著者
竹村 洋子 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.73-84, 2003-03-31 (Released:2019-04-06)

通常学級で発達障害児が示すいわゆる問題行動は回避行動としての機能をもち、教師の評価と関連した周囲との相互作用の中で、生起・維持している可能性がある。本研究では、攻撃行動を示す児童を対象に対人回避の低減を標的とした個別指導を行い、個別指導場面での児童の行動変化が、授業場面における児童と教師の行動、児童とのかかわりにおいて生じる問題に対する教師の評価に及ぼす影響について検討した。個別指導場面での児童の行動変化に伴い、授業場面での問題行動が低減し、教師への視線が増加した。教師が児童に接近する行動の生起頻度も増加したがその生起頻度は不安定で、児童の問題行動は再度増加傾向を示した。児童とのかかわりにおいて生じる問題に対する教師の評価については認知的評価尺度影響性因子の得点が増加、コーピング測定尺度各因子の得点が減少し、問題が示された。児童との相互作用における教師の評価と行動の関連について論じられた。
著者
竹村 洋子 持田 裕司 松本 正江 大沼 昭夫
出版者
大日本蚕糸会
巻号頁・発行日
no.59, pp.21-26, 2011 (Released:2013-10-08)

人工受精においては,雌蛾の交尾嚢内に精包が形成されておらず,交尾嚢内で活性化した精子は直接受精嚢に到達する。交尾嚢を破壊した雌蛾に通常の雄蛾を交尾すると,交尾嚢導管に精包が固定され通常交尾と同様の受精卵を産み, 精包は交尾嚢の代替えとなりえるが,人工受精では受精卵は産下されなかった。精巣を除去した無精子精包は,精子以外の全ての分泌液を含んでいる。未活性精子を人工受精した雌蛾にこの無精子精包雄蛾を交尾させると受精卵が産下され,この方法は人工授精法における精子のトリプシン処理の代替えとなり得ることが明きらかになった。
著者
持田 裕司 竹村 洋子 松本 正江 金勝 廉介 木口 憲爾
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.37-43, 2006 (Released:2007-07-03)
参考文献数
7
被引用文献数
3

実用蚕品種受精卵の2年間保存条件を検討した。清水ら(1994)の2年間保存法における6回の15℃1日間中間手入れのうち,最終の1回を10℃10日間に改めた「改良2年間保存法」を試案した。この方法で2年間保存をした交雑種は実用ふ化歩合65%程度で,飼育成績は対照としての1年間保存卵からふ化した個体と同等であった。原種の場合,改良2年間保存後のふ化率は対照区と比較して著しく低く,ふ化幼虫の雌雄比にも偏りが生じた。しかし,次代卵を再び2年間保存することを繰り返す継代は可能であり,多くの品種において継代のたびにふ化率は向上した。2年間保存により幼虫の飼育成績は低下するが,継代した卵を通常の1年間保存後にふ化させることで飼育成績を回復することが確かめられた。産卵台紙の間にスペーサーを挿入することで積極的に空気の流通空間を確保することは,ふ化率の改善に有効であった。
著者
竹村 洋子
出版者
The Japanese Association of Special Education
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.415-424, 2011
被引用文献数
1

特別支援教育への転換が法的に裏づけられたが、通常学級における発達障害児への教育的対応には課題が山積している。行動論的支援では、「問題行動」への介入について児童と環境との相互作用の視点の重要性が認識されており、本邦では通常学級における介入研究が増加している。本稿では、「問題行動」をめぐる児童と環境との相互作用に視点を置き、発達障害児の学校適応を促進するための課題を明らかにすることを目的に、それらの研究を概観した。児童と教師との接近的相互作用の成立の重要性が指摘されるとともに専門機関や保護者など他者との良好な連携が支援効果を高める条件となるが、環境への介入には課題が多いことが指摘された。「問題行動」をめぐって複数の変数が関連した複雑な相互作用が成立し、その分析と介入の方略が求められている。教師の評価に着目した分析により、「問題行動」をめぐる相互作用について関連要因が明確化され、通常学級における課題を解決するための指針が得られる可能性について言及した。
著者
竹村 洋子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.44-56, 2008-03-30

本研究では,通常学級における「問題行動」をめぐる教師-児童間相互作用について,児童とのかかわりに対する教師の評価に焦点をあて,問題状況に関して検討を行った。研究1では問題性評価尺度及び対処行動評価尺度が調えられた。因子分析の結果,問題性評価尺度は影響性評価・対処可能性評価の2因子9項目,対処行動評価尺度は問題解決志向・支援希求志向・情動軽減志向の3因子16項目の構造として理解することが適当だと考えられた。研究2では2つの尺度の結果についてクラスタ分析を行った。その結果,児童とのかかわりにおいて生じる問題に対する教師の問題性評価は4類型,対処行動評価は5類型に分類可能であることが示された。研究3では,通常学級における「問題行動」をめぐる教師-児童間相互作用への介入を実施し,研究1で作成した尺度を用いて介入に伴う教師の評価の変化についてデータを得た。その結果,教師への介入後に対処行動評価の類型の変化が,フォローアップ期には教師の問題性評価の類型の変化が示された。教師の評価のうち,対処行動評価が教師-児童問相互作用を規定する要因である可能性が示された。
著者
伴野 豊 藤井 博 河口 豊 日下部 宜宏 竹村 洋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源開発研究センターに保存される世界最高水準のカイコ突然変異体の有効利用と効率的保存を目的として行った。その目標は次の3点にあった。1、DNAレポジトリーの確立(遺伝子資源の有効利用)2、精子レポジトリーの構築(効率的保存)3、遺伝子資源の情報発信(情報レポジトリー)上記3項目に関する達成度は以下の通りである。(1、DNAレポジトリー)約450系統を網羅するDNAレポジトリーを計画通り構築した。各系統に関して10個体を個別に保存し,系統内の多型解析を必要とする研究にも対応したレポジトリーとなり、既に国内・外の研究に活用されている。これまでは研究者が飼育を必要としていた為に利用が限定されていたが桑の確保などの必要がなくなり、利用が拡大している(2、精子レポジトリー)本課題では精子を採取する過程と人工授精の過程に極めて高度なテクニックを有する為に、研究分担者である竹村が開発した技術を扱う事が可能な人材の育成に時間を要した。このために目標の全系統の精子レポジトリー構築には至らず、30系統に留まった。今後、技術の改善に努める必要がある。(3、情報レポジトリー)2005年3月までに報告されたカイコの突然変異遺伝子に関する情報の収集を行った。その結果、カイコ突然変異遺伝子に関しては2005年3月までに報告されている全てについて遺伝子記号,遺伝子名,形質特徴,文献引用が一覧出来るデータベースを構築し、「カイコ突然変異体利用の手引き2005」を刊行した。以上,DNA,精子,情報という3つ事項のレポジトリー化が計られ,カイコ遺伝子資源を効率的に活用・保存できる基盤が出来上がった。