィルムの底面の蛍光消失を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に解析することにより評価した。殺菌能は 30 秒作用後の生菌数測定およびバイオフィルム底面の Live/Dead 染色像により評価した。その結果,各洗口液とも 50%蛍光消失時間はバイオフィルムの厚みと正の相関を示し,N 群の浸透速度はZおよびF群と同等かつ CHG 群より有意に高値であった。 生菌数はN,ZおよびF群は同等で共に CHG 群より有意に低値であった。また, Live/Dead 染色像はN,ZおよびF群とも 99%以上が propidium iodide (PI)陽性細菌であり陽性率は CHG 群より有意に高かった。以上の結果から,N 群の浸透性と殺菌能は,Z 群および F 群と同等かつ CHG 群より有意に優れていることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(3):291-301,2014
著者
武井 典子 藤本 篤士 木本 恵美子 竹中 彰治 福島 正義 奥瀬 敏之 岩久 正明 石川 正夫 高田 康二
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.384-396, 2009-03-31 (Released:2011-02-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

近年, 軽度の要介護高齢者の増加が厚生労働省より指摘され, 平成18年度の介護保険制度の改正では, 介護予防として口腔機能の向上が位置づけられた。また, 平成20年度の「後期高齢者医療制度」では, 食べる・話す・笑う機能を低下させないために「口腔機能の評価と管理」が位置づけられた。しかし, どちらも総合的な評価法や具体的な管理方法は, 社会科学的施策として確立されていない。このような現状から, 著者らは, 自立から要介護までのすべての高齢者のための介護状態の予防・軽減, QOLの向上などを目指した安全で有効な口腔機能の評価と管理のシステムの開発を試行し, 広く社会科学的に合理的な施策として実現すべく検討を試みてきた。今回はその第1報として, 自立高齢者を対象に, 口腔機能の総合的な検査法, その結果に基づいた改善法, その実施の有効性についての評価法を試行検討した。対象者は, 札幌市の某ケアハウスに入所している自立高齢者91名である。口腔機能を総合的に評価するために, 口腔の周り, 口腔の入り口 (咀嚼), 口腔の奥 (嚥下), 口腔の清潔度の4つのカテゴリーに分けて行った。その結果を活用して改善法を提案・実施・評価を行った。その結果, 咀嚼力の判定, 唾液湿潤度検査, 反復唾液嚥下テスト, オーラルデイアドコキネシス, カンジダ検査が有意に改善したことにより, 今回試作したシステムは, 自立高齢者の口腔機能の評価と向上に役立つ可能性が示唆された。